Arabians lost
3◆



3◆hospital




目を覚ますと無機質な部屋にいた。
鼻につく薬品の香り、真っ白なシーツとかけられた布団。どうやら私はベッドの上にいるらしい。




(なんか病院みたい…、)



そんなありきたりなことを思っていたら、視界に針の抜かれた注射器や医学書など散らばっているのが目に入る。




(本当にここ…、病院なの?)




「よお、起きたかよ、」

「っ、!!?」





え?!声の主をみやると飛び上がりそうになった。目の前にいるのはシャークと呼ばれていた男だ。つい先程まで私の命を握ってた男!




(ななな、なんで?!え、何で白衣?)




シャーク「…アンタぶっ倒れたんだよ。そのネックレスだけ取ってその辺に捨ててこようか迷ったんだがな。アンタ、一応俺の依頼人だろ。で、連れて帰ってきたっつわけ。俺は医者。ここは俺の病院。他に聞きてえことは?」



一気に喋られても頭が追いつかない。
お、落ち着け…落ち着け…。倒れたのは覚えてる、でもそれからは全く記憶にない。

がばっと布団から飛び上がる。



(わ、わたし何もされてないよねっ?!)



洋服や側にあったカバンの中身をひっかきまわす。異常がないか確認してみるものの、乱暴されたり、抜き取られてるモノはないようだ。


シャーク「おいおい、まだ寝てろって。アンタ極度の緊張状態からくる疲労でぶっ倒れたんだよ」

「……、」


さっきまで私を殺そうとまでしてたのになぜだ。白衣を着ると人間ってマザーテレサの精神になるのか。私がじっと見つめると、その視線にシャークも気付いたようだ。



シャーク「なんだよ。おい、まさかあの場に残された方が良かったのか?」

「ままま、まさか!、ただ…、貴方が良くわからなくて…。何で助けたの?」

「んだよ、死にたかったのかよ。俺は医者だからな、救うことが仕事だ。だかな…」




ーー殺すことも容易いんだぜ。


低い声で呟くのが聞こえたと思ったら途端に首元へ手をかけられる。このまま力を込められたら命はないだろう。全く、なんの為にあの場を潜り抜けたかわからないじゃないか!



「いやいやいやっ!本当、シャーク様には感謝してもしきれないですっ!」

シャーク「感謝なんて要らねえからカネ出しな。診察料と入院代1000万G」

「えええ、!」

シャーク「てめえ、ふざけんなっ!親切で人助けなんてするかよ!ここはギルカタールだぜ?カネと力こそ全てだ。」




(ひえええええ!!come back!マザーテレサの精神!)



とりあえず退院する時に一括で払え、とマジギレされたので渋々従う。いちいち恐いんだもん。この人!!やんわりと保険適用ないの?と伺ってみたところギロリと睨まれた。最早黙って縮こまるしかない。





ーーどうやら私はとんでもない所にいるようだ…


これからどうすべきなんで思いつくはずもなく…。


電波の入らないケータイを横目に深く溜息をついた。



(はああああ、とりあえず医療費1000万Gと依頼した費用の返済せねば…)







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