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camellia - カ メ リ ア -
 06. 

言葉が進むに連れ、爪先からじわじわと熱くなっていき、えもいわれぬ興奮と緊張を覚えた。蛇岐の唇から紡ぎ出される言葉が、ほつれた糸を丁寧に解き、するすると俺の中に染み込んでいく。それは、まるで神の救済のようだった。

蛇岐は先程と同様に締めくくり、二本目のタバコを咥えた。俺はそれまで眺めた後、立てた膝の上に顔を伏せ一度だけ大きく深呼吸をし、そして意を決して口を開いた。それは、俺が決して認めずに隠し持っていた一部分。

「俺、獅子雄を殺してしまいたくなるんだ」

脳裏に浮かぶのは、植物園での一件。


「駄目だって、悪いことだって分かってる。 もし本当に死んじゃったら、きっと後悔すると思う。 だけど獅子雄を見るたびに、獅子雄が俺に好意を示すたびに全部欲しくなって、そしたらもう誰にも見せたくなくなって、ずっと俺のそばにいたらいいのにって、好きだって思ったら、もうどうしようもなくなって、獅子雄が離れていくのを想像しただけで、怖くなって耐えられなくなって、だから安心したくて、その為にはもう、殺すしか………俺が獅子雄を殺したら、永遠に俺だけのものになるって思ったらっ……こ、殺してしまいたくなるんだ………」


言った。

言ってしまった。

他人に話してしまった。もう取り消せない。しらないふりもできない。口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うほど、五月蝿くなっている。大きく呼吸を繰り返しながら、蛇岐の反応を恐る恐る待っていると、蛇岐は静かに俺の話を聞いた後、うん、と頷いた。




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