シスコン☆プリンス
8
起きたのは夕暮れになってから。俺は保健室のベッドで横になっていた。
「!起きたか。」
「大丈夫ですか?天龍。」
「う…ん。大丈夫。」
そう言って起き上がろうとしたら凄い痛みに襲われてまた倒れた。そして天霧がそっと布団を被せた。
「もう少ししたら、風間が来ますよ。」
「何人か連れてな…。」
「何人…?」
天龍が聞くと、不知火は頷いて近くにあった椅子に座った。その時は先生を連れてくるんだと思っていたが、来たのは俺に花瓶を落とした男子生徒達だった。
「ちぃ兄…。」
三人はぼろぼろの雑巾みたいな顔で頭を床に擦り付けながら土下座をしていた。その後ろで風間はあの時と変わらない表情で見下ろしていた。
「…二度と、妹の前に現れるな。」
赤い血のような目で睨むと、彼らは泣きながら保健室を出ていった。
「どうして…あの人達はぼろぼろに…?」
「風間があの後追いかけて恐怖という恐怖を与えてきたんだよ。」
「止める気はありませんでしたが。」
不知火がしてやったりみたいな顔で笑い、天霧は仕方のない事だみたいな顔で頭に巻いていた包帯を巻き直した。と、風間が天龍のベッドの横に椅子を置き、天龍の手を優しく両手で包み込んだ。天龍は初めてこんなことをされたのでビクつくと、風間は天龍に嫌われたものだと勘違いしたのか、辛そうに天龍の手の甲を額に当てた。
「……。すまなかった。」
「ちぃ兄…。大丈夫だよ。心配しないで。」
頭痛で顔を歪ませながら出来る限りの笑顔で答えた。
…そうだね。その時から兄貴は変わったね。
登校する時は、前に兄貴、真後ろに俺、そして両隣を天霧と不知火に囲まれて歩いた。
学校でも教室の外まで送り、帰りには迎えに来てくれた。卒業後も過保護な生活は変わらなかった。小学校の門の所まで毎回遅刻ギリギリになりながら送り迎えをして、絶対に一人で外出させてもらえなかった。何度か千鶴達と遊んだが、全部叱られた。一度は不知火を女装させてまで同行させようとしていたが、不知火が可哀想になり止めたことがある。
そんなシスコン兄貴の影響で二人は今まで以上に甘くなった。
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