*Heart Swing* 1* 若頭と呼ばれたその男、東条司は ニヤっと何かを企んでいるような 笑みを浮かべると 「おい、広瀬」 「....なんでしょう若」 「あとは頼んだぞ」 「はあ...そんなことだろうと 思いましたよ」 広瀬の肩を軽く叩くと 横をすり抜けて部屋を出ていった。 いつもの脱走癖だ。 しかしいつも仕事は完璧に 済ませていくだけに、特に文句もいえない。 せめて、脱走しても 数時間で戻ってくれればと思う。 ひどいときは丸二日戻らないときもあった。 広瀬は深いため息をつくと 一点をみつめて、誰にも聞こえない ような声でつぶやいた。 「......あれから、 もう三年も経つんですね...」 普段はあまり感情のうかがえない 広瀬の顔が このときだけは 悲しげだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |