シスコン☆プリンス
7
「全っ然大丈夫じゃねぇぇえええ!!」
「不知火、風間が怯えています。もう少し声のトーンを落として…。」
「無理だッ!!耐えらんねぇぇえぇえ!!」
「おい!黙って授業受けやがれ!」
古典教師の土方が不知火に向かってチョークを三本投げたが、二本避けられた。そんな不知火の横で一人黙々と教科書を睨む男子生徒がいた。
「土方先生…ここが分からないのですが。」
「あ゛ッ?…あぁ。」
今の礼儀正しい風間に慣れない中、土方は恐る恐る風間に近付いた。
「ここはこう訳してだな…。」
「あぁ!なるほど!よく分かりました、ありがとうございます。土方先生!」
「!!!??」
土方が青ざめ、周りの生徒もドン引き。と、それに気付いた風間は慌てて隣の席の天霧の肩を叩いた。
「…私、何かおかしいことしましたか?!」
「……まぁ、普段の性格では有り得ませんが、人間としては間違っていません。」
そう言い終えると同時に予鈴が鳴った。土方は号令が終わるとすぐに廊下に出た。あまり長く風間を見ていると吹き出しそうになるからだ。
「おっ!土方さん、風間どうだった!?」
「左之か。」
ちょうど隣で授業をしていたらしい英語教師の原田がにやにやしながら土方に近づいた。二人は職員室に戻るまでの間ずっと風間の話をしていた。
土方は自分の席につくと大きな溜め息をついて原田を見た。原田は楽しそうに笑っている。
「それで!楽しかったのか?!」
「楽しいわけねぇだろうがよ。」
土方は授業中の事をかいつまんで原田に話した。原田は終始腹を抱えて必死に笑いを噛み殺していた。
「授業にえらく熱心ねぇ…ククッイイ事じゃないですか。」
「そのはずなんだが…慣れなくてよ。」
そして思い出したようにうぇっと口を押さえた。原田は楽しそうに土方を見ていると、はたと動きを止めた。
「そう言えば…近藤さ…校長からmessageがあるぞ。」
「いちいち英語にすんなッ!!なんだ?英語ができない俺への当てつけかッ!?」
「いや〜面白そうだったんで♪」
原田がそう言いながらさっきより真面目な顔で土方に向き直った。
「生徒に不穏な動き有り。風間から目を離すなってよ。」
「……分かった。」
返事をすると不意に後ろの方で椅子を倒す音がした。犯人は分かっている。体育教師の永倉 新八である。永倉はいつも通り近くのコンビニ'池田屋'で買ったらしい競馬の新聞を握りしめて絶叫していた。
「うぉぉおおぉお!!マジかぁ〜!!」
「何だぁ、またすったのかよ新八。」
原田がいつもの事ながらに話しかけると、永倉が新聞を机に叩きつけた。
「まさか最後の最後で抜かれるとかおかしいだろー!俺の今月の家賃がぁぁああ!!」
「うっせぇ!!」
ガツゥンッと永倉の背に蹴りを入れるが、永倉は机に手をついて這い上がってきた。そして原田に両手を擦り合わせてにこっと笑った。
「左・之☆」
「絶対ぇ貸さねぇ。」
さらりと即答すると永倉はまた叫び出した。
「左之ぉおおぉぉお!!ホント今月ピンチなんだよ!後2週間もあるのに2000円しか残ってねぇんだよ!左之ぉ!一生のお願いだぁ!」
「お前の一生は何回あるんだぁああっ!!」
ガツッガッドッゴッ
原田のボディーブローが溝に入ったようで、永倉は泡を吹きながら今度こそ起き上がることはなかった。
「原田…お疲れ。」
「土方さんもな。」
「おやおや…永倉君大丈夫ですか?」
「だっ…大丈夫じゃ…ねぇ。」
いつの間に入ってきていたのか、山南が健康診断の書類を両手に抱えて職員室に入ってきた。土方は近藤からの伝言を山南にも伝えると、山南はにこりと笑った。
「そうですか。君達、早速目を離しているではありませんか。いいのですか?」
「「「………。」」」
三人はすぐに授業の支度を持って風間のいる教室に向かった。
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