太陽の子守唄
2
「はいはい、そこの三人組〜。」
いきなり誰かが後ろから桂と太陽の肩に腕を回してきた。
「失礼な奴だな。」
酔っ払いか何かだと思って振り向き顔を見ると…あら、イケメン。その緑のバンダナが良く似合うわ。(ついでに永倉 新八だということが後々分かった。)
桂はすぐに壬生浪士組の奴等だと気付いた。
すぐに笠を深く被り、永倉の腕を払い除けると太陽を引き寄せた。この時、何が起こっているのか分からなかった太陽は桂の腕の中でじっとしていた。
「こんなところで何してるの?桂。」
さらにもう一人永倉の後ろからやって来た。切れ長の目に、茶色の髪を後ろで結っている。そして…これが沖田 総司だった。
「ー…。」
桂は黙っていた。自然に太陽を抱く手に力が入る。太陽は不安に押し潰されそうになりながらそっと桂を見上げた。
「…桂?」
桂にしか聞こえないように小声で話しかける。と、それが合図のように相手が刀を抜いた。太陽はビクリと肩を揺らすと、それに気付いた桂は俯いた。
「待ちたまえ、若者。我々は京都に遊びに来た老親子…と、犬。」
ピッと以蔵を指す。以蔵はまだ伸びているようだ。と、沖田がふぅんと言いながらニコリと笑った。目は笑っていないが。
「おじいさんの割には良い刀持ってますね。その刀と同じものを持ってる人と会ったことあるんですよ。……桂 小五郎って言うんですよ。」
相手は完全に桂だと分かって話している。いくら変装の得意な桂でも、今はする時間もなければ意味もない。
「ふむ…。」
そう言って然り気無く太陽を自分の後ろに隠す。だが、それを沖田は見逃さなかった。
「…隠し子?」
面白そうに後ろを覗き込む目を避けて、桂の背にしがみつく。と、これ以上は危険と判断したのか桂が前を睨んだまま小声で話しかけてきた。
「…いいか、以蔵と俺で奴等を引き付ける。混乱に乗じて全速力で屋敷まで逃げろ。……すぐに追い付く。」
そう言ってじりじりと距離を詰めてくる壬生浪士組と離れる。
「さぁ…観念しやがれッ!!」
永倉と沖田が桂に向かって突進する。と、今まで伸びていたと思われていた以蔵が飛び起き、大きく刀を横に滑らせた。
「!!」
虚をつかれた形となった。そして…。
「逃がすなッ!!」
沖田の号令で後ろに控えていた仲間が襲ってきた。と、桂が指を鳴らすとこちらも何処からともなく攘夷浪士達が刀を片手に飛び出してきた。
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