太陽の子守唄 2 我々…? 「我々って…?」 少しは分かっていた。 でもきちんと天霧達の口から直接聞きたかった。 太陽は頭を傾げて天霧の言葉を待っていると、風間が目を見開いてこちらを見た。 「お前は…自分が'鬼'だと知らずに生きていたのか!?」 「鬼なんて…お伽噺の中のものじゃないですか。」 「いえ、鬼は実在しますよ。」 そう言って天霧は救急箱を戸棚に仕舞う。太陽は着物を正すと、納得がいかないようで顔をしかめた。 「兄上は鬼じゃないよ。私と同じ怪我をしても治りは遅いもん。」 「兄上…?」 「お前、兄貴いたのかよ!?知らなかったぜ。」 「言ってなかったもんね。私と歳が結構離れた兄がいるんだ。…でも、血は繋がってないんだ。」 「何か…深い事情がありそうですね。」 天霧が言うと、風間が「話せ。」と上から見下してきた。それが気にくわなくてそっぽを向くと、不知火が風間を退かして目の前に座った。 「ダチの間に隠し事はなし…だよな?」 「そう言われちゃったら…言うよ。」 ***** 太陽が自分の昔話を話すと、三人は黙り込んでしまった。 太陽は酔いが醒めてきたので酒を口に含むと、不知火を見た。 「感想は?」 「鬼が…しかも女鬼が捨てられるなんて…よっぽどの理由があったんだろうなぁ。」 「鬼も女鬼も一緒でしょ?」 「女鬼は稀少なんですよ。だから普通は大切に育てるのですが…。」 「お前、名字は。」 「…佐々木。」 「違う。前のだ。捨てられたときの名字は。」 「し、知らないよ!ってか覚えてないよ!」 太陽は首を横に振りながら答えると、風間は大きなため息をついた。それをみてムッとしていると、不知火が立ち上がった。 「今まで一緒に気づかなかったなぁ…そうか、お前も鬼だったのか。」 「じゃあ…三人も?」 「えぇ。私達も鬼です。不知火は長州の鬼ですが、私と風間は薩摩の鬼です。」 「西の鬼って事だね。と言うことは東にも鬼がいるんだ。」 太陽が言うと、天霧は頷いた。 「風間は西で一番大きな力を持った血筋の者です。」 「東は…確か雪村っつったかな。」 「滅亡したと聞いているがな。…もしかしたらお前がその生き残りだったりしてな。」 「雪村…か。知らないなぁ。」 太陽は首を横に振ると、外を見た。すると、先程別れた高杉が馬に乗って待っていた。高杉は太陽に気付くと手を振った。太陽は振り返すと三人の方を向いた。 「高杉が迎えに来たから帰る!!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |