シスコン☆プリンス
序章
「ちぃ兄!!」
…今から一年前、兄貴が弁当を忘れて行ったので学校まで届けに行ったことがある。ってか、これで何回目だよってぐらい届けさせられている。勿論今も。
「もう…ちゃんと正門で待っててって言ったのに!」
いつも通り兄の携帯に電話をして、正門で待つように命令したのだが、まだ生徒会室にいるのか、それとも先生を撒けていないのか。
「フゥ…。仕方ない。探しに行くか!」
そう言って手に持った弁当を揺らしながら'薄桜鬼学園'と書かれた正門を通った。
「中庭はこっちだよね。」
金砂の髪を揺らしながら少女、大空 天龍は木々の間を歩いていく。そしてふと、人の気配がして立ち止まった。噴水の近くに誰かいる。天龍は近くの木の影に立つと、その気配のする方へ目を向けた。
『あっ…。』
そこには、黒いスーツを着た男性が立っていた。男性はスーツの前の釦を全て外し、Yシャツの第一釦を外して、ネクタイを緩めていた。その整った顔立ちもさることながら、その姿に一目で惚れてしまった。
『ドストライクッッ!!…じゃない!』
何とか理性を取り戻した天龍は、もう一度その男を見た。あの黒スーツに煙草。もしかしたら…。
『古典の土方先生かな?』
前に兄からこいつにだけは近寄るなと念を押されていたので、いくら物覚えの悪い天龍でも覚えていた。
『かっこいい…///』
思わず見とれていると、不意に後ろから腰まであるちょろ毛を引っ張られた。突然の出来事に、天龍は短く悲鳴を上げた。
「あ゛っ「黙ってろ。」
今朝も聞いた低い声。白ランの似合う生徒会長。
「ちぃ兄!どうして正門にいないの?!探したじゃんか!!」
「彼奴に追われていた。」
そう言って土方を指す。天龍はもう一度その指の先の人を見つめる。と、弁当が奪われた。
「あっ!!」
「アレも入れただろうな…。」
「入れたよ。だからちゃんと勉強してよ!俺来年ここに入るんだからね!」
天龍が言うと、風間はフッと笑った。
「やっと…か。」
「…ってか、何回留年すれば気が済むの!?九寿と匡に迷惑かけんなよ!!」
「不知火は関係ない。」
あっ…一応巻き込んでるっていう自覚はあるんだ。と、風間が今日は一人で来ていることに気づいた。いつも一緒にいるのに。
「二人は?」
「購買だ。」
「栄養偏るなぁ。俺が作ってあげようかなぁ。」
思い付きで口にすると、風間が物凄い早さで天龍の腕を掴んだ。天龍は痛みに顔を歪めた。
「いったぁ!!」
「あんな奴等に作らなくて良い。お前は俺だけに飯を作っていれば良いんだ。」
こんの…シスコン兄貴め!
「分かったから離してくれる!?」
天龍が言うと、素直に離した。まだ掴まれたところが痛い。無駄に力がありすぎるんだよ!
*****
「それじゃあ、このあとは買い物行ってくるから!!二人に宜しく言っといてね!」
「言わん。……今日の晩飯は何だ。」
くっそ〜。重症だぞ…。お前は娘持ちの親父かよ!!
「カレーライス!勉強頑張ってね!!」
「授業に出たらな。」
そう言って去っていく兄の背中を見ながら『アイツ…やる気無さすぎだろ。』とか思ってたりする。
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