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太陽の子守唄
10
三人は酒を片手に、これからの日本を肴に飲んでいた。部屋には月明かり以外に光がなく、幻想的な感じだった。

「日本はもっと外国の武器を取り入れつつ、富国強兵を目指すべきなんだ。」

高杉がいい感じに酔ってきて論じているのを黙って聞いている。不知火は分かっているのか分からないが、時々頷いて'聞いている'と意思表示をしていた。太陽は不知火の用意した枝豆をちびちび食べながら酒を口に流し込んだ。
先程教えてもらったのだが、不知火も長州の人間で、高杉とは親友と呼べる間柄で、新しいものに目がないと言っていた。
そして、いつもは人の前に姿を現さないらしい。夜、桂達の目を盗んで入ってきては高杉の話し相手になるようだ。

『普通に入ってくればいいのに…。』

とは思うが、他の人間と関わりあいを持ちたくないと言っていた。では、何故私の事は許してくれたのか…。これも後から教えてもらったのだが、高杉が太陽が来てから毎回酒の肴として話していたらしい。それを聞いているうちに興味が沸いたらしい。
高杉…さん。話題にするほどお話しした記憶がございません。

「高杉。今外国では'銃'が主力らしいぜ。あと、陸で使う大砲もだ。」

「銃…、火縄銃の事か?」

それが違うんだな…というように、自分の銃を見せた。銀色のフォルムに弾も銀だ。

「これは火縄銃みたいに一発一発弾詰めをしなくていいんだ。連射が出来るんだぜ!」

これには興味が沸いたらしい。高杉は不知火から銃を借りると、全体をくまなく見て構えた。

「……何で私に向けるんですか。」

「…何となく。」

「酔ってるんですか!?そのまま撃たないでくださいねッ!!」

そう言うと高杉はすっと銃を降ろした。良かった、マジで撃たれると思った。内心バクバクしていると、不知火が使い方を教え始めた。

「こいつで標準を合わせて、引き金を…そっ、そこだ。そこを思いっきり引くんだ。」

「成る程…。」

「成る程…じゃありません。…いい加減にしないと怒りますよ?」

「ハハハハハ…冗談だ。」

「声も顔も笑ってない!!」

太陽が本気で高杉を怒っても、高杉の耳には何も入らないらしい。すると不意に不知火が声を上げて笑いだした。太陽はこんなにも笑うとは思っていなかったので、目を見開いて不知火を見た。高杉も初めて聞いたのか動きが止まった。と、不知火が笑い過ぎたらしく涙を拭きながらヒーヒー言って吹き出した。

「いや…すまねぇ、あまりにもお前が面白くて…ププッ。」

思い出し笑いを何度も繰り返した後に酒をグイッと飲み干した。

「いやぁー、人間何て下らない奴等だと思っていたら、こんなにもイイ奴が二人もいたのか…。会えて良かったぜ。」

へぇ〜説得力全くないんですけど。まぁいいや。なんか良い奴っぽいし。太陽が気にせず酒を飲むと不意に不知火が口を開いた。

「それにしても…お前何で男装なんてしてんだ?」

「……ーえっ!?」

驚いて素っ頓狂な声を出してしまった。えっだって今不知火…男装って…。
太陽が口を開いたまま不知火を見つめていると、高杉がフゥと息をついた。

「何だ、気付いていないとでも思ったのか。」

「高杉さんも気付いていたんですか!?」

スッゴい自信があったのに…。んっ?と言う事は、あの時攘夷浪士が優しかったのは…。

「私が女だと気付いていたからぁぁあああ!?」

太陽が絶叫している横で不知火は腹を抱えて笑い出すし、高杉は馬鹿を見る目で私達を見て酒を飲んでるし。凄い日になった。

その後一時間後に桂達が帰ってきたが、不知火は気付かれないように帰っていた。太陽は酔い潰れて寝ているし、高杉は本を枕に夢の世界に旅立っていた。



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