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シスコン☆プリンス
9
取敢えず不知火の父親を引き離し、後でここに倒れている大人達を移動させてもらうことにした。
三人はやっと腰を下ろすと、息を吐き出した。

「これはちっと…やりすぎじゃねぇか?」

不知火はまだ顔についた血を裾で拭いながら、隣でばてている風間を見た。風間は大の字になって浅い呼吸を繰り返している。そして薄く瞼を上げて不知火を見た。

「あっちの方が…やりすぎだ。人数差が、どれだけ…あったと思っているんだ…。」

「全く…大人げなかったですね。頭領達のせいでおにぎりが潰れてしまいましたよ。」

「「そっち?」」

天霧が破壊された弁当をかき集めている間に、風間は呼吸を整えてゆっくりと立ち上がりジャングルジムのある方を見た。

「天龍。終わったぞ。」

「………。」

震えている。
無理もない。目の前でいきなり殴りあいが始まったと思ったら、皆血を流しているではないか。そういう世界と関わった事のない天龍にとってこの出来事は辛いだろう。
風間はジャングルジムに手を掛け登ろうとすると、天龍が泣き出した。それに戸惑っていると、天霧と不知火が後ろから近づいてきた。

「風間の顔が怖いってよ。」

「この顔はいつもだ。」

「眉間にシワを寄せて人を殺しそうな真っ赤な目で睨むが、ですか?」

「!」

それを聞いてから風間は近くにあった水溜まりを覗き込んだ。確かに…この顔では天龍が怖がるのも仕方ない。

「命のやり取りをしている時の俺は…こんな顔なのだな。」

「やりあってん時は…笑ってたぜ。」

「それも怖かったのではないですか。」

「………。」

途端、その水溜まりを頭からかぶり咳き込んだ。それを見て天霧と不知火は唖然としていた。最初に我に返ったのは天霧だった。天霧は持っていたハンカチを風間に持っていくが、風間はそれを払ってもう一度天龍に近づいた。

「天龍…来い。」

「………。」

泥水でいつも跳ねてた髪がしっとりと顔に引っ付き、服もボロボロ、表情も必死過ぎてひきつっている。天龍はそれを黙ってみていたら吹き出した。そして、ゆっくり足場を確認しながら降りてくると、ポケットの中からハンカチを取り出して風間の顔を不器用ながら拭いていった。

「にぃにぃ…顔ばっちっち!天龍がきれーきれーしたげる!」

「……………フンッ、勝手にしろ。///」

いつもの俺様に戻ったようだ。天霧と不知火は顔を見合わせて何処か安心したようにお互いの肩を叩くと、二人に駆け寄った。


*****


その晩、風間は風呂から出ると元に戻った跳ねっ毛を満足そうに撫でていた。すると、部屋の襖が勢いよく開き、そこから褌姿の天霧がタオルを持って入ってきた。

「風間!!あれほど髪はよく乾かしなさいと言っているのに…逃げ出すとは何事ですかッ!!」

「お前の褌姿が見ていられなかったん「そんなことはどうでもいいです!大人しくしていてください!!」

「分かった分かった…好きなだけやれ。俺様のキューティクルの為に。」

「あなたの健康のためです。」

天霧はそう言いながらタオルで風間の頭を包むと、頭皮から水分を奪うように丹念に拭き上げた。
それが終わると、タオルを持って部屋を出ていこうとした。すると、何かを思い出したかのように背を向ける風間に話しかけた。

「明日からは千姫様の所へ行くそうです。ですが、風間の想い…きちんと伝わったと思いますよ。」

「……知っている。」

天霧はその返答に満足そうに微笑むと、去り際に「それでは、おやすみなさい。」と言って去った。
風間は月を眺めながら、自分の膝の上で幸せそうに眠る天龍の髪を撫でていた。




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あきゅろす。
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