diabolik lovers
ぷち中編)2
昔から自分はどこか欠けていた。
人は失った時、それがいかに大切なものだったか理解する。と良く耳にするけど、私には何かを大切にするという感情は持ち合わせていなかったのだ。
失ったのならば、新しく作り直せばいい。作り直せないならば、失ったものを過去の思い出として心にしまえばいいのではないか。
大切にするということは何かに執着することに等しい。いつかは必ず滅ぶものを執着する方が愚かだと思う。
だから家族同様、本当の兄弟のようにこれまで一緒に生活してきた彼らから離れても別に何とも思わなかった。単なる強がりかもしれない。しかし確かに寂しくはあるが、ただそれだけだった。
(どこにいこうか…)
この先の道なんて敷かれていない。何もない状態。これからどう生きるか死ぬかも全て自由。
そう考えると今まで心に占めていた様々な醜い感情から一切解き放たれた気がした。
ーー
ユーマ「はっ?!エリアが出て行った?!」
コウ「ちょ、ちょっとルキくん!!それ本当?!」
アズサ「……な、んで……」
事を知らない兄弟たちがルキに詰め寄る。
ルキ「俺だって知らん。アイツが決めたことだ」
コウ「そうだとしても…!!引き止めるなり説得するなりしなかったの?!」
ルキ「なぜ俺がそんなことをする必要がある。アイツにとって俺たちは……」
ユーマ「話になんねー。捕まえてくる」
アズサ「俺も…いくよ」
コウ「俺も行く!ちょっと待って、エリアが行きそうな場所に連絡つけてみるから!」
ルキ「……。」
(アイツにとって俺たちは……
いつでも切り捨てられる存在にすぎなかったんだ……)
アイツを駒として見ていたのは俺自身だ。しかしアイツも同様に俺のことを駒としてしか見てなかったのだろう。でなければ出て行くなど考えられない。
その事実を知った時、もう二度味わうことなどないと思っていた感情が湧き上がった。
(俺を……置いて行くな…)
心と裏腹に。
口から出た言葉は俺の最後の意地だった。
「もう二度と…ここへは戻るな」
これ以上失うものなどないと思っていたのに。俺の心は酷くかき乱されていた。
つづく。
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