heart
素直になれなくて、
「やかましい」
「やかましい…って!!キャプテンが悪いんじゃん!」
朝から食堂でシリキのギャアギャア喚く声に対してキャプテンの適当にあしらう声が響く。あー、なんだよ朝からうるせえな、ベポどこいった?それかペンギン、いねーのか?ちょいとあの2人を仲裁してこいよ、おれは寝癖を隠すべく帽子を被り直した
「おれは悪くねェ、んな所に置いとくお前に過失がある」
「テーブルに置いといただけじゃない!」
「ごちゃごちゃうるせェ、」
どうやらシリキが大切にしていた"あいぽっど"というものが壊れたようだ。
キャプテンのコーヒーがぶっかかってる時点でもうアレ起動しねえだろうな、
「なんで謝る事できないの!?」
「謝る?冗談はよせ、」
「はあっ!?」
「おい、誰かコイツをつまみ出せ。うるさくてろくに飯も食えねぇ」
「ちょっ?!、もういいっ!!」
「そーかよ、だったらどこにでもいけ」
「…………。」
………あーあ、
バタンっと激しく戸が閉まりシリキが食堂から消えた。すれ違った時のシリキ顔を覗き見たが、髪の毛に隠れてよく見えなかった、
おーい、ベポかペンギーン。
やべぇよ、キャプテンガチで恐えぇー、
キャプテンはチッと舌打ちするとシーンと静まりかえった食堂を一睨みし、吐き捨てるようにコーヒー、とだけ言った
「キャプテーン、シリキどうしたのー?」
……。おーまいがっと!なんつータイミングだ、ベポよ!お前のKYさに最早ひざまづくしかねえよ!おれもう知らねえからなっ!
カチャっと入ってきたのはベポ。食堂にいたクルー全員一体どこに視線を向ければいいのかわからなくなっている、ちなみにおれもそのうちの一人だ、
「ベポ、」
キャプテンの低い声が響く
「少し黙ってろ、」
ポクポクポク……チーン。
無念。ベポはそれ以降何もしゃべらなくなった、お前うたれ弱いもんな、朝っぱらから心臓に悪りいよ、ったく。
「シリキは?」
日もだんだんと落ちてきて今日もどっか飲みいくかー、なんて騒ぎ出していた頃キャプテンのお遣いから帰ったペンギンの一声により再び緊張状態となった。しかし、側にキャプテンがいないとわかるとクルー達皆、安堵の表情になる
「お前今日そのワード禁止な、」
「は?」
「ベポみたいになるぞ」
未だ食堂の隅で体育座りをしているベポに視線をやる
「?(一体何があったんだ)、シリキの部屋さ、アイツの荷物全部なかったんだが」
「はああああっ!?」
急にペンギンが訳わかんねえ事言い出すからついデカイ声上げちまった!、なんなんだよ、シリキまさか、
「シリキ、泣いてたよ、おれ廊下ですれ違った時みたんだ。何があったかわからなかったけどすごく悲しそうだったよ…」
今まで口を閉ざしていたベポが悲しそうな声で言う、おいおいマジか!!
辺りはもう暗くなってきてる、早く船長にしらせねえとやばくねえか?!、シリキの場合襲われる心配は………うん、多分ねえな。どっちかっつーと海軍に保護されたアイツを引き取りにいくおれらに迷惑がかかる、そうなると非常に厄介だ。うん…、つーわけで!
「キャプテーーン!!!」
おれは全速力で船長室へと直行した。
「っ…!?」
すこぶる機嫌の悪い船長を前にしてシリキがいない(正確には出ていった)ことをキャプテンに伝えると、キャプテンは一瞬目を見開き、盛大なため息をつくと「あのバカ連れて帰ってくる、」とだけ言い帽子と刀をひっつかみ夜の闇へと足早に向かっていった。シリキが泣いていた、そう言った時キャプテンは苦い顔をして何か考えていたようだ、しかし、それが何なのかはわからなかった。
ーーー私が怒ってるのは何もiPodにコーヒーをかけられたからじゃないのよ。
もちろんかけられた事はムカつくけどそんなのお金払って弁償してもらえれば済む話じゃない、私が本当に腹をたててるのはキャプテンが謝らなかったこと。凄く小さいことだとはわかってる。だけどさ、一番重要な事だと思うんだよね、自分に非があったら認める、それを相手に対して詫びる、これって人類普遍の原理でしょ?
「ねっ、おじさん!!」
「?あぁ!」
すれ違ったおじさんに咄嗟に話しかけると軽く引きながらも答えてくれた。もうキャプテンが謝ってくれるまで船戻んないもん!
そう心に誓いいく宛もなくさ迷ううちにすっかり辺りは真っ暗になった、
「やば、路地からそれたな」
歩き疲れたので休もうと宿を探してどんどん小路に入ってしまい完全に迷子になった。
まあしょうがない、大通りに引き返すのも面倒なので今夜はこのボロい宿屋で過ごすか、そんな感じで私はベリーを片手に宿屋に入ろうとした。その時、バンッというけたたましい音をたて隣の怪しそうなバーから大柄な男場が出てきた、あれ、この人、
「何ジロジロみてやがる、殺されてェのか」
幾分上機嫌に見えるのはどうやら酒が入っているせいだろう、ニヤリと笑みを浮かべながら物騒なことを言いなさる!、彼はそう、
「ユースタス・キャプテン・キッド、!!!」
「ほォ、こんな小娘に知られるようになるなんてオレも有名になったなァ」
私がぼそりと言ったのを彼は聞き逃すはずなく私に近づいてきた、
ーーーやべえ!めっっっちゃ恐いんすけどお!!殺されるぅう!
私はその場に立ち尽くすしかなかった
「くそっ、アイツどこ行きやがった、」
柄にもなく息切れする程走りまわる
アイツの行きそうな場所は全て探した、ったく手間かかせやがって、早く出てこい、こうなったらしらみ潰し探すしかねェな、そう思い、バンっと勢いよく酒屋の扉を開けると、
「あァ?」
「!…てめェ」
そこには、ユースタス屋の一味の中にニコニコ笑いながら身を置くシリキがいた
「……おい、バカ女、」
「きゃ、キャプテン…」
目の前には我が船長がいらっしゃる、ツカツカとこっちへ歩みよるとぐいと私をひっぱり上げた、ちらりと顔を見るとそれはそれは氷点下並みの冷たい目をしてらっしゃり、いやでも怒りまくってることがわかった、わ、わたし悪くない…もん、、
「うちのが世話になったな、」
キャプテンは目も合わせずぶっきらぼうにそれだけ言うと、私の掴んだ腕をひっぱり店を出ようとした
「大切なら離すんじゃねぇよ、」
ハハハという笑い声と共にキッドさんが後ろから叫んだ、その時ぎゅっと私を掴む手が強まったのを感じた、
「……………。」
「……………。」
無言。
ぐいぐい引っ張られながら私は結局この船に戻ってきてしまった、しかも今いるのは船長室、出ていこうかと考えたが今出たら確実にバラされる、絶対的な無言の圧力がかされてもう息も出来ない程だ
「一つ聞く、」
いきなりその沈黙を破り、私の立つ場所まで歩み寄るキャプテン、な、なによっ!私は悪くないんだからねっ、……ないよね?
「お前、この船を降りるつもりだったのか?」
えっ…。
心臓がばくばくする、なんでこんなに冷たい目をしてるの、いつも私達を見るような目じゃない、この人だれ?、私の知ってるキャプテンじゃないっ、、
「…………。」
「質問を変える、お前はこの船から、
おれの元から逃げられると思ったか、」
「………。」
そう言ったキャプテンはあまりに冷酷な笑みを浮かべ私を見下ろす、船を降りる?そんなこと望むはずないじゃないか、私はただっ……。
もう限界。我慢していた涙が一気に溢れた
「船降りたいだ、なんて、思うはずない、もん、ただ、キャ、プテンが謝らなかった、から、それで、、」
「………。」
下を向いて途切れ途切れに言葉をつむぎ出す、なんて愚かしい女なんだ、私は。
「っ………、でも、勝手に、いなくなって、申し訳、なかったです、だから、、」
「………。」
「そんな、目で、私をっ、見ないで下さ、
私の言葉を言い終えることなく、グイと腰を引き寄せられ重ねられた唇、ああ、私、キャプテンとキスしてる、そう実感したのは軽いリップ音をたてて唇が離された時だった
「悪かった、」
鼻がくっつきそうな距離で囁くように言われた、あれ、キャプテンが謝ってくれた?、私がキャプテンから離れようとした時、また抱き寄せられた
「きゃぷ、てん、」
キャプテンをじっと見ればいつものキャプテンの目をしていた、いつもよりもどことなく優しくて、熱を帯びた目だ
「んっ…、ん」
「………、」
今度はさっきよりも深い深いキス、ああ、キャプテン、ちゅー巧いなあ、気持ちいいもん、なんてぼーっとした頭で考える
「シリキ、」
「…!」
そう色っぽく呼ばないでよ、おかしくなりそう、
「きゃ、ぷてん、」
「名前呼べ、」
「…ロー、」
そう呼んだ直後にまた激しいけどひどく優しい口付けがふってきた、ロー、ごめんなさい、何処にでも行けって言われたって、もう貴方の側から離れられないの、そんなこと言えるはずなんてないから私は自らローの舌に絡みついた
言わなくても伝わってるかな、
ーー素直になれなくて、それはお互い様なんだけど
(「いやぁ〜、これで船内の雰囲気も戻るな!」
(「なァなァ、シリキなんかすげェ、エロくね?」)
(「やばくね?」)
(「覗きとはいい趣味してんじゃねェか…ROOM、」)
(「「ぎゃー!!!」」)
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