(4)
「咲坂晶。出身は東京。父親はシャルトントーキョーでシェフをやってます。ヨロシクオネガイシマス」
にこりともせず、淡々と喋るアキラを見て、カッコいいけど随分クールな子だなと千恵子は思った。
「はい、じゃあ次は…藤堂和泉」
「はい」
藤堂と呼ばれたのは、さっきヨネに声をかけた少年だった。
整った顔立ちの、利発そうな少年だ。
「藤堂和泉です。出身は横浜で、父親は洋菓子店のオーナーやってます。カズの父親がチーフやってる店なんですけど。とりあえず三年間、よろしくお願いします!」
「おー、二人は知り合いか。じゃ、次。松山道玄」
「はい!」
一番後ろの席の、背の高い少年が立ち上がる。
千恵子は後ろを振り返って見てみたが、とても同い年には思えなかった。
「松山道玄、埼玉出身です。実家が寺院なので、中学時代は和尚って呼ばれてました。よろしくお願いいたします」
「和尚か。それは面白いあだ名だな。えーと次は、水越日菜子」
「はい」
千恵子の隣で、カタリと椅子が動いた。
「水越日菜子です。ひなって呼ばれてます。京都出身で実家は月下庵という和菓子屋です。まだ慣れないことも多くて、迷惑をかけてしまうかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします!」
日菜子という名前はこの可愛らしい少女にはぴったりな気がして、千恵子は何だか一人納得していた。
それにしても。
どの人も既に料理に関してはかなり慣れているようだ。
パティシエやコックや和菓子職人の子供。
これはもう、本格的に場違いこの上ない。
「最後は…森下千恵子」
「は、はい…」
すっかり縮こまっていた千恵子は、名前を呼ばれてビクリと肩を震わせた。
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