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9◇心に残る人
9◇心に残る人
「え?合コン?行かないよ」
友人A「即答ですか!いやいや、合コンじゃなくて懇親会!セミナーや講演会の後とかよくやってるでしょ、アレよアレ」
突然電話が鳴ったと思えば極めてリア充的なお誘いだった。かけてきた友人は他大の子で結構仲良しだったりする。
上辺でしか価値を測ろうとしない合コンなんて嫌いだけど、懇親会ならいっか。何が違うのかという疑問はさておき、たまには社交的な活動をせねばなはないだろう。
(つまらなかったら帰ればいいし)
そんなに構えることなく、さらりと指定された日時を手帳に予定を記した
ーー
「あ、」
?『ん?』
見事にハモる声。目の前にはまさかのロー先生。しかもボン・キュッ・ボン!!の女の人と腕組んでのご登場。
ロー『ああ、青山か』
「わああっ、ロー先生こんばんは!」
この子誰?とロー先生に目配せする女の人。みればみる程確かにすごい美人だ。スタイル抜群な上、輝くオレンジの髪。女の私でもつい見惚れてしまう。流石はロー先生。
男「青山さん達こちらへどうぞ」
話を遮る様にふと顔を出したのは懇親会のメンバーの男性だった、チラリと視線を向けるロー先生は私の状況を察したらしい。
「あ、今行きまーす!…じゃあまた講義で」
ロー『ああ。』
軽くお辞儀して男性の元へと向かう。途中、こそっと囁く友人に耳を傾けると…
友人A「…いやいやいやっ!なんつー普通すぎる展開なのよ!ここはもっとお互い驚いたり、嫉妬するシーンじゃないの?!」
「えっ?!」
友人B「使里樹いいの?!あのロー先生っていう人のこと好きだったんじゃないの!?めちゃめちゃ美人といたじゃない!あの歳なら結婚前提の彼女とかかもよ!」
友人C「本当、どうしちゃったの?!あんなにきゃあきゃあ騒いでたのに」
(いや…まあそうだけどさ。)
なんなんだろう。つい最近まで私を単なる生徒の一人しか見てくれないことに苛立ったりしていたのに…今は全然そんなことはない。
なんでだ?ロー先生を好きな気持ちは変わらないはずなのに…
「うーん、なんか落ち着いた、っていうか」
友人A「はあ?『私なんてただの生徒の一人しかない』って散々喚いていたくせに」
友人B「それを理由に気分が乗らないって言って国際私法サボったくせに」
「いやあ、まあそうなんだけどさ…」
ふとよぎったのは、『先生』の顔。
数日前、ようやく再開できた人。私の気持ちを伝えたら、こっぴどく拒絶されたっていうのに…
好きで好きで…心の底から愛していた『先生』。もしかしたら今も…ロー先生が彼女持ちだってことを知っても平気だと思えるくらい…
(私はまだ『先生』のことが好きなんだ…)
ーーー
店を出たら見覚えのあるシルエットが。って、えええ?!
「ろ、ロー先生?!」
あの女の人は?喧嘩でもしたのだろうか?尋ねる間もなく取り上げられた私のバック。
「送る」
「へ?」
「車まわしてくるからここで待ってろ」
(ええっ?!)
言い逃げもいいとこだ。私の返答なんて聞きもせずスタスタ立ち去る。
友人C「きゃああ!よかったじゃん!使里樹!」
「うん、」
『先生』にフられた痛みから救ってくれたのはロー先生だっていうのに。
私はまだ過去の恋に縛られている
(本当、報われない恋愛ばかりしてるな私…)
本来ならばドキドキしっぱなしであろうロー先生の車内にいても、頭に浮かぶのは『先生』のことばかりで。そんな私をチラリと見やるロー先生。そのときの私は、なんで一緒にいた女の人と別れてまで私を待っててくれたのかになんて気づかないほど…
『先生』以外、目に映らなかったのだ。
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