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シスコン☆プリンス
1
ついに。ついにこの日が来てしまった。
その門は一年前と変わらずまるで新品のように光っている。
今日は薄桜鬼学園の入学式だ。すんごい緊張してきた…!

「大丈夫?天龍ちゃん。」

「う、うん。何とか…。」

「帰れば?」

「お前が帰れよ、薫。」

「こら!薫!」

千鶴が薫に怒るが、本人は悪びれもせずに「千鶴は黙っててよ。」を連発した。
雪村 千鶴は俺の親友で小学校の時からずっと一緒。そんで俺らの間にいるのは千鶴の兄貴、南雲 薫だ。正直邪魔だが千鶴の手前言えない。
三人は仲良く(?)正門を通ると、現三年生が偽物の花のブローチを配っていた。

「……。」

兄貴の姿はない。今日は背中を押して天霧と不知火に引っ張ってもらって、無理矢理学校に行かしたのだが…。さぼったか?
と、下駄箱の近くに見慣れた二人が立っていた。

「匡!九寿!いたんだね。」

「よっ、天龍!さっきぶり。」

「おはようございます、天龍。」

「それじゃあ先に行ってるね、天龍ちゃん。」

「うん!また後でね!」

天龍は千鶴達と別れると、不知火達に近付いた。そして兄貴がいないことに気づいた。

「あのシスコン兄貴は?」

「あれ?!ちぃ兄一緒じゃなかったの?!」

「途中で逃げられまして。」

「あいつはぁ〜!!」

天龍が怒りを露にすると、不知火がまぁまぁと言いながらパーカーのポケットから花のブローチを取り出した。

「お前の事だから、配布してるコレ貰ってねぇだろ!ほら、同じ番号の所に座れよ。」

「ふーん…。」

'七番'と書かれている。良い数字の筈なのに…何故だろう。さっきから嫌な予感しかしないぞ。
と、天霧が時計を見た。…ってか学ラン似合わねぇ。その'闘魂'鉢巻き外せよ。不知火はもう制服じゃなくてほぼ私服だね。だってパーカーの下普通にTシャツだし。

「もう入学式が始まりますね。」

「あぁ、もうそんな時間…ってやべぇじゃん!!入学早々遅刻はヤバイ!」

天龍は二人に別れを告げると全力疾走で体育館へと向かった。
彼らはその背中が見えなくなるまで見送ると大きくため息をついた。

「風間…渡したぞ。」

「よくやった。」

すると近くの壁から風間が出てくる。二人はまた溜め息をつくと風間を見た。さっき天龍に渡した花のブローチは昨日籠から奪った不吉ナンバーだ。

「いくら自分の見える所に置きたいからって…。目の前の席だぞ。」

「当たり前だ。あいつに虫はつけさせん。」

こんのシスコン兄貴…。俺様でシスコンかよ。

「…さて、生徒会長。皆の前で挨拶をすると約束しましたよね。」

「………。」

「し・ま・し・た・よ・ね?」

「あぁ、した。今回は特別だ。」

いつもは三人で逃げているが(二人は巻き添え食らってるだけ)今回は妹がいるので内心張り切っているらしい。と、不知火がそんな風間を見てボソリと呟いた。

「これじゃあ天龍が名字を変えて入ったのも頷けるな。」

「何か言ったか、不知火。」

「(くそっ地獄耳シスコン俺様めっ)なんも―。」

そう言って何とか風間を納得させると、風間を先頭に体育館へと向かう。が、途中で風間が急に止まった。

「「?」」

「不知火…貴様さっき誰の事を'シスコン兄貴'と呼んだ―…?」

「!!!!!」

その瞬間、ブリザードが吹き荒れた。



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あきゅろす。
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