Arabians lost
9◆
9◆darts
常連さんや馴染みのお客さんもでき、仕事もある程度慣れた。楽しいとさえ思い始めたが、未だに元の世界に戻れる情報を全く手にしていない。
ギルカタールの人は魔力が使えるらしいが、せいぜい自衛のためなどで、他人を異世界へ飛ばしたり運命を変えてしまうような類の魔力とは別らしい。
??「おーい、同じの頼む!」
何処かで聞き覚えのある声だと思い、はっと振り向くと。
??「んー?、アンタ、」
「げ!!」
ロベルト・クロムウェルだ!シルクハットをとり上機嫌を隠すことなく私を見る。
ロベルト「あー、‥アンタ、だれだっけ?」
(く、くそう、こいつのせいで私は!)
ふつふつと込み上げる怒りを抑え込み、お酒持ってきまーす!とダッシュした
「失礼致します。こちらご注文のお品物でございます。では」
関わりたくなかったのでものの三秒で席を離れようと酒をテーブルに置いた瞬間、くるっと背を向けてバックヤードあて駆け出そうとしたところ
ロベルト「あー!、カジノで俺に完敗した女か!」
すっきりしたー!などぶつくさ言いながらも私の腕をホールドし、離さない。
ロベルト「アンタの絶望に打ちひしがれた顏、本当、最高だったな。なんであれから来ないんだよ?」
私を無理やり席に座らせると自分で頼んだ筈の酒を私に差し出した。勤務中に飲めってか?!
「お客様、私勤務中なの「え?なに、なに?」
ひゅんっ、と一瞬なにかが私の頬を掠めた。え?なに?飛んでいった先を見ようと後ろを振り向くと、壁にぶっすりナイフが突き刺さっている。身体中の血が冷却したのは言うまでもない。ロベルトは他のテーブルに運ぶはずだった酒をさも自分のモノのごとく一気に飲むと、ダーツ好きか?だなんて聞いてくる。
(ダーツって‥!これナイフだからあああ!、)
ロベルト「俺ダーツ好きじゃねえ。出来ないわけじゃねえからな!ダーツにスリルなんかねーよな。やっぱりここはカードだろ、カード!アンタもそう思うよな?、」
「勿論です。カードしか考えられません。ロベルト様はカードの天才、いずれカジノ王になるお方ですから」
ロベルト「わかってるね〜、アンタ!」
あはははっ、と心底楽しそうに笑い、酒を煽る男を横目で見ながら、引きつった笑みをこぼす。壁に刺さったナイフ残像が未だ脳内に焼きついて離れない。
ロベルト「あんた、名前は?」
「、!シリキです、」
シリキねぇ?、ふーん。
って!聞いといてそんな不満そうな顔すんなや!血の巡りも良くなってきたのでこの状況を打破させてもらうべく同僚のイマードに助けを求める、‥‥‥
イマード(「シリキ、頑張れ!」)
口パクで親指立てウィンクしてるー!!
しかも店長も一緒に!!
生贄確定じゃん!
私に構う事なくカードについて熱弁を振るうロベルト。
(今夜は帰れないわ…)
私は奴を泥酔させるべく、ロベルトの空いたグラスに酒をつぎまくる役に徹したのだった。
(いちいち怖いんだよ、ここの人たち…!)
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