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皐月さんは多忙な人だ、24時間全てフル稼働。休む暇もないのは良くわかってる、なのに…



皐月「青山さん、気に入って頂けたでしょうか?」

「…え、ええ、」


連れて来られたのは皐月さんの新しくオープンするジュエリーショップ。女性の意見が欲しい、との依頼を受けてからお迎えのリムジンが来てあれよあれよと今に至る。

店内は重装な造りで品と暖かみを感じる雰囲気だった、



支配人「北大路様、」

皐月「ジュエリーの方は?」

支配人「はい。全て滞りなく当店にご用意致しました。」

皐月「そうですか、ではあれも?」

支配人「はい、勿論ございます。」


支配人さんらしき人となにやら話している声が聴こえたが、ビジネスの内容なら、でしゃばるのも失礼かと思って離れた所でショーケースに飾られたジュエリーを眺める、



(いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん…ってええええ!!!)



ざっと身を引く様に飛び跳ねてしまう。なんかもう現実感がなさすぎて、正直つまらなかった。確かにジュエリーは素敵だけどさ、実用性ないよ。自分でいうのも哀れだが、私なんかそこらへんのラインストーンで充分だ



支配人「青山様、こちらへ」


穏やかな笑みを浮かべるお店の人に呼ばれ、皐月さんたちの元へと向かう。



皐月「青山さん、後ろを向いていただけますか?」


ふわっと上品で柔らかい香りに包まれたかと思うと首にかけられたのは…



皐月「ふふ、やはりよくお似合いだ、」


「(〜〜〜っ?!)」


金縁で彩られた楕円の鏡に写るのは…私の肩を包み込むように抱き寄せる皐月さんと、キラリと光を放つジュエリーを身に付けた私だった、



「これ、…」

皐月「青山さんに似合うと思いまして。いつもお世話になっているお礼です。どうか受け取って下さい」

「…、はい」



(………、)



私たちが店を出て行く時、そっとリボンがかかった紙袋が渡される、中には納めるためのジュエリーボックスや手入れ用のクリーナー、保証書などが顔を覗かせていた、



(なんでもない日おめでとう、ってやつ?)



自嘲じみた笑みを零す。値段なんて聞けないし、一々尋ねる様な無骨な人間では無いつもりだ。しかし、これだけは言える。絶対やばい、コレ。
…第一、受け取れないなんて言えなかった。遠慮して受け取らなければ、あの場で恥をかくのは皐月さんなのだ。



皐月「青山さん?、」

「…はいっ!?」


帰りのリムジンの中、外ばっかり見ている私を気遣うように、優しく声をかける皐月さん。なのに声が裏返ってしまった、なんて情けない女なんだ、私は。



皐月「貴女にそんな顔をさせるつもりはなかったんです…」


心を見抜かれたような一言。思わずびくりと、震えてしまった、



「さっ、皐月さん!!、」

皐月「青山さん、…」


ゆっくりとスピードが落とされ、自然と車は停止する、
家の前についたんだ、そう実感するも、その場から動けなかった



「今日はありがとうございました、素敵なプレゼントまで頂いてしまって…」


いつもよりも更に明るく振る舞う、嬉しい、幸せだと感じているのは事実だ。



皐月「…、…」




(ますます私と皐月さんが不釣合いだと実感させられました…だなんて思ったのもまた事実で。)



吐き出してしまいたい想いを堪えるのに必死だった、でも言葉にしたら私に喜んで欲しいと思う皐月さんの気持ちを無碍にしてしまう。皐月さんには私なんかの事で気に病まないで貰いたい。そんな思いから逃げるようにして私は再び笑顔を向けると、皐月さんとドアを開けてくれたドライバーさんに挨拶し、マンションにかけこんだ



(最悪だ自分、本当ないわー)



自分自身を軽蔑してしまう。
ガチャリと鍵を開けて電気も付けずにベッドに雪崩れ込む。カーテンから滲み出す月明かりまでもが私を責めたてているようだった、



(宝石貰って可愛く喜べる女の子じゃないのよ、私は…)



着ていたワンピースを脱ごうとした時、突如ケータイが鳴った
だれだろ、表示を見ると千早さんだった、



「もっ、もしもし?!」


つい声が裏返ってしまった、今日二回目じゃん、だなんて心中で自嘲する



千早「(使里樹ちゃん、こんばんは。今いいかな?)」

「は、はいっ!」

千早「(はは、そんなに緊張しないで。いつもみたいにお裾分けの話だから)」


ケータイ越しに千早さんの優しい声色が聞こえる。ほっこりするような要件で、ようやく絡みつく緊張から解かれた気がした



「わあああ!何作られたんですか?聞いただけでお腹空いて来ました!」

千早「(お楽しみ、とでも言っておこうかな。夜遅いけどマンションの下で会えたりする?)」

「あー、…」

千早「(忙しいようならまた今度でも構わないからね、無理なお願いしているのは僕の方だから)」


…皐月さんの顔がふと浮かんだ、こんなに良くして頂いた直後に、違う男性と会うことになんだか気が引けた。しかも夜だし…。私なら、デートのすぐ後に彼が違う女の子と会ってたらなんか嫌だ。…あれ、でも私と皐月さんは別に付き合ってるわけじゃないからいいのか?ていうか皐月さんと付き合うだなんてなんて烏滸がましい!、自意識過剰すぎて恥ずかしくなってきた


千早「(…ゃん?…使里樹ちゃん?)」

「あ、す、すいません!大丈夫ですよ、お待ちしてますね」



千早さんと連絡とったあと、取り急ぎお礼のみ皐月さんにメールをしておく。皐月さんの場合、こっちがお世話になった日(いつもだけど)ですら皐月さん自ら連絡してくれるから早めに打たなければっ。
私はなるべく社交辞令的な文を避けるよう気を配りながら想いを文に込めた。



ーー



ケータイが鳴る、千早さんが下に着いたらしい。嬉しくてつい部屋を飛び出してしまう。


マンションのエントランス近くに停車している車が見えた。千早さんだ!、私は思わず駆け寄った。



「千早さーん!」

千早「夜分にごめんね、これどうぞ」


思わずうっとりしてしまう笑みを向けてくれる、


「わああ!美味しそう!ありがとうございま…、千早さん?」

くくく…堪えるように笑う千早さん
その視線の先には…



(うわああ…健康サンダルで出てきちゃった…)



千早さんの前でこんな姿を晒すとは、しかも安定のキティちゃん!



千早「飛び出して来たのかな?そんなに僕に会いたかった?」


からかうように、だけど優しい眼差しで言われる。


「っ!!、……千早さんのいじわる、」


よしよしと撫でてくれる手が心地よい、私もなんだか気分良くなってついはにかんでしまう、



千早「…使里樹ちゃん、それ…」


千早さんは私の首元に視線を注いだ。その先にあるのは皐月さんから頂いたジュエリー。



千早「…皐月から?」

「あ、…はい」


何て返したらいいかわからずしどろもどろになる。そんな私を察したらしい。千早さんは似合ってるよ、だけ告げるとそれ以上は何も言及してこなかった。



「あのっ、千早さん、お疲れの所わざわざ来ていただいてありがとうございました。」

千早「そんな。使里樹ちゃんに食べて貰いたかったし。僕こそいきなり押しかけてしまい申し訳なかったね」


千早さんの笑顔って本当包容力あるよね、うふふだなんて考えながらそろそろ部屋に戻ろうとポケットから家の鍵を出そうとまさぐる。



(え、まさか、いやいやいや。
ってええええええー!!)



途端に青ざめる私。
うわあ、やっちゃった



千早「使里樹ちゃん?どうかした…?」

「あのっ、そのっ」

千早「大丈夫、落ち着いて。何があったか言ってみて」


キーを部屋に忘れました、オートロックなのでマンションに入れません…

告げた途端、大笑いする千早さん。情けなすぎて埋まりたい。
今日は本当散々だ!!



千早「…ごめ、ごめんごめん、僕の家においでよ、明日の朝には管理人さんいるでしょ?それともまさか誰かが帰ってくるまでここで待つ気?」


ぎくっ、
多分顔に出たんだと思う、えへへだなんて笑って誤魔化すも、困った顔をうかべながら諌める視線を私に向ける。



千早「悪いけどそれには賛成できない。このまま僕の家に連れていくよ、いいね?」


有無を言わせず助手席の扉を開かれる。健康サンダルで千早さん宅に上がりこむ女なんて私以外いないだろうな、なんて再び自己嫌悪に陥るもお言葉に甘えさせてもらう事にした。





(ああ、情けない!)





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あきゅろす。
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