Arabians lost
16◆
16◆chance
ーーオアシスに変なヤツがいる、どうやら魔法使いらしいーー
酒屋で仕事をしていた時ふと聞こえた一言に全身が反応した。
(何?、魔法使いだと?)
ギルカタールでは魔術や魔法は知名度こそあれど「魔法使い」を専門の職業とする人物はないに等しい。需要がないためなりたがる者もおらず、結果的に廃れた職になったという
おじさん達の話をより詳しく聴こうと、話してる彼らに無料で酒を振る舞う
(勿論、店長には内緒だ、バレたらイマードの指示だと言おう)
気を良くしたのか、巷の噂だと言いつつ、その「変な魔法使い」の話をしてくれた
ーー名は、『オランヌ・バルソーラ』。
短髪で眼鏡を掛けている、やわそうな男…とおじさん達は話していた
外見特徴を述べられてもイマイチ客観性に欠けるので、近々マイセンかミハエルが飲みに来たときにでも聞いてみようと思う。
最近、砂嵐が頻繁に来ているので、恐らく彼はオアシスで待機しているだろう…
今にでも駆け出して、とっ捕まえたいが、ちゃんと準備してからにしなきゃね
(おっし!)
気合いを入れるためガッツポーズをした時、ばっちりとあのお方と目が合った。
ーー
「王都の外へ出る?」
「ちょ、声でかい!!」
慌ててカーティスを制する。シャークに知られたら間違いなく止められるだろう。
カーティス「あなたは本当に…。いいえ何でもありません。どうぞお好きなように。僕には関係ありませんから。モンスターの餌食として生涯終えてください。」
「ちょ、待って!、」
カーティス「何です?僕に何をしろと?まさか同行しろとでも?冗談じゃない」
心底嫌そうに吐き捨てる。やばい!そんなに機嫌悪くなるなんて思ってなかったから冷汗ダラダラだ。でもこのままじゃ現実世界に帰るチャンスを逃してしまう。そんなのは嫌!なんとしてでも引き止めなければ!
「お願いっ!カーティス強いんでしょ?砂漠にはモンスターいるみたいだから、一人じゃ確実に死んじゃう!…カーティス一緒来てよ?、ね?」
カーティス「あなた…僕の話聞いてました?それとも、今ここで生涯終えたいと?」
「ああっ…、やっぱ、だめかあああああああー、!!」
必死に頼んでるのにカーティスの機嫌は悪くなる一方だ
やっぱり一人で行くしかないのかな。だなんて諦めモードになる。
カーティス「僕は高いんです。あなたに依頼料が払えるとは到底思えません。それでも依頼するんですか?」
カーティスだってギルカタールの人間だ。
まさかタダで同行して貰えるとは思ってないけどさ…
「……、因みにいくら?」
ピッと指を立たせるカーティス。え、こんなもんなの?余裕で払えるじゃん!、だなんてつい笑顔になるとカーティスが、にやっと含んだ笑みを浮かべる。それと同時に青ざめる私……、
「ちょ、ちょ、!法外!あんたいつもこんなっ!、こっ、こんなに要求してんのっ?!!」
カーティス「だから僕は高いんです。今回は単なる同行ですが、暗殺となるとこの金額は比になりませんよ」
(ひええ…、!)
絶句だ。いつも価格アルコール度数ともに高い酒を何十本も開けてるから相当稼ぐんだと思ってたけどまさかこれ程とは…。もう可能性ゼロじゃん寧ろマイナスだ。一人で行くこと決定!…、だなんて考えてると突然胸に手を当てられ壁に押しやられたのは一瞬のことで。
ーー何も支払いはカネだけじゃない
妖艶な眼差しと艶を含んだ声で囁かれる。
一瞬それが何を意味するかわからなかったが、次第に私の瞳孔が開く。
まさか、
「……私を抱きたいの?、」
理解した通りのことを聞いてみる。
途端に笑い出すカーティス。
(なっ何よ?!、失礼な!、)
カーティス「ご自由にご理解して頂いて結構ですよ。さあ…どうします?」
挑発するような瞳で私を見つめるといきなり首元のに噛み付いてきた。
「っ!?っ、!!」
ーー僕がモンスターなら、噛み付くだけでは済みません。
戒めのつもりなのか、それにしても彼は至極満足した顔をしている。
私は、カーティスを全力で押しのけた
(し、信じられない!、)
カーティスに叫ぶように、結構です!と罵声を浴びせると彼のいたテーブルから逃げるように厨房に駆け出した
(本当、何考えてるんだかわかんない!!)
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