Arabians lost
18◆
18◆mind
ーー貴方がこの世界を心底厭い、「本心から『帰りたい』と願わないと無理ですけれどね」ーー
オランヌに言われた事が頭の中でぐるぐるまわり続ける。結局は精神論なのだろうか…。まあ、物理的にトリップなんてあり得ないから最終的にはそこに行き着くのだろうけど…
オアシスからの帰り道は夕方とあってか、大分日差しも弱まり寧ろ寒いくらいだった。
バックから厚手のストールを引っ張り出す。
出掛ける前に、『砂漠での遭難時に対処する100の方法』という文献を読破してきたため、用意は周到。勿論、砂嵐対策もしてある。私は「普通の人間」なので魔法を使用して砂嵐を防ぐ事はできない。しかし、その代わりとして砂嵐回避のためのアイテムは入手してある。
何回か実践してみたし、大丈夫!
全く、自分の逞しさに賞賛を贈りたいものだ!
とりあえず、無事にここを抜けてもう一度帰るための作戦を練り直さなきゃ…、
私は沈みかけ始めた夕日を背に黙々と歩き続けた
ーー
足に絡まる砂が大分冷たくなったころ、今まで耳にした事のないような叫びに似た音が冷えた空気を割くように響き渡る
(え、ななな、なにっ!?、)
状況を確認しようと辺りを見回す暇もなく一瞬にして砂の地表に叩きつけられた
途端に砂漠のなか渦巻く大穴に引きずりこまれる、その先には巨大な黒い大きなモンスター、写真でみたことある…
(あれは…アリジゴクだ!!!)
ーーちょっ、!!なんでいるの?!、あれはこの辺には生息しないハズなのに、なんでっ!!?、
すぐさま店長から貰ったお守りを使おうと胸元にぶら下げていたネックレスに手をかける、
(あ、あれ、…な、い、!!)
ざっと辺りを見回すと、私が初めに足をとられた場所に無残にも転がっていた、
ーーあああ、動悸の速さでぶっ倒れそうだ、
長いチェーンにしたからか、倒されたときに首から外れたのかも知れない。無くさないようにと首にかけていたのが仇となった
引きずりこまれぬよう、必死に周りの砂を掴み上げる。しかし残酷にも、私の意とは裏腹に指の間からすり抜けてしまう、
(やだ、ああっ、!!、)
ズルズルと穴に落ちる身体。無駄な足掻きだろうけど、ポッケに用意してあったダイナマイトを投げつけた。
しかしアリジゴクには全く効果なし。
それどころかこの距離の近さなら私に被弾してしまう可能性がある!、
ーーいやだ、もういやだ!、こんな世界なんて、…!!
思い起こせばトリップした当初から最悪続きだった。銃とナイフで殺されかけ、人身売買のブローカーに連れさられそうになり、今なんてモンスターの餌になりそうなのだ!
憎悪、嫌悪、厭世…憎しみと呼べるものの全てが私の心を支配する。
すると瞬間的に現実世界の光景が頭を貫いた、
突然思い起こされるオランヌの言葉…
ーー貴方がこの世界を心底厭い、「本心から『帰りたい』と願わないと無理ですけれどね」ーー
(今がその時なの…、?)
意識が飛びそうになった
途端にふと飛びこんで来た声。
「シリキっ、!!」
一瞬でも懐かしいと感じてしまったのがいけなかったのかも知れない。
しかしそれと同時にひどく安心したのも事実だ、
次に目を開けた時は、全てが終わった時だった
(ああ、なんで…私は…躊躇ったの…)
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