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シスコン☆プリンス
7

「手を抜くなよ、天霧、不知火。」

「抜けるかよ。」

不知火が一筋の汗を流しながら言うと、天霧は風間の後ろで震えている天龍が目に入った。

「…このまま戦うと天龍にまで被害がいきますよ。」

「…天霧、何処かに置いてこい。」

「その間は俺達が耐えてんからよ!」

「……分かりました。」

天霧は天龍を抱えると何処かへ走った。風間達はその間頭領達と目を逸らさなかった。

「何であんなガキが必要なんだ?」

「…お前は不知火家の倅か。そうだな…お前は知らないだろう。戦線離脱したからな。」

不知火は小さな声で悪態をつきながら前傾姿勢で構えた。恐らくこの話から抜けさせたのはお前らだろう、と言っていたのだろう。
…不知火は元々妹は要らないと言っていたから離脱したのかもしれないが。
風間は頭領と横向きで対峙した。こちらの方が相手に見える体積が少なく、攻撃の瞬間が分かりにくい。

「頭領…理由ぐらい聞かせてくれ。」

「理由…?決まっているだろう、その娘を千姫家に引き渡すのだ。」

「なん…だと?」

「千姫家は娘だけ貰えれば金は要らないと申し出てきた。なら…もう我々にはそいつの価値が無くなった。こちらとしては金さえ手に入ればよかったからな。」

「最ッ低だぜ…。」

不知火が軽蔑した目で頭領を睨んだ後、やっと天霧が戻ってきた。妙にやりきった感で。

「ジャングルジムの一番上に置いてきました。」

「危なッ!!」

「…まぁ、いいだろう。」

天霧は風間の横で構えると、三人は雄叫びを上げながら頭領に向かって突っ込んだ。

「頭領!お下がりください!」

そう言って頭領の前に大人達が立ち塞がった。その中には天霧の父親の姿もあった。

「げっ!天霧の親父までいんじゃねぇか!厳しいぜ!!」

「…父親の方は私が引き受けます。その間は頼みます。」

「二人でこの数を相手に…か。お前も遠慮がなくなってきたな。」

風間が不敵な笑みを浮かべると、天霧も笑んだ。そして一人別方向へ走った。

「九寿!我々天霧家の仕事を忘れたのか!!我々は代々風間家に仕えているのだぞ!」

「…えぇ、存じております。ですから…守っているではありませんか。」

天霧は父親の鋭い突きを間一髪で避けると、そのまま足の間を潜り、背中に向かって掌打した。

「ぐっ…!」

態勢を崩したのを確認すると、すぐに足の関節に蹴りを入れ、反撃の隙を与えずに、がら空きの腹に拳を捩じ込んだ。

「ぐぁあッ!!」

バタンッと倒れる。天霧はその父親の姿をじっと見た後、独り言のように口を開いた。

「私はきちんと風間家に仕えていますよ。次期頭領の方が優先事項なだけで。」

「天霧ー!厳しいッやばいッ絶対ぇ死ぬッ!」

「天霧!老人風情にどれだけ時間を費やしているんだ!早く来いッ!」

「……それに、完璧な頭領など、守りがいがないではありませんか。少しぐらいぬけてた方が楽しいですよ、父上。」

「………。」

気絶したのか…まさか私が父上に反抗するなど…初めての事だ。

『それにしても、やり過ぎてしまいました。』

天霧は小さく溜め息をつくと、すぐに主の元へと駆けた。




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あきゅろす。
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