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camellia - カ メ リ ア -
 02. 



生きてる。



視界が狭い。左目の眼帯のせいだ。腕が上がらない、脚も動かない。身体が重い。頭が痛い。膝も、脇腹も、身体のありとあらゆる箇所が痛む。でも、確実に生きている。

病室はカーテンで仕切られていて、廊下からは忙しなく過ぎる足音がする。腕が痛くて、ナースコールを押せない。

「…すみません」

小さいながら、声は出る。だけど誰かが気付く気配はない。じっと待っていようにも、頭痛が非道い。

「すみません」

もう一度呟くと、病室の前を通り過ぎようとしていた足音が、ぴたりと止まった。
ゆっくりと訝しむように、少しずつ足音はこちらに近付いてきて「失礼します」と小さな声が聞こえると同時に、カーテンが揺れた。

若い看護士と目が合う。看護士は目を見開き驚いた表情をしたかと思うと、すぐにそれを切り替え、きりっとした表情になった。

「おはようございます。 大丈夫ですか? ここは病院です。 どこか痛むところは?」
訊きながら、看護士はナースコールを押す。
「頭が」あと、全身が。答えて、俺は再び目を閉じる。とにかく頭が、割れそうに痛い。

それから男の医師と看護士ふたりがやってきて、どうして入院したのか、そして今後どう治療していくのかを説明してもらい、点滴の針を入れ替えて鎮痛剤を飲まされた。

どうやら命に別状はないらしい。
ただ、左半身を激しく強打していて、傷が癒えたらリハビリを始めると言われた。そして地面に叩きつけられた際、脳震盪を起こして、事故から丸二日、俺は高熱で寝込んでいたらしい。



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あきゅろす。
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