heart
その言葉が欲しかったのよ、私はね





「ひーまー」

「暇だな。」

「ヒマだね」

「なんかしてよ、シャチ、」

「ベポ、お前なんかしろ」

「え、おれ?」

「じゃあペンギン」

「言い出したシリキ、お前がしろー」

「じゃあ、べぽ」

「え、おれ?」







…はい、無限ループ。




雨がしとしと降り続けている今、私たちは下らない会話を食堂で繰り返していた。
暇だ暇だと言いつつ、たまに訪れるこのぐだる時間が好きだったりする。
高校の頃、某ファーストフード店・某ファミレスに何時間もだべってたな、
あれ?だべるだなんて死語かしら?





「おい、シリキお前なんか面白い事しろー、ちなみに10秒以内な」

ぼーっとしてたらシャチがこれまたやる気のない言い方で私をみやる。
10秒以内だなんて無茶ですぜ、旦那ァ。
…あ、待てよ。




「おし、デートしよう!」





私がすくっと立ち上がると、さっきまでぐだぐだ感マックスだった奴ら(ペンシャチベポ)が生気を戻した目を向けてきた





「デート?いつ?」
「デート?どこで?」
「デート?だれと?」






…………。
説明するのも面倒だったので私はふらっと食堂を出て自室に足を運んだ

奴らをちらりと振り返ってみると依然としてぐだーっと暇だ暇だなんてのたまっている、けけけ今に見てろ…!








「おまたせ!遅くなっちゃってごめんね?」





俺達とは対称的な明るい声がしてなんだとみやるとそこにいたのは、







「?!」
「!?」
「シリキ!?」








黒の光沢を放つサテン地のワンピースを纏い、髪を一つにまとめ、ヒールの高いミュールをコツコツならしながらこちらにやってくる女。


丸襟から覗く鎖骨、ボディラインのわかるピッタリしたシルエット、ミニスカートから下に伸びる足に思わずゴクリと喉を鳴らしてしまいそうになった


コイツ普段からそうしてりゃいいのに楽だから(大切なお洋服達が傷つくから)という理由で船内では基本ジャージ。化粧もこんなに濃くねえ(下品な濃さじゃねえのが不思議だ)


今前に勃つ……じゃねーや、立つ女の濡れた唇、長い睫毛、ほんのり色つく頬を見てるとやっぱこいつやべえ、いやらしいわ、まあ元々色気あるやつだからな、なんて考えてると、








「やべえ、勃った」

「あんた、しょっぱなからその台詞?」



シャチは股間を押さえながらガン見してきたので、そのいきり勃ったモノを目にいれないようべぽとペンギンの前に来てにっこり微笑んだ




「うわあ!!シリキじゃないみたい!」

「………。」




ベポが屈託のない笑みを向けながら辛辣な言葉を言い放つ。




「デートは俺のベッ「いやー、人間どんなにアレでもなんとかなるもんだな」




……アレってなんだよ、ペンギン。つかキャス氏ね。
もうこの船にはもっとスマートに褒めてくれる人いないのかしら、あ、私の日頃の行いが悪いせいね、、





「おーまいがっしゅっ!私の存在って一体。」





座っていたベポにぎゅっと後ろから抱きつくと右の視界からシャチが膝跪き、両手を広げて、さあこの胸に飛び込めだなんとか言ってる、とりあえず無視、てか、お前はそのそびえ勃つモノを静めてこいと言いたい。







「ぎゃあぎゃあうるせえな。」






お!出ました我らがキャプテン。
相変わらずクールに一言いい放ち、「コーヒー」と近くのクルーに言うとツカツカこっちのテーブルに来てドカッと腰を降ろす





「ねえねえ、キャプテン!シリキがね、」

「あ?シリキ?アイツがまた馬鹿やってるって?」





どうせずっと本を読んでいたんだろう、こめかみを押さえながらうーとかあーとか言いながら適当に流すローさま、おいおい、話くらい聞いてあげなさいな。私の話なのよ、キャプテン!





「船長!シリキやべえよ」

「アイツの話よりコーヒー。早く持ってこい」





くっそー。なんなんだこの扱い。私はコーヒー以下か、ふつふつと沸き上がる憤りを堪えながらローの側に寄りコーヒーを渡す。




「はい、どうぞ」




私がクルーの代わりに彼のマグカップを置く。ふとコーヒー越しに目があった。





「………。」


「………?」







なんなんだこの沈黙。ローがふと顔を上げた。やっとお互い視線が合わさると一瞬驚いた顔をしたがすぐにいつもの余裕のあるあの妖しい笑みを浮かべて全身を嘗めるように見つめる、ちょっと!!何っ?私が選んだお気に入りのワンピースなんだから似合わないはずはないんだけどっ…!





「……コーヒー冷めますよ、ローさん」





名前をわざとらしく呼ぶとますますニヤニヤしてこんどは体ごとこっちを向き直した、そして、









「綺麗だ」









私を射抜く視線でそれだけを言葉にすると手にとられた甲に口付けされた







顔がきっと真っ赤だ。
あれ、私こんなにチーク塗ったかしら?



その言葉が欲しかったのよ、私はね




(やべえ、勃った)

(結局、お前もかい!)



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