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太陽の子守唄
2
立派な日本庭園を抜けると、そこにはこれまた立派な武家屋敷があった。周りに人の気配はなく、鳥の声が僅かに聞こえるぐらいだ。龍馬は太陽をよく日の当たる縁側に座らせると、救急箱を取りに屋敷の中に入っていった。

「………。」

太陽はやることがないので周りを何度も見渡した。大きな松が人目を避けるように屋敷を囲み、庭の真ん中にある松の下には色とりどりの金魚がいる池があった。

「…綺麗。」

「おっ!おまんもそう思っちょったか!」

「あ…!」

後ろを見ると先ほどぶつかってきた男、龍馬が救急箱を手にやって来た。

「さっきはすまん!」

「いえ…!私もまだここに慣れていなくて…周りに注意を払っていなかったんです。すみません。」

そう言うと龍馬が驚いて顔をあげた。

「おまん、京都は初めてか?!」

「あっはい!―…私、佐々木 太陽と言います。」

「俺は坂本 龍馬ぜよ。太陽、八ツ橋は好きか?」

「'やつはし'…?」

太陽が分からないといった表情で聞くと、龍馬はにこにこしながらまた中に戻っていった。

『忙しい人だな…。』

そう思ってふと視線を下げると、いつの間にか傷の所に包帯が巻かれていた。これは自分でつけたのだから謝る必要などないのに…。それに。

『言うべきか…?武蔵の所から逃げてきたと。』

言ったところで「はい、そうですか。」と終わられては困る。なんとか今日だけでも宿を確保しなくては。明日は京都にいる鶴亀屋の双子の妹を探して連絡を取ってもらおう。もう外の世界には出たくない。兄上の言う通り怖いところでした。

「さて…どうしようかな。」

「どうした?家でもないのか?」

「ぎゃあッ!!」

驚きながら視線を上げると、そこには長髪の男ときつそうな目をした紫髪の男と、目の下にクマの出来たボサ髪のボロ着物を着た男が立っていた。

「お前…どうしてこんなところにいる。」

「どっかの回し者かもしれんき。」

「さぁ…、どうだろうな。」

「えっ…えと…。」

腰に帯びているモノを見て声が出なかった。今それを抜かれたら絶対に殺られる。別に自分ではいった訳じゃないのに何故睨まれなければいけないんだ。坂本さん、早く帰ってきて!



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