太陽の子守唄 6 太陽が考えに耽っていると、不意に襖が開いた。太陽が驚いて短い悲鳴をあげると、相手はもっと驚いたようで(太陽の存在と声に)龍馬に至っては尻餅をついている。 「す…すまない!驚かすつもりはなかったんだが。」 「いっいえ!こちらも驚きすぎました!」 「くっはは!おまんは本当に面白き娘じゃの!」 「フフッ…。」 「!!」 笑った。 あの滅多に笑わない(←龍馬曰く)以蔵が笑顔でこちらを見ている。太陽はそれが嬉しくて驚くより先に一緒に笑っていた。 「ハハッ…と。危うく忘れるところだった。太陽、我々はこれから留守にするからな。」 「えっと…武市先生と…アギさんの所ー…ですか?」 《………。》 「えっと…盗み聞きするつもりは…無かったんですけど。」 上目遣いで三人の顔色を窺うと、急に笑い出した。太陽はキョトンとして皆の顔を見渡す。すると龍馬は笑いを噛み殺して太陽の肩に軽く手を置いた。まだ肩が震えているが…。 「アギも武市も一緒ぜよ!」 「龍馬だけぜぇ、武市先生を'アギ'言うがは。」 「あー、アギって?」 「アギとは、土佐の方言で'顎が出っ張っている'ことらしい。要するに悪ふざけで呼んでいるんだ。」 「あーははは。」 太陽は苦笑いをしながら武市さん大変だなと思った。 …ん、待てよ。なら桂は…'桂=カツラ=ヅラ'…ヅラッ!?呼びたいような、呼びたくないような…むしろ命の危険を感じるような…。 太陽がそんなことを考えているうちに、いつの間にか身支度を終えてきた以蔵が文字通り跳び跳ねてきた。脚力が他の人より強いのだろう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |