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camellia - カ メ リ ア -
 10. 

ピー、ピー、と耳障りな機械音で目が覚めた。

どうやら獅子雄のベッドに突っ伏してそのまま寝ていたようで、妙な機械音は俺に繋がっている点滴から発せられたものだった。

束の間、迷ったけれど俺は勝手に点滴を止めて腕に刺されていた針を抜く。あまり必要だとも思えない。針の痕にぷくりと盛り上がった血を真っ白なシーツで拭った。泣き腫らし、熱く重たくなった瞼をこする。窓の外は暗闇が広がっている。俺たちが気を失ってから、丸一日経った頃だろう。

このまま獅子雄が目覚めなかったらどうしようか。

不安は急速に俺の身体を侵食していく。そんなのいやだ。どうしてだろう、俺はこんなにも自分勝手で我儘だ。俺が獅子雄を刺したのに、生きていて欲しいだなんて。生きている獅子雄にまた触れたいと思うなんて。そんなの許されるとは思えない。

再び溢れてくる涙を両手の甲で強く擦る。それでも涙は止まるどころか滝のようにばしゃばしゃと流れて、気付けば顔を覆ったまま声をあげて泣いていた。

そういえば母が死んだとき、母を失ったと分かったとき、俺は泣いただろうか。病院で目覚めて、医師や看護師に同情の眼差しを向けられ、父はまるで化け物を見てしまったような、その瞳の中に計り知れない恐怖を渦巻かせていた。俺はあの日突然にひとりぼっちになってしまったんだ。

悲しい。

我が子の手を使って死んだ母も、殺すこと以外の選択肢を持っていない俺も。なんて臆病で愚かだろう。俺と母は同じだ。愛して欲しいと、身体の細胞ひとつひとつが痛いくらいに叫んでいる。愛して愛して、愛して愛して愛して。いつの間にこんなにも臆病で、愚かで、底知れぬほど傲慢になってしまったのだろう。

ふと手首に何か触れて、俺は弾かれたように顔を上げた。その瞬間、腕を強く引かれてベッドに前のめりに沈み込む。

「うそ………」

涙で霞む視界の中心に、自ら酸素マスクを剥ぎ取る獅子雄がいる。ピー、ピー、と再び甲高い音が室内に響きわたり、獅子雄はそれに舌打ちを漏らした。俺の手に、その長い指を絡ませながら。









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あきゅろす。
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