heart
いはでおもふぞ




お互いすごく苛立っていた。
なのに重ねた手は決して離さない、離してしまったらきっと………。











もう持っていた化粧水やらシャンプーやら無くなり、お気に入りの口紅も大分すり減ってきた。
ここにいる時間が当たり前になってきて、今じゃ自分はこっちの世界の人間なんじゃないか、なんて思う。
でもいつかは帰らなきゃいけないし、忘れてはいけないのはここでの私の存在理由に正当性はないこと。


なのに、…



なのに私はこのままずっとキャプテン達と航海していたいだなんて思ってしまう。
でも、ここでもし「帰りたくない、私はここにいたい」だなんて言った所でどうにかなる問題なのか。
キャプテンに対して「好き」と言ったとしても、自分のモヤモヤした気持ちが晴れることはあるがそれは単なる自己満足であり、キャプテンからしたらだからなんだという話だ。
帰ってしまう身なのに、つかぬ間の恋愛だなんて馬鹿げてる。永遠に続くからこそ価値があるのに。それに、彼に対し恋愛感情を抱くと帰る時が辛くなる。只でさえ仲間として別れるのも辛いって言うのにさ。この気持ちは胸にしまうのが最善だ。それしか方法はないのよ、

でも、…








やっぱり「帰るな」って言って欲しい。言ってくれたら私は存在理由ができる。そしたら私はキャプテンの側から一生離れないんだから!!!

だから、…


だから言ってよ、帰るなって、そしたら私は言えるんだ、帰らない!!!って。








「……っ……。」

「……………。」




ーーくそ、いらいらする。お前はおれに惚れてるんだろ?、なのになぜ「帰る」だなんて言えるんだ?"「帰る」"は禁句だったはずだ、なのにコイツは言いやがった、「いつかは帰るのにね、」と。
それを聞いた瞬間どくん、と胸が痛んだ、ああ、やっぱりお前は帰るんだな、帰りたいと思っている、そんなお前をおれは引き留める権利を有しない、いつもなら欲しいものはなんでも奪ってきた、相手の気持ちなんて考えるはずなんてない、

なのに、…

なんでコイツにはできない?コイツを帰らせないようにするのは簡単だ、両手両足縛り上げて鎖で繋いで四六時中おれの側におけばいい、だがそれをしたところで得るのは虚しさだけだ、そんな事したいわけじゃねェ、コイツがしたいことをさせてやりてェ、だからおれができることはなるべくコイツの意志判断が出来やすいよう干渉しないことだ。

「帰るな」だなんていって抱き締めてキスして抱いちまったら最後、シリキは必ず残るだろう、でもそれは絶対しねェ、コイツが自身で残ることを選択したのならそのときは。










(「帰りたくないよ…、」)

(「帰んじゃねェよ…、」)









いはでおもふぞ、いふにまされり。


(言葉に表すことより、言わないで思っていることの方が想いは勝るのだ)





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