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太陽の子守唄
2
走っても走っても同じような獣道が続く。太陽は更に早く走ろうとすると、不意に後ろの方から殺気を感じ横っ飛びに避ける。と、先程自分のいた場所に刀が深々と刺さっていた。相手は私を殺そうとしている。

「誰だ!私を佐々木小次郎の妹、太陽と知っての狼藉かッ!!」

するとクククッと近くで笑い声がした。太陽はその方向を定めようと耳を澄ますが、反響して場所が特定出来ない。

「やっと出てきたのか…子供。」

『子供ッ…?!』

ムカッとして後ろを見ると、そこには誰も近寄りがたいオーラを放つ男が立っていた。両腰に一刀ずつ差し、三十いっているかいっていないかという姿だった。
周りには二、三匹の蝿が飛んでいる。

「…誰だ。」

「我が名は宮本武蔵。…佐々木小次郎に決闘を申し込まれた者だ。」

「宮本…武蔵?!」

太陽が目を見開き武蔵を睨む。何故こんな刻限にこんな場所へ?!兄上との決闘はどうしたのか…。

「貴様ッ!我が兄と決闘を行うのではないのか?!何故この様なところで油を売る!?」

地面に刺さっていた刀を抜き、武蔵と相対する。と、武蔵が笑いながら二刀を手に取った。太陽は刀を武蔵に向けながら少しずつ近づく。

「答えろッ武蔵ッ!!」

刀を降り下ろすと二刀で挟まれ、動きが止まった所で腹に蹴りをもらってしまった。太陽は口から血を吐きながらも袖で拭い取った。そしてまた刀を構える。相手は小次郎と肩を並べる剣豪。ヒヨッコの太陽がいくら足掻いたところで勝機はない。それに武蔵の相手は本来ならば兄の小次郎である。今ここで斬っても良い相手ではない。

「くそぉぉおおおッ!!」

上段からの斬り下げ。だが惜しくも袖下を僅かに斬っただけである。と、武蔵が不敵に笑った。

「何が可笑しい!」

「クク…いや、なかなかどうして…?女子供がこの宮本武蔵と斬りあいを演じて見せるとは―…。」

「女と甘く見ていると痛い目に遭うぞ!」

今度は下段から横払いに斬る。が、武蔵は一足早く後ろに跳躍していた。

「流石は小次郎の妹。…貴様、俺の元へ来い。」

「何!?」

途端、武蔵の刀が先程よりも早く降り下ろされる。太陽はすぐに反応できずに刀を弾き飛ばされてしまった。

「しまっ―!!」

必死に腕を伸ばすも武蔵の方が早かった。武蔵は無防備な太陽の首へ一撃放った。太陽は短いうめき声をあげながら意識を手放した。



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