2:『B』の洗礼!?

Gossip Girl2:『B』の洗礼!?




「はぁ……」

私は小さくため息をつく。





(とりあえずセリーナを探さないと……)





私はパーティー会場を見渡す。華やかに着飾ったセレブたちが、シャンパンを手に談笑している。日本を発って、まだ24時間もたっていないというのに。



(なんで私、こんなところにいるんだろう?) 



Henri Bendelで気分良くショッピングしていた頃が懐かしく思えた。ここは、ドラマや映画なんかよりずっと派手で非現実な世界。場違いな実感が湧いてきて、少し頭を冷やしたくなり廊下に出た。




(お手洗い、どこかな?)




あたりを見回していると、チャックがこちらに歩いてくる。


チャック「まだ、いたのか?」




(いちいち、突っかかってくんなコイツ…)




キレたら負けだと思い、愛想良くハイ!とだけ挨拶すると、チャックはふっと鼻で笑う。


チャック「トイレなら、その突き当たりのドアだ」

「え?」


お礼を言うヒマもなく、彼は歩き去っていく。




(よくわからない人だな……)




私は教えられた突き当たりのドアを開ける。


??「愛してるわ。ネイト……」




(えっ?)




私の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で熱いキスを交わしている男女の姿。




(きゃああ!)




私は慌てて、後ろ手にドアを閉める。




(うわっ、気づかれなくて良かった!!)




女の人の方は顔はまったく見えなかったけれど、ちらっと見えた男の人は、パレスホテルでチャックと一緒にいた彼だ。私は動悸を抑えながら、パーティー会場に戻る。

チャックがにやにやしながら、こっちを見ている。 



(もしかしてわざとあの部屋を教えたの?) 


根から腐ってんな、と私はチャックを無視して、部屋の奥へと向かうと、セリーナが金髪の女の人と話しているのが見えた。どうやら彼女がセリーナのママらしい。


セリーナ「それであの子は、まだ出てきてないの?」

セリーナのママ「その話は後でいいでしょう」

セリーナはとがめるような目でママを見ている。



(なんだか、声、掛けづらい雰囲気……)



セリーナはあきらめたようにママの側を離れる。


??「セリーナ」


ブルネットの髪の女の子がセリーナに声を掛ける。


セリーナ「ブレア……」

ブレア「会いたかったわ」


2人はハグを交わす。



(彼女がセリーナの親友のブレアなんだ……)



後ろ姿に見覚えがある。さっき、あの部屋にいた女の子だ。少し離れたところに彼女と一緒にいた男の子もいた。セリーナとブレアは笑顔で話していたが、なんだかぎこちなく見える。



(訳ありな感じ?)



ブレア「こっちに来て、すぐディナーよ」

セリーナ「ごめんなさい。これから寄るところがあって……」


セリーナは誘いを断って、ブレアたちのそばを離れる。


「セリーナ!」


声を掛けると、セリーナは取り繕うように微笑む。


セリーナ「エリ、私、ちょっと用事ができちゃったの。先に帰ってもいいかな?」

「え?」

セリーナ「急いで行かなきゃいけないところがあって……」

「そうなんだ。私もすぐ帰るから気にしないで。」

セリーナ「ごめんね。また、今度、ゆっくり話そう」


そう言ってセリーナと別れのハグをすると、急ぎ足で部屋を出て行った。



(さっさと私も帰ろ、)



キョロキョロと出口を探していると突然かかる声。振り返ると、ブレアが立っている。


ブレア「あなた、セリーナの友達なんだって?」


ブレアのそばにはチャックの姿。見下すように薄く笑う顔が腹ただしく、視界に入れないように頑張って愛想笑いを浮かべる。どうやらチャックからセリーナと私のことを聞いたらしい。


「ええ。といっても、知り合ったばかりだけど」

ブレア「ふーん。でもセリーナったら、ひどいわね。友達を置いて、さっさと帰っちゃうなんて」

「急ぎの用事があるみたいよ」

ブレア「そう。ねえ、あなた、家はどこ?よかったら送って行くわよ」




(うそ?、ラッキー!タクシー代浮くじゃん!)



チャックの存在はこの際無視するとして、このブレアって子なかなか気の利く子みたいだ。


「ありがとう、貴方たちもこれから帰るの?」

ブレア「帰る…?ふふ、いいえ。でもちょうど私たちも出掛けようと思ってたとこだし、ねえ、チャック」


一瞬目を配らすようにしてお互い視線を合わせたことに疑問を感じるも、ラッキーなお誘いだったのでありがたくその好意に甘えることにした。


ブレア「いいでしょ?私、仲良くなりたいのよ、あなたと」


ブレアはそう言ってにっこり笑う。


「ありがとう!じゃあ、お願いする」

ブレア「決まりね。で、どこまで送ればいい?」

「パレスホテル」

ブレア「え?パレスホテル?」

ブレアとチャックが顔を見合わせる。

「ええ、そこに泊まってるの」

ブレア「へぇー」


ブレアがなぜか笑いを押し殺したような顔で相づちを打つ。


「何?」

ブレア「ううん、何でもない。じゃ、パレスホテルまで送るわね」








私は生まれて初めてリムジンに乗った。初めてのリムジンにチャックと乗るのは嫌だったので彼の存在を脳内から消去し、勝手に楽しむことにした。ちなみに、隣にはブレア、対面の席にはチャックとブレアの彼・ネイトが乗っている。


「わあ、すごい!リムジンで送迎とか!」

チャック「まぁ、アッパーイーストの高校生の中でも、俺ぐらいのもんだろ」


チャックが少し自慢げに言う。


チャック「さ、乾杯でもするか」


チャックが取り出したのは、シャンパンのボトル。


「え?シャンパン」

ブレア「リムジンにシャンパンはセットでしょ?」




(ここって飲酒いいのかな、)




そういえば、さっきのパーティー会場でも彼らは普通にお酒を飲んでいた気がする。


「私、お酒はちょっと……」

チャック「お堅いこと言うなよ」

ブレア「1杯ぐらいいいじゃない」



(アメリカって未成年の飲酒に厳しくなかったっけ?余計なことしてこっちにいられなくなったりしたら元も子もないわ…)



私がきっぱり断るとネイトが空気を読んでか、コーラをすすめてくれた。


ネイト「まあ、無理して飲むこともないよ。僕はコーラにしておく」

ネイトはそう言って、備え付けの冷蔵庫から缶コーラを出す。

ブレア「ネイト」

チャック「付き合い悪いな、おまえ」

ネイト「さっきのパーティーでちょっと飲み過ぎたから」


ネイトが冷蔵庫からもう1本コーラを出し、渡してくれる。なんとなくネイトはチャックより優しい人にような気がする。ブレアとはまさに美男美女という感じでお似合いだ。ふと、さっき、のぞき見してしまった2人のラブシーンを思い出してしまって、私は慌ててネイトから目をそらした。


「ねえ、ホテル、まだかな?」


だんだんと景色がネオンから自然へと変わっていく。かなり時間が掛っている気がして、私は隣のブレアに聞く。


ブレア「ああ……もうすぐじゃない?」

チャック「この時間は道が混んでるからな」

「そう……」


やがてゆっくりとリムジンが止まる。


ブレア「着いたみたいよ」

「ありがとう」


私はリムジンのドアを開けて、外に出る。




(え?)




通りは薄暗くて、なんだか寂れた雰囲気。 


「あの、ここは?」


私はリムジンの中にいるブレアに聞く。


ブレア「パレスホテルでしょ?」


ブレアが指さす方を見ると、古びた煉瓦造りのビルに『パレスホテル』の看板。


「え?」


窓から覗くブレアの顔にふっと笑みが浮かび、リムジンが動き出す。


「ちょっと!」

ブレア「じゃあね」


そのまま、リムジンは走り去ってしまった。




「えええええ!!!うそおおっ……!!」




私は呆然となって、あたりを見回す。どどどど、どうしよう!確かに目の前にあるのは、「パレスホテル」。だけど、ミッドタウンにあるそれとはまるで別物。

私はブレアの顔に浮かんだ冷たい笑みを思い出す。





(これって、わざと…だよね)





ホテルの建物は真っ暗で営業している様子はない。まわりのビルの壁は落書きだらけ。
街灯のランプは消えかけていて、出歩いている人もいない。時刻はもうすぐ夜10時をまわる。



(ここって、かなりヤバい地区じゃないの?)



??「おい」


不意に誰かが私の肩をつかんだ。


「っ!!?」


私は飛び上がるようにして後ろを振りかえった。





…To Be coutinuted.






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