1:アッパーイーストサイドの住人

Gossip Girl1:アッパーイーストサイドの住人


機内アナウンスが着陸態勢に入ることを告げる。
東京から12時間半のフライトを終えて、もうすぐこの飛行機はニューヨーク・JFK空港に着陸する。ゆっくりと旋回を始めた飛行機の窓から下を見ると、透き通る青空の下でマンハッタンの街並みが見えた。



(私、本当にニューヨークに来ちゃったんだ……!!)



なんだか急に胸のドキドキが高まってくる。ロスに遊びに来たことはあるが、ニューヨークは初めてだった。
しかも、今回の目的は違う。私はこのニューヨークで夢に向かって一歩踏み出すためにやってきたのだ。




ーーーー☆


預けていたスーツケースをピックアップして、私は到着ロビーへ向かった。

突然、鳴り響くケータイ。

そのままタクシーに乗って学校の寮に直行するつもりでいたのに。なんだろう、と呼び止める手をひっこめた。



「りょ、寮長が休暇でいないっ!?」





(えええ、!!!)





着いていきなりの大問題発生に思わず日本語で大声を上げてしまう。電話の相手は学校の寮管理者からだった。
学校は9月から始まるので長期休暇中、寮生は寮から追い出されることになっている。
寮長が鍵を所持しているので今日は寮に行っても無人どころか立ち入ることさえできないらしい。
こちらは事前に寮が開かれる日を確認したっていうのに…!



(休暇ってどんだけ皆楽しんでるのよ!)




イラつく心を落ち着かせながら、数日間代わりに泊れと用意されたホテルの名前を書きなぐると、そのままタクシーの運転手に差し出した。






(えええ、ここっ?!)



空港からタクシーに乗り込み、到着したのはミッドタウンにあるパレスホテル。
ああ、完全なめてた。
パレスホテルって聞いたことはあるけど、まさか本当にあの「パレス・ホテル」だとは…。てっきり郊外にあるCランクホテルかと想像していたのに!

学校が始まるまでの数日間、私はこのホテルに泊まることになっている。
門をくぐると、石造りの重厚な建物がそびえ立つ。




(ああ、素敵!!ニューヨークでも評価が高いホテルだけのことはあるわ)


ガイドブックに必ず載ってるパレスホテルは全てが最高だった。
私のトランクを直ぐさま持ってくれるボーイさんににっこり会釈すると引き寄せられるように絢爛な空間へと足を進める。

すれ違い様、エントランスから若い男性の2人連れが出てきた。たぶん成人済みではない気がする。私と同い年くらいなんだろうけど、ハイブランドの服をさらと着こなしていて、いかにもお金持ちっぽい。
2人の前に大きなリムジンが停まり、中から出てきた運転手が後部ドアを開けた。




??「遅いぞ。待たせるなよ、俺を」




不機嫌そうに運転手に言う男性を、連れの男性が『まあまあ』となだめ、2人はリムジンに乗り込んだ。




「リムジンかぁ……」



(流石、マンハッタン。こういうホテルに住んでるお坊ちゃまたちがいるんだよね)




私は哀しきかな、いわゆる庶民。普通の家庭に産まれ、普通に過ごしてきた。だからリムジンなんて初めてみるし、こんな豪華なホテルなんて泊まったことはない。

でも、不幸せだとは一度も思わない。
寧ろ私は幸せ者だ。だってここへ送り出してくれた家族や友人、先生たちがいるから。





(留学生活…頑張ろう!!!)





私は走り去るリムジンをそっと見送った。







チェックインを済まして、一人で界隈を見てまわろうと外へでる。
忙しそうにただ目的地のみに直行するビジネスマン。愛犬を連れたお洒落なマダム。グループで賑わう学生たち。路地裏に座り込んでなにやら触れてはいけなそうな話をしている男性グループ。多種多様であり、人々の感情もさまざま。




(私も、今日からこのニューヨークの住人なんだから!!)





歩いていると、不意にそばにいた人が携帯を取り出し、カメラのシャッターを押す。つられて、私はその人がカメラを向けた方を見る。そこにいたのは、ブロンドのロングヘアの女の子。ぱっと人目を引く華やかな雰囲気が彼女を包んでいる。女の子は写真を撮られたことには気づいてない様子で、足早に私の横を通り過ぎて行く。




(うわあ、きれいな女の子。もしかして、モデルとかかな?)





つい見とれて、私は彼女の後ろ姿を目で追ってしまう。彼女は歩きながら、バッグの中の携帯を取り出した。
すると、バッグの中から何かが床に落ちた。




「あ……」




彼女は落としたことに気づかず、携帯で話しながら歩いて行ってしまう。私は急いで、落とした者に近寄る。落ちていたのは小さな紙袋。私はそれを拾い上げ、彼女の姿を探した。





(あ!いた)





人込みの中を歩いて行くブロンドのロングヘアが見える。





「すみません!」




彼女は私の声には気づかず、そのまま出口へと向かって行く。私は慌てて、後を追った。








あたりを見渡すと、通りの向こう側を歩いて行くブロンドヘアが見える。
私も通りを渡り、通行人の間をすり抜けて走って、やっと彼女に追いついた。




「す、すみませーん!」



彼女は気づいて、こちらを振り返る。




「これ……」




私は彼女に紙袋を差し出す。




??「え?これ」

「さっき、駅で落としたので…」


はあはあと弾む息を抑えるのに必死だった。ニュ、ニューヨカーって歩くスピードが以上に早いって聞いたけど正しかったわ!

紙袋を受け取ると、彼女の顔にぱっと華やかな笑みが浮かぶ。




??「ありがとう!」


彼女はいきなり、私をハグする。




(?!)



??「わざわざ駅から追いかけて来てくれたのね」

「え、ええ……」


初対面の女の子……しかもとびきりの美人にハグされて、私はすっかりドキドキしてしまう。


??「これ、弟へのプレゼントだったの。あなたのおかげで弟をがっかりさせずにすんだわ」

「そう。よかった」

??「本当にありがとう!じゃあね」


私は歩いて行く彼女を見送って、いい事したなと気持ちが軽くなった。






「あれ?」







ふと気がついて、私は目の前にあるお店を見上げる。



(きゃああ!!Henri Bendelだ!!)



慌てて彼女を追いかけてきた結果、たどり着いたのは私の憧れの高級老舗デパートHenri Bendel。ラッキー!!いい事したからだわ!だなんて鼻歌を歌いながらドアマンが開けてくれた入口をくぐると煌びやかな店内に向かった。




買い物袋をさげ、気分良くパレスホテルに戻ると、ロビーにいたのは…





「えっ!?」





私の驚いた声に気づいたのか、私たちは顔を見合わせて笑う。




??「あなた、ここに泊まってるの?」




彼女は私の戦利品が入っているショッピングバックに視線を落としつつ、笑いながら聞いた。




「ええ。もしかして、あなたも?」

??「そう。仮住まいだけどね。私はセリーナ」

「(か、仮住まい…?)エリよ」

セリーナ「よろしく、エリ」

「こちらこそ」





ホテルのロビーで私たちは改めて握手を交わした。


セリーナ「私のママ、家の模様替えが趣味なの」


唐突に言い出す彼女に驚きながらオウム返しのように尋ねる。


「模様替え?」

セリーナ「そう。今回も部屋の壁を塗り替えるって言い出して、その間、しばらくここに仮住まい。毎回の事だから、すっかりホテルマンたちとも顔なじみなの」

「そっ…そうなんだ」



(す、すごい理由…)



どうやらセリーナは、かなりのお嬢様らしい。身に纏う洋服やバック、つやつやの肌や髪をからは光り輝くオーラが放たれていた。よくテレビで見る芸能人を「自分とは違う世界だ」と思うけど、テレビ越しではなく今ここで直接話しているのに「別世界」だと実感する程に彼女は別格だと感じた。


セリーナ「それで、エリはニューヨークには観光に来たの?」

「ううん。違うの」


私は留学中なのだと話す。


「寮長が戻ったら、引っ越して、そこから高校に通うの」

セリーナ「寮?高校ってどこ?」

「コンスタンス・ビラード学園ってところよ」




私はそう答えると、セリーナが驚いたように目を丸くする。


セリーナ「それってマジ?」

「え?もしかして……」

セリーナ「同じ高校よ!」



叫ぶように言って、セリーナは私に抱きついてくる。話を聞いてみると、彼女は私が編入するコンスタンス・ビラード学園に幼稚園から通っていたらしい。


セリーナ「この1年はコネチカットにある寄宿学校に行ってたんだけど、またコンスタンスに戻ることにしたの」


偶然にもびっくりしたけど、大人っぽいセリーナが私と同い年だと聞いて、さらに驚いてしまった。


セリーナ「ね、せっかくだし、ゆっくり話さない?」

「勿論!!」



セリーナは嬉しそうににっこりうなずく。
すっかり意気投合してしまった私たち。今日来たばかりで疲れているだとか時差ボケだとか全く断る理由にならなくて。


セリーナ「じゃ、どこかカフェにでも行く?それとも私の部屋に来る?それか、散歩でもしながら話す?」

「そうね、カフェ行きたいな!まだこの辺全然わからないの。案内してくれたら嬉しいな」

 セリーナ「OK。近くに素敵なカフェがあるの。おすすめはブルーベリーマフィン」

「最高!」

セリーナ「じゃあ、決まり。行こう」

「うん!」


 部屋を出ようとしたところで、セリーナの携帯が鳴る。
誰かからメールが届いたらしい。画面を見るセリーナの顔が少しだけ曇る。


「どうかした?」

セリーナ「うん、ママから。ちょっと問題が起こって……」

「もし無理だったら、今日は大丈夫よ。また、今度ゆっくり……」

セリーナ「でも……」


セリーナが私の言葉を遮る。

セリーナ「ねぇ、よかったら、ちょっとだけ付き合ってもらっていい?ママと少し話をするだけだから」







セリーナに押し切られて、私は彼女と一緒にタクシーに乗った。着いた先は5番街にある高級アパートメント。


セリーナ「親友のブレアの家なの。幼稚園からの友達で、家族ぐるみの付き合い」


彼女の家のホームパーティーにセリーナのママが参加しているらしい。


セリーナ「さ、行きましょ」

「い、いいの?いきなり、部外者の私がホームパーティーに行くの、まずくない?」

セリーナ「部外者じゃないでしょ?エリは私の友達なんだし」

「友達……」

セリーナ「ブレアもコンスタンスの生徒だから、どうせ学校で会うんだし、仲良くなるなら早い方がいいでしょ?」




セリーナに引っ張られるようにして、私は彼女の友達・ブレアの家へ向かった。
 


ブレア一家の住まいは最上階のペントハウスだった。間違いなくこのマンションの中でも最高の部屋だろう。集まっているのは、タキシードやドレスに身を包んだいかにもセレブな人たち。




(これがホームパーティー?!私、完全に場違いだよ!だってパーカーだよ!)



そっと機内で溢したオレンジジュースの染みを手で覆った。
気後れする気持ちで、私は隣にいるセリーナを見る。セリーナはまったく臆する様子もなく、きょろきょろとママの姿を探している。

不意に私たちの前に男の人が現れた。



(んんん?この人、確か……)





??「女王様のご帰還ってネタは、本当だったんだな」

セリーナ「チャック……」

セリーナはむっとした顔で彼を見る。



(!やっぱりそうだ……)



セリーナがチャックと呼んだ彼は、先程パレスホテルからリムジンに乗って出掛けた2人組のうちのひとり。彼はちらっと私を見て言う。


チャック「こいつはおまえの新しいメイドか?」

「メイド?」

セリーナ「失礼なこと言わないで、チャック!」


セリーナがチャックをにらみつける。まわりの人たちが驚いて、私たちの方を見る。


女の子1「あれってセリーナじゃない?」


見ると、私と同年代の女の子たちがこっちをちらちら見ている。


女の子2「うそ、マジで帰って来てたんだ」

女の子3「ゴシップガールのネタ、本当だったんだ」




(ゴシップガール?)





声はセリーナにも聞こえているはずだけど、彼女は別に気にする様子もない。


セリーナ「エリは私の友達よ」

チャック「友達ね。ってことは……」


チャックが私の方を見る。


チャック「おまえも、こいつと同じビッチってわけか。どうだ?よかったら俺が相手をしてやるけど」



(えええええ!!!!)



チャックが手を伸ばして私の頬にふれようとする。私は思わず、ビクッと身をすくめる。


??「ストップ!チャック」



そう言いながら、男の人がチャックの肩に手をまわして、私から引きはがす。




チャック「何すんだよ、マーク」

マーク「彼女は俺が先に目をつけてたの。抜け駆けしないでくれるー?」


そう言って、彼は私を見てウィンクする。


「え……」


どうやら助け船を出してくれたようだ。マークと呼ばれた男性からは場を宥めようと明るい雰囲気を作ろうとしているのが感じられ、引き攣りながらも軽く頭を下げる。




(なんか、ここ怖い、早くおうち帰りたい!!)




チャック「はっ。相変わらず女の趣味が悪いヤツだな」

マーク「チャックの服の趣味よりはマシだと思うけど」

チャック「なんとでも言え」


マークは愛嬌たっぷりの笑顔でチャックを見る。


マーク「それよりほら、キミの趣味のいい彼女たちが向こうでお待ちかねだよ」



部屋の隣のベンチに座ったミニドレスを纏う女の子たちが、チャックの方にセクシーな笑みを浮かべ手を振ってみせる。


チャック「ちっ」



チャックはやれやれというように舌打ちをした。
マークは人なつっこくて、あまり敵を作らないタイプらしい。このチャックという奴とは全くもって正反対だ。


チャック「じゃあ、セリーナ、また今度。飲みながら話でもしよう」

セリーナ「あなたと話すことなんて何もないけど」

チャック「ふん」


チャックは鼻で笑うと、私には一瞥もくれず、女の子たちの方へ行ってしまった。




(なんなの、あいつ…嫌な感じ!)





セリーナ「マーク、ありがと」


セリーナがやれやれといった様子でマークに声をかける。


マーク「いいよ、全然。それより久しぶりだね、セリーナ」


2人は軽くハグを交わす。


マーク「キミがいなかったから、アッパーイーストサイドの住人たちは寂しがってたよ。もちろん俺もね。」

セリーナ「それって、『ゴシップガールのネタがなくて、寂しかった』て意味?」

マーク「あはは、それもあるけど」


茶化すように笑うマーク。明るくフレンドリーな様子を見ていると、この人はいい人なのかもと勝手に想像してしまう。


セリーナ「全く、失礼しちゃうわ。で、会ってそうそうお願いがあるの。しばらくエリのエスコート、お願いしていい?」

マーク「もちろん、喜んで」

「え?エスコートって?」



会話の中に突然自分の名前が出てきて思わず声をあげてしまう。


セリーナ「私、ちょっとママを探してくるから。しばらくマークと楽しんでて」

「楽しんでてって…!」

セリーナ「大丈夫。彼、ノリは軽いけど、ここの住人の中じゃ、結構まともな方だから」




(それは、私も思っていたけど…!)




セリーナはそう言って、私と彼を置いて行ってしまった。



マーク「うれしいな。キミ、ジャパニーズ・ガールでしょ?俺、今朝日本から帰国したんだ」

「えっ本当!?私も今朝こっちに来たのよ。成田発のユナイテッド?」

マーク「いや、プライベートで。俺、マーク!キミは?」


さらりと笑顔で返すマーク。あまりの自然さに顔が引き攣った。


(天気を答える感覚でプライベートジェットだと言われても…)



ま、マーク、こわい子!!



マーク「それにしても俺、何度か日本には行ったことあるけど、本当にジャパニーズ・ガールってキュートだよね!」




マークは微笑みながら、私の顔を覗き込む。


「!!」



(お、お世辞とは解ってるけど照れる…。こっちの人は、そういう事、挨拶代わりに言うのが普通なんだから……)




マーク「でも驚いたな。キミがあのセリーナと友達だったなんて」

「ああ、それは……」


私はセリーナと知り合った経緯をマークに話す。


マーク「ふーん。でも、よかったんじゃない?」

「え?」

マーク「セリーナと友達になったこと。彼女はいい子だから」

「そうね」

マーク「まあ、このイカれたアッパーイーストサイドの住人の中では、かなりマシってレベルだけど」




(アッパーイーストサイドって確か…)




マークと話していると男の人が2人、私たちの方へ近づいてきた。
マークは2人に声を掛ける。


マーク「よう、アイザック。それにプリンスも」

??「マーク、止めろって言ってるだろ、その呼び方」

マーク「これは失礼、アレックス殿下」

アレックス「殿下もいらない」


「プリンス」と呼ばれた彼はマークを軽くにらむ。たしかにその呼び名にぴったりの気品のある顔立ちをしている。もう1人のアイザックはちょっとクールな雰囲気の男の人。




(ふ、二人共怖いほど完璧!!)




端正な姿に思わず口があんぐり飽きそうになるのを堪え、二人に軽く会釈をする。



マーク「で、どうしたの?2人でつるんでるのって、珍しくない?」

アイザック「帰るぞ、マーク」

マーク「は?何、いきなり」

アイザック「こんな退屈なパーティー、これ以上いたって時間の無駄だ」

マーク「え?別に退屈じゃないだろ?酒も飲み放題だし、ブレアの取巻きだけどかわいい女の子もいるし……あ、彼女はエリ……」

マークが私を2人に紹介しようとする。


アイザック「紹介しなくていい」

マーク「え?」
「え」



マークと被ったことはさておき、違う意味で口があんぐりあきそうになる。初対面でそんなあからさまに嫌な顔されたのは初めてだった。引き攣るどころか一瞬フリーズしてしまう。


アイザック「いちいちおまえの女を紹介されても覚えるの面倒。それに、どうせ俺が名前を覚える前に別れるだろ?」

マーク「おいおい、そんな人聞きの悪いこと……」


マークは私の方を見て言う。





(あ、なんだそういう意味で勘違いしているのね、)




マーク「冗談だからね。こいつ、ほんと口が悪くて」

アイザック「……本当の話だろ?」

アレックス「俺も聞いたな。マークは女の子と別れ話がこじれるとすぐに旅行鞄一つ持って、国外逃亡するって」

「え、国外逃亡?それで日本に?」




(もしかして、日本に来てたのも、それ?)




マーク「おい、プリンスまで!ちがうよ、今回は試写会兼宣伝のため!」


ちょっとムキになって否定するマークが可愛く見え、つい宥めるようにわかった、わかったと笑っていると、その光景を見てため息をつきながらアイザックが言う。


アイザック「お前ら何?コンビ?ってことで、マークは連れて帰るから」

「了解」

マーク「勝手に決めんなって!って言うか、おまえ、もしかしてまたカジノに行こうとか思ってる?」

アイザック「いや、俺じゃなくて、プリンスが行きたがってるんだ」

アレックスがうなずいてみせる。


マーク「は?なんで?だってプリンス、実家に帰ったら本場のカジノで遊び放題だろ?」

アレックス「パパラッチに監視されながら、気楽に遊べると思うか?」

マーク「ああ……あいつらね」

アイザック「大変だねー、高貴な身分のお方は。同情するよ」

アレックス「それはどうも」




(実家でカジノ?高貴な身分?この「プリンス」って、いったい何者?)




3人の話を聞いて、私の頭はますます混乱していく。


アイザック「ってことで、さ、行こうぜ」

マーク「いや、ちょっと待って。俺、セリーナに、この彼女のエスコート頼まれてるんだよ」


突然三人の視線が一気に集中し、思わず上がってしまうのを落ち着かせる。


「私のことなら大丈夫よ。セリーナももう戻ってくると思うし……」

マーク「けど……」

アイザック「本人が大丈夫って言ってんだから、心配ないだろ?」



アイザックとアレックスに押し切られて、マークも帰ることになった。


マーク「ごめんね。たぶん、またすぐ会えると思うから」


そう言い残して、マークは出て行った。





…To Be Continued





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