8:波乱のアイビー・ウィーク



Gossip Girl8:波乱のアイビー・ウィーク


正直、散々だったキス・オン・ザ・リップス・パーティーからマークのイベントなど、かなりプライベートでは色んなことがあった。

こちらへ来てから2週間ほどたち、コンスタンス・ビラード学園での生活にも完璧とは言えないものの、ほとんど慣れたと思う。寮仲間の友人たちと週末の予定について芝生で寝転がって話をしていると、セリーナの姿が見えた。


「セリーナ!」

セリーナ「ハイ、エリ」


なんだか少し不機嫌そうな顔だ。


「何かあったの?」

セリーナ「うん。ブレアとちょっとやり合っちゃって……」


セリーナとブレアは体育の授業のホッケーで乱闘騒ぎを起こしたらしい。女子高とあってかそれはまた容赦ない闘いであり、なかには負傷者が数人出たと寮仲間から聞いていた。


「ブレアと仲直りできてないんだ?」

セリーナ「……もう、修復不可能かも」


セリーナは軽くため息をつく。



(修復不可能って…どんだけ暴れたらそうなるの)



セリーナ「ずっと内緒にしてたことが、彼女にバレちゃったんだよね」

「(あ、そっちね)内緒にしていたこと?」



(ネイトとのことなのかな?)



そう思ったけど深くは聞けず、私はセリーナの話に耳を傾ける。


セリーナ「彼女は、私がウソをついていたことが許せないみたい。なんかもうぐちゃぐちゃ。ブレアやチャックに昔の話、暴露されて…結局ダンとも別れちゃった」

「えっ!!別れたの?」

セリーナ「うん……」

「セリーナ……」

セリーナ「大丈夫よ。私、切り替えは早いの」


セリーナは笑顔を作ってみせる。


セリーナ「とりあえず無事にこの学校を卒業して大学に入る。私のことを知らない新しい場所に行ってやり直す」

「新しい場所か……」

セリーナ「今週のアイビー・ウィークの懇親会、エリも出るんでしょ?」

「勿論だよ」


コンスタンス・ビラードや隣のセント・ジュード学園の生徒の多くは、ハーバードやイェール、ブラウンといったアイビーリーグに属する有名大学に進学する。アメリカの大学受験は学校の成績だけでなく、課外活動や人格の評価も大きなポイントになるので、各大学の代表者の教授たちがやってくるアイビー・ウィークの懇親会は、進学を目指す生徒たちにとって、またとない自己アピールの機会なのだ。


「セリーナはブラウン大学志望だっけ?」

セリーナ「そう。エリは?」

「私、学部生として過ごすのはイエールって決めてるの。法学、政治学に強いから。それで院はハーバードに行くつもり。まあ、その辺りの意思確認として今回参加しようと思って。」

セリーナ「そっか…、エリって確か成績トップなんでしょ?全然余裕そうね」

「成績落ちたら瞬間、日本に強制送還だもの」


嫌味に聞こえないように冗談交じりで話すとセリーナもふっと笑みをこぼす。


セリーナ「エリってすごいよね…うちの学校の生徒の親って、ほとんどがアイビーリーグの大学の出身でみんな、そのコネで親の出身校に入るっていうのに」

「コネがあるなら使うに越したことないわ。私もあればそうすると思うし」



(それを頼りにして皆勉強しないから相対的にトップになれただなんて口が裂けても言えないけど…)



セリーナ「そうかしら。でも……」


セリーナがはっとしたように話を止める。彼女の視線の先を追うと、そこにはダンの姿。なんだかイライラした様子で歩いてきたダンは、私たちに気づいて足を止める。


セリーナ「相当怒ってるみたいね」

ダン「短気でね。直そうとしてる」


2人は以前と変わらない様子で自然に会話を始める。


セリーナ「それでダートマスの案内係にはなれたの?」


ダンの志望校はダートマス大学。懇親会でアピールするために、ダートマスの代表者の案内係に立候補をしていたらしい。


ダン「いや、ネイトが選ばれた」

セリーナ「そっか」

ダン「親がOBじゃないヤツなんて、まあそんなもんさ」


どうやらネイトの親はダートマス出身ということらしい。


セリーナ「案内係にならなくたって、アイビーには入れるよ」


セリーナが元気づけるように言う。


ダン「そう?きみの親はどこ卒?」

セリーナ「ハーバードとブラウン」

ダン「……聞いた俺がバカだった」


ダンはそう言い捨てて、歩き去って行く。セリーナは彼の後ろ姿を見送ってから「仕方ない」というように小さくため息をついた。



アイビー・ウィークの懇親会には、一人で参加することになっていた。成績トップということで学校の先生を介して各大学教授を紹介してもらえるようだ。キョロキョロ辺りを見回しながら指定された部屋に入室すると、そこにいたのは…


マーク「あれ?エリ!!」

「マーク?」

アレックス「お前が何でここに?」

「それはこっちの台詞だから」

アイザック「どうせ部屋でも間違えたんだろ。」



(いちいち腹立つ!)



アイザックの一言に引き攣る頬をなんとか頬笑みに変える。


マーク「俺達さ、まあなんていうかさ、ねっ」



(ああ、コネってやつね…)



マークがこっそり目配せしたので大方予想がついた。この三人は特に寄付金が多いらしく、学校側もかなり優遇しているようだ。意外だったのはアイザックで、どうやらアイザックは成績もよいらしくコネなどなくても成績優秀者として参加できたらしい。愛想はないし、冷たいけれど知的な雰囲気を纏ってる点だけは否定できない。思わずしげしげと見つめてしまった。






教授たちとの堅苦しい会話から漸く解放されると、セリーナと待ち合わせしているため、校門の前に向かう。ちょうどその時、目の前にオープンカーが止まった。シルバーのマセラティ。素敵だなと、ふと運転席に目をやすと、サングラスを掛けたスレンダーな女の人がちょうど傍を通った男子生徒に話しかけていた。




(あれ、アイザック?)



女の人「ねえ、懇親会終わったんでしょ?迎えに来たわ」

アイザック「必要ないと言っただろ」

女の人「冷たいのね、相変わらず」


冷たい態度のアイザックに対し、女の人は苦笑混じりに言う。


女の人「まあ、いいわ。じゃ、またね」


女の人はアイザックに身を寄せて、軽くキスをする。



(おっと!)



私は思わず、目をそらした。


アイザック「なにそんなところに突っ立ってるんだ?」

「え、いや、別に…」


さっき会ったとはいえ、アイザックと一対一で話すのはあのパーティー以来だった。学校で時々見かけたけれど、なるべく目を合わさないようにしていたのだ。 だってこの人何かしら嫌味ったらしく攻撃してくるんだもん!


アイザック「ふーん、今日の懇親会にお目当ていたか?」

「(ほらきた)……っ、」

アイザック「まあ、せいぜい媚びでも売っとくんだな、」

「な、何よ!あなただって今キレーな女の人にキスされてたじゃない!私のことビッチだとか言える立場なわけ?」


思わず先程の場面について言及してしまった、するとアイザックは訳わからないといった表情で私に冷たい視線を向ける


アイザック「なにいってんのかと思ったら‥あれは父親の婚約者だ」


母親と言わないのを不可解に感じるも、以前アイザックの家族関係について耳にしていたので何も言えなかった。反応のない私を見て、お決まりの「お前には関係のないことだ」という台詞を残すとスタスタと構内へと戻っていった。むかむかする気持ちとどことなく寂しい気持ちを抑えていると、向かいからセリーナとその弟であるエリックがニコニコしながらやって来た。彼らにほほ笑むと、セリーナの携帯が突然鳴った。


セリーナ「えっ?」


セリーナの顔がさっと青ざめる。


「どうしたの?」


セリーナは少し迷ってから、私に携帯の画面を見せる。
メールの差出人はゴシップ・ガール。


ゴシップ・ガール『この女はアイビーリーグのためなら何でもするガリ勉ビッチ・ガールです』


その下に貼られていたのは、先ほどハーバードの教授と二人きりで親しげに話す私の写真だった。まわりの人たちは、携帯の画面と私とを見比べて、ひそひそ話をしている。


セリーナ「信じらんない!何なのこのメール!」


怒りに顔を赤くしているセリーナの隣で、私は言葉もなく、呆然と携帯の画面を見つめる。ちょうど取り巻きの女の子たちを連れたブレアがこっちに近づいてきた。


ブレア「あら、こんなところにいたのね、噂のガリ勉ビッチガール」


ブレアの取り巻きの中にはアイザックに気があるらしいレイチェルもいた。彼女は私と目が合うと、至極愉快そうな意地の悪い笑みを浮かべる。それと変わらないほどの憎たらしい顔でブレアは私とセリーナの顔を見比べるようにして言った。


ブレア「ビッチ同士、仲がいいんだ。やっぱり類は友を呼ぶってホントなのね〜」

セリーナ「ブレア!私のことはともかく、エリに失礼なこと言わないで」

ブレア「あら、ホントのことでしょ?エリはゴシップ・ガールも認める正真正銘のビッチ」


ブレアが携帯のメールの画面を見せつけるようにする。


エリック「そのメール、ゴシップ・ガールからじゃないと思うよ」

「え?」

セリーナ「どういうこと?」

エリック「ゴシップ・ガールが配信するのはアッパーイーストの住人のゴシップネタ。このメールみたいな、根拠のない誹謗中傷が送られてきたことなんて、一度もない」


エリックが冷静な声で言う。


セリーナ「確かに……」

ブレア「でも、現にゴシップ・ガールからこのメールが届いてるじゃない」

エリック「誰かがなりすましてるんだと思う」

セリーナ「なりすまし?」

ブレア「そんな馬鹿な」


エリックは携帯を操作して、何かを確認する。


エリック「このメールアドレス、みんなが登録してるゴシップ・ガールのサイトのものとは違う」


セリーナとブレアも携帯画面のアドレスを確認する。


セリーナ「ホントだ」

エリック「それに、サイトに登録している人以外にもメールが届いているみたいだし……」

ブレア「どういうこと?」

エリック「誰かがゴシップ・ガールの名前をかたっって、懇親会に来ている人たちみんなにこのメールを送ったんだ……」


それを聞いて足元が崩れ落ちる気がした。ここで問題が起これば、私がこの学園に入るために努力してきたこと、そして入学してからも毎晩遅くまで勉強していたことなど全てが水の泡となる。こんなことで立ち止まるわけにはいかないのだ。



(そんな……いったい誰が……?)



セリーナ「まさか、ブレア、あんた?」

ブレア「は?私じゃないわよ!」


ブレアは即座に否定する。ブレアたちと話している間にも、会場の人たちがちらちらとこちらを見ているのを感じる。



(ここに来ている人たちみんなにこのメールが届いている……?)



私ははっとする。最悪だった。私はともかく、後姿とは言え、一緒に写りこんでいるハーバードの教授に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



(謝罪しに行かなきゃ……!!)



「ごめんなさい、セリーナ、私教授に謝罪しに行くわ!」


私はセリーナたちと別れ、会場の中へと駆け込んだ。








(はあああ、)



中庭のテーブルに腰を落ち着けると、なんだかどっと疲れが押し寄せてくる。教授に訳を話に行ったらなんと教授の元には届いていなかったのだ。余計なことをした…!とあたふたしていると、「君が弁護士ならこの問題にどう対処するか」と突発的に聞かれたので、だいぶ頭に来ていた私は怒りをぶつけるように自分なりの解をのべた。それが教授のツボにはまったのか、より一層好意的に接してくれるようになり、今度講義を聴講させてもらえる約束まで頂いたのだった。なんにせよピンチを乗り切った私は全身が重い。



(ああ、疲れた…)



?「なかなか写真写りがいいじゃないか」


目の前の席に、携帯を手にしたアイザックがどっかりと座る。


アイザック「この写真、実物より断然セクシーだ」


アイザックは私にメール画面を見せつける。


「アイザック…!!」


うつぶせていた顔をあげ、携帯をひったくろうとしたが、あっさりとかわされてしまう。


「…なにか用?」

アイザック「別に……、俺はただゴシップ・ガールにも認められたガリ勉ビッチの顔を拝みに来ただけだ」

「……、」


アイザックはニヤニヤ笑いながら、私の顔を見る。その意地の悪い一言が私の中で一つの確信に変わった。


「……このメール、あなたがやったんでしょ?」


アイザック「は?」

「メールを送ったのはゴシップ・ガールじゃない。誰かがなりすましてやったとだって。この部屋にいたのって私たちの他にあなた達だけじゃない!!!」


一度言葉を発してしまったら後に引けなかった。押し寄せるように次々と気持ちが溢れ出す。


「そんなに私が目ざわりなの?!だったら私に直接言いなさいよ!!!」


周りにいた学生たちが思わず振り返ってしまう程の大声で怒鳴ってしまった。視界がにじむ。悔しくて、悔しくて。
アイザックじゃなくたっていい。私は誰かに怒りをぶちまけたかったのかもしれない。



(私は努力することしか道が開けないのに…その成果ですらあなたは奪うっていうの?)



「‥ひどいよ…っ」



私はアイザックから視線を外しそっと涙をぬぐった。こっちに来て初めて泣いた。アイザックは黙って私の顔を見返す。


アイザック「……だったら、どうする?」

「っ?」

アイザック「俺がやったにせよ他の奴がやったにせよ、こんなメール、大騒ぎするほどのことでもないだろ」

「そんな……!!」

アイザック「ゴシップ・ガールのサイトを喜んで見ているのは、どうせくだらない暇人ばかりだ。そんな連中にどう思われようが、平気だろ?」

「私が気にしているのはそんなくだらないことじゃない!教授にもご迷惑をかけて‥こんな誤解されて…私は院進学をハーバードに決めてるのよ、就きたい教授がいて…ハーバードじゃなきゃだめなの!私はいい加減な気持ちでここにいるんじゃない!」

アイザック「‥‥トラブル起こしたら進学はきついかもな、まあ、お前がどうなろうと俺には全く関係ないが‥」


その一言に怒りが頂点に達した。それと同時に冷める心。


「…最低‥」


男性に向かって「最低」と吐き捨てる時が来るとは…。もう話す事なんてなかった。一刻も早くこの場から立ち去りたかった。私はアイザックに背を向けて、急ぎ足でそこを立ち去った。



ーー

アイザック「‥っ、」


先程部屋でみた教授とやりとりしてる際のエリの活き活きとした表情や、毎日下校するには大分遅い時間まで残って図書館から出てくることなど、エリが半端な気持ちでいるんじゃないこと位わかっていた。

なのに‥口から出るのは気持ちとは裏腹なことばかりで‥

叩きつけた拳の痛みなど感じることなく。繰り返されるアイツの言葉に胸が抉られる思いだった






数日後。授業を終えて教室の外に出ると、セリーナとジェニーがやってきた。


セリーナ「エリ!」


セリーナは私に抱きつくようにして、話し始めた。


セリーナ「やっとブレアと仲直りできたの!」

「よかったね。セリーナのそんなうれしそうな笑顔見ると、こっちもハッピーになる!」

セリーナ「そう?それにいいことはそれだけじゃなくて、この週末はエリックが外泊許可をもらって家に戻ってくるの」

ジェニー「いいことって、それだけじゃないでしょ?」


ジェニーがちょっといたずらっぽい顔でセリーナを見る。


セリーナ「え?ああ……」

「何?他にもあるの?」

セリーナ「うん。実は、ダンともう一回やり直そう…って感じになって」

「最高じゃない!!」

セリーナ「今夜、デートなんだー。ねえ、ジェニー、お兄ちゃんに何か聞いてない?今夜のデートの内容、内緒にされてるの」

ジェニー「さあ?うちのお兄ちゃん、いろいろ内緒事が多いからね」


3人できゃあきゃあ話していると、ブレアが取り巻きを連れてやってきた。


ブレア「ハイ、セリーナ。なんか盛り上がってるみたいね?」


ブレアは私にちらっと目線を向けただけ。セリーナとは仲直りしても、私とも仲良く……ってわけじゃないみたいだ。まあ、この子とは多少距離があった方が気が楽なので一向に構わないのだが。


ブレア「ねえ、セリーナ。今夜のことだけど……」

セリーナ「今夜?何の話?」

ブレア「秋の一大イベントでしょ?」

セリーナ「ああ!お泊まり会」

ブレア「夜会って言ってよ。お泊まり会じゃ、ガキみたいじゃない」


ブレアは年に一度、仲良しの友達を誘ってお泊まり会をしているのだ。お金もコネも使い放題でかなりハイなイベントらしい。


セリーナ「ごめん、今夜は行けない。予定があるの」

ブレア「セリーナ!ブレア・ウォルドーフの夜会だよ。もっと大事な用なんてないはず」

セリーナ「今日こそダンとデートなのよ」


ブレアは露骨にむっとした顔になる。


セリーナ「ホントごめん、ねえ、私の代わりに、エリを誘ってあげてよ」



(えっ?!いやいやいや、)



「無理無理、私寮生だから」

ブレア「こっちだって御免よ。代わりはこっちで見つけるわ」

セリーナ「わかった。だったら、もう行くね」

「私も、」


そう言い別れを告げようとした時、ブレアは何か思い出したかのように突然まくしたてはじめた。


ブレア「そうそう!ゴシップ・ガールの新しいネタ、見た?」

セリーナ「え?新しいネタ」

セリーナが携帯でゴシップ・ガールのサイトを開く。


セリーナ「これ、アイザック?」

「え?」


つられて私も画面を覗き込む。貼られているのはアイザックと女の子が何かを話している写真。写っている女の子はブレアの取り巻きのひとり、レイチェルだった。しかも、彼女は泣いているようにみえる。


セリーナ「 『なりすまし女、アイザックに失恋』 」


セリーナが写真につけられたキャプションを読む。


セリーナ「なりすまし女って、まさか、ゴシップ・ガールになりすましたのって?」

ブレア「そう、あのレイチェルが、ゴシップ・ガールのふりして、メールを送ったの」



(うそ……)



衝撃だった。まさか彼女があのメールの犯人だったなんて… そういえば、ブレアの取り巻きの中からレイチェルの姿が消えている。


ブレア「あの女、アイザックのことで、あんたに嫉妬してたみたいよ」

「私に?!」

セリーナ「よくわかったわね、彼女が犯人って」

ブレア「マークから聞いたんだけど、それがどうも犯人見つけたのアイザックらしくて。アイザックがわざとデートに誘って、その時無理やり携帯を取り上げたら、ゴロゴロ証拠が出てきたみたい。だから、本家のゴシップ・ガールにネタ、リークしてやったわ」

「う、そ……」


数日間私の心に重くのしかかっていた不安が晴れ、安堵の息をつきたくなるも、頭の中にはアイザックのことでいっぱいだった。



(私彼に酷い事を…謝らなきゃ!!)



ブレア「なに驚いてんのよ、まあ私もアイザックがここまで徹底的に潰しにかかったのには驚いたけど…そいえばアンタの問題だったわね。とりあえず進学に影響なさそうだし、コネ使えない身分なんだからせいぜいお勉強しなさいよ、って!!どこ行くのよ?」

セリーナ「エリっ?!」


居ても経ってもいられず、私は同じ敷地内にある学園へと駆けだした。







ジロ、ジロ…と視線が痛い。珍獣を見るかのごとくまじまじと視線を向けられ、いたたまれなくなる。早くアイザック出て来ないかな、だなんて祈るようにしていると…


?「あ、ガリ勉ビッチちゃんだー」

?「成績良いのも教師とヤっちゃってるからだろー?」


不躾な発言が聞こえたかと思うと途端に数人に取り囲まれた。



(げ!!!チャック!!!)



腹立つくらいニヤニヤしたチャックとその取り巻きたちだった。私を壁まで押しやるとぐいっと近づく。


チャック「何の用だよお前、飢えて気が付いたらここにいたとか?」

「どいてよ!」


掴まれた腕をほどこうとするも、力には適わず、思わず痛みに顔を歪ませる。


チャック「いいね、その顔、」



(ああ、もう最悪!!)



周りが騒ぎたてる中、だんだん怒りがこみあげてきてチャックの×××に蹴りをくらわしてやろうと片足を上げ、ふっと気合いを入れた時…


マーク「あれ、エリ?」

「ま、マーク!!!」


マークとアレックス、それにアイザックが丁度門の下をくぐって来たところだった。


チャック「ちっ、邪魔がはいったな」


吐き捨てるように言うと私の腕を乱暴に振りほどき、取り巻きの連中たちとその場を去って行った。


マーク「どうしたの?こんなとこで」


辺りに散らばった私のカバンやら本を拾ってくれると、痛みを帯びた腕に視線を落とす。


アレックス「チャックに会うとは災難だな、お前大丈夫?」


アレックスも何時になく心配そうな面持ちで話す。


「全然平気、ありがとう。ちょうど私の蹴りで再起不能にしてやろうとしたところよ」


イタズラににっこり笑うと二人は安堵と若干引き攣った笑みを零した。


マーク「で、誰待ちなの?もしかして俺?放課後デートのお誘い?」

「あのっ…」


優しく肩を抱いてくれるマークにまた今度ねと告げると、興味なさそうに立っているアイザックに視線を向ける。


「アイザックと話したくて…、時間もらえないかしら?」

アイザック「あいにく俺は忙しい。お前に構ってる時間はない」


いつの間にか停まっていたリムジンの元に向かおうとするアイザックに飛びつくように駆け寄ると、行く道を塞ぐように立ちはだかって頭を下げる。


「先日は酷い言葉を言ってしまい‥‥申し訳ありませんでした」


目を丸くするアイザックをちらりと見るも、今しかチャンスはないと思い必死で気持ちを伝える。


「‥‥あの時、本当に自分自身余裕がなくて…あなたに不快な想いをさせてしまったわ。最低だったのは私よ。本当にごめんなさい」


アイザックからの反応はないけれど、再び深々と頭を下げる。


「あと…犯人見つけてくれてありがとう、」

アイザック「あれはお前のためにやったんじゃない、勘違いするな」

「でも…嬉しかったの!!」


やっとアイザックの顔に目を向けにっこり笑うと…



(えっ…)



慌てたように視線をそらすアイザック。てっきりいつもみたく冷たい目で見られてるとおもったのに。余りにも意外な展開でなぜだか熱が上がる。


「あ、あのっ…その、時間とらせてごめんなさい、それだけ伝えたかったの、じゃあ」


傍にいたマーク達にも軽く挨拶するとその場から逃げるように走って寮へと向かった。


マーク「なんか、エリってさいつも一生懸命で可愛いよねー」

アレックス「まあ、否定はしないけど」


二人が立ちつくすアイザックの肩にもたれると…


マーク「えっ?!ちょっと待って、」

アレックス「おいおい、冗談だろ?」


頬の赤みがひかないアイザックに二人は驚愕した。



To Be Continuted……




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