シスコン☆プリンス
3
「なっ…長かった。」
「そうだね。でもいつもは短いらしいよ?」
「あの生徒会長があんな長ったらしい口上を並べるから…。」
確かにそう思う。あの後、兄貴はどこで習ったのか三十分ぐらいずーっと話し続けた。校長は長くて有名だけど、短く感じた。それだけ兄貴の演説は長かったという事だ。と、隣から声がかかり見てみると、懐かしい顔がいた。
「中学の卒業式以来だな!天龍!千鶴!」
「平助じゃん!久しぶりぃ!」
「平助君も同じ高校だったんだね!」
平助は千鶴と一緒で小・中一緒の大親友だ。よく放課後に兄貴の迎えが来るまで校庭で走り回ってたなぁ…。そう思って下から眺めていると、髪の毛を見て絶句した。
「平助!髪の毛切ったの!?勿体なぁい!!」
「似合わないか?」
「まさか!」
そう言って笑う。と、不意に教室の扉が開いた。しかもそこには…。
「げっ…ちぃ兄。」
「?どうした、天龍。―…って、生徒会長じゃん!!」
平助が驚く。と、風間の後ろにいつも通り天霧と不知火が立っていた。
「なっ…何で生徒会長が―っ?!」
教室がざわつく。…何をしに来たんだ?このシスコンッ!と、風間が静かに天龍を見ながら言った。
「来い。天龍…。」
「!!!!!」
「えっ…?!」
千鶴が驚く。当たり前か…皆俺と兄貴の繋がりを知らないから…。名字違うし。俺の学園生活台無し…。
「早くしろ。」
風間に呼ばれて天龍は渋々廊下に出た。
「何の用「落ちていたぞ。「えっ…?」
そう言って渡されたのは、端の方に'天龍'と書かれた黄色い花の模様の描かれたハンカチだった。これは中学を卒業した時に兄貴から貰った物だ。でも、それはポケットの中に…
「あれっ?!」
両方のポケットを漁るが、あるはずのハンカチがなかった。…当たり前か、目の前にあるんだから。
「ありがとう、ち「俺は生徒会長で、お前より大先輩なんだが?「……?」
言っている意味が分からなくて不知火と天霧を見るが、二人はニヤニヤしているだけで何も教えてくれない。天龍は仕方無く素直に頭を下げた。
「あ…ありがとうございます。…生徒会長。」
「それでいい。」
そう言い残して、風間は来た道をゆったりとした足取りで何処かへ行ってしまった。しかも天霧と不知火も一言も交わさずに去っていった。
「?」
訳が分からず教室に戻ると、千鶴が駆け寄ってきた。
「何か…されましたか?」
「いや、何も。」
兄貴にしてはありえないぐらい何もなかった。いつもだったら
'俺のやったものを落とすとはいい度胸だ、天龍。'
とか
'兄様と呼べ。風間 天龍。'
とか言うんだけどなぁ。
「落とし物拾ってくれたみたい。」
「へぇ…。」
南雲が面白そうに聞く。←ってかお前二年生だろっ
と、教室に人が入ってきた。
「さぁ!とっくに予鈴は鳴ってるぜ!!」
「あっ!左之さんだ!!」
「左…?あぁ、英語教師か。」
平助と千鶴が席に戻った後は、黙って担任になった原田を見ていた。
『土方さんが良かったなぁ…。あっ無理だ。土方先生はちぃ兄の担任だった。』
そう思って窓の外を見ると、ベランダから地響きが伝わってきた。そして遠くから叫び声が聞こえてきた。
「総司ぃぃいいい!!」
「何ですか〜土方さぁん。ってか教師が生徒の前で全力疾走していいんですかぁ〜?」
薄桜鬼学園の名物、教師と生徒の鬼ごっこ。まぁ大体はこの二人なんだけど。と、原田があーあと二人を見ていた。
「土方さ〜ん!HR始まってるんだけど〜!!」
「こいつを取っ捕まえたらすぐに殺るっ!!」
土方先生、意味変わってます。と、沖田が天龍に気付き余裕の表情で手を振ってきた。天龍も振り返すと、周りの女子がキャーキャーと騒ぎだした。
「なっなんだ?!」
「キャー!沖田先輩素敵ー!!」
「総司モテてんなぁ。」
「平助もモテてんじゃん。ほら、もう廊下に人だかりが出来てる。」
この学園のアイドル、沖田、斎藤、平助は御三家に入る。ついでに大人な君のために何年もその座に居座っている土方、原田……風間。も御三家に入っている。と、平助は頬杖をついて天龍を横目に見た。
「お前もモテてんだろ。…女から。」
そうだ。不知火曰く'兄妹は似るもの'で、美形(だと思いたくないが)な兄貴で一応俺も良い顔らしい。自分的に変な感じもするが。
そのお陰で今まで女子にしかモテたことは無い。…影で兄貴が男を近づけないように細工していたらしいが…。
「えー。そんじゃ自己紹介するな!俺は原田 左之助、このクラスの担任だ!皆宜しくな♪」
素敵な笑顔を振り撒く。 不知火と気が合いそうだなぁ。
その後は全員一通り自己紹介をして軽く話をすると、ついに委員会決めをすることになった。
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