シスコン☆プリンス
9
それから数分後、風間が生徒会室から出てきた。日頃やっていないからだろうか、手に判子の跡や墨の跡が目立つ。
「ちぃ兄!」
「大空さん、お待たせしてすみません。」
風間はそう言って二人を従え先に階段を降りる。天龍は少し胸が痛むのを感じながら、彼らの後を追った。
壁の影で鉛筆を折る人々に気付かずに…
四人は風間を先頭に学校巡りをしていた。すると、不意に不知火が校長の像に近づいた。
「おっ!見ろよ、風間。これ俺と二人で落書きした校長の像だぜ!」
「そっ…そんなことしてたの!?」
「全く…くだらない。」
「…私はそんな事をしていたのですか。」
そう言いながらじっと像を見る。誰かが消したようだが、所々マジックペンの跡が残っている。
思い出巡りも終盤に入り、あと少しで正門が閉まると放送が流れた。
「それでは帰りますよ。」
「だな。あ゛ー腹減った…。」
「うん!早く九寿のご飯食べたい!」
「…。」
「?どうしたの、ちぃ兄。」
風間が黙っているのに気付き声をかけると、風間は申し訳なさそうに俯いた。
「…こんなにしていただいているのに、何も思い出せずすみません。」
「あっ謝んなッ!!キモいわッうわぁぁああぁあ!!鳥肌たつわ〜!」
「ゆっくり思い出していけばいいんですよ。」
「そうだよ!ちぃ兄。きっと思い出せるよ!」
不知火を抜いた二人で励ますと、風間が笑った。今まで一緒にいて初めてこんな笑顔見たよ。
「…ありがとう。」
「はぁ…はぁ…。よし、帰ろーぜぃ!」
「うん!」
不知火が叫び疲れたように歩き出す。天龍もすぐに3人の跡を追おうとすると、上から何かが落ちてきた。どうやら鍵のようだ。と、上から女子達の声がした。
「すみませーん!その鍵拾ってくださ〜い!」
「はーい!」
逆光で顔が見えないが、何処かで聞いたことのある声だった。が、対して気にもせず天龍は鍵を拾う為に屈んだ。その瞬間、上から笑い声が響いた。
「うちらの忠告を聞かないのが悪いんだよー!!」
「えっ―きゃあああ!」
上を見ると鉢が落ちてくる。避けようと足に力を入れるが、昔を思い出して腰が抜けてしまった。と、前を歩く三人が気づいた。そして何故か壁から土方達が飛び出してきた。
「天龍!危ない!」
「天龍っ!」
「大空!避けろっ」
「危ねぇ!!」
「避けろぉっ!!」
天龍は反応できずに屈んだままでいると、聞き覚えのある声が重低音を響かせて叫んだ。
「天龍ッ!!!」
「!!!」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。天龍はバリンッという音はしたが、来る筈の痛みがないので恐る恐る瞼を上げた。そこにいたのは天龍に覆い被さりながら天龍を優しく抱く風間だった。どうやら風間は天龍を庇って鉢をまともに受けてしまったようだ。頭からは血が止まることなく流れている。
「ちぃ兄!!」
「…大丈夫か…?天龍…。」
風間は薄れいく意識の中でキツく天龍を抱き締める。と、周りの人々が風間の名を叫びながら駆け寄ってきた。
「ちぃ兄…血が!」
「これぐらい…痛くもかゆくも…な、い。」
「喋らないでください!すぐに保健室へ―っ!」
「おい!天霧、んな事してたらあいつら逃げんぞ!」
不知火が叫ぶと、土方が風間を背負い上げた。風間はもう抵抗する力も無いようで、ぐったりしている。
「俺らが連れていく。」
「!!…頼みます。行きますよ、不知火!」
「おう!」
そう言い残すと、天霧は不知火と共に学校の中に駆け戻った。天龍は原田と永倉に支えられて保健室へと向かった。
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