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(3)
「おはよう!みんな揃ってるか!?」


戸を勢い良く開けて中に入ってきたのは、30代半ばくらいの女性教師だった。
長い髪を後ろで一つに束ね、紺のパンツスーツを身に纏ったその姿はなかなかスタイリッシュでカッコいい。
その女性教師は大股で歩き、教壇につくと、とびきりの笑顔で言った。


「えー、これから三年間、お前たちの担任を努めることになった米沢碧だ。ヨネちゃんでいいぞ!」

「先生なのにヨネちゃんですか?」


さっき何やら二人で話をしていた男子のうちの一人がそう言うと、ヨネはカラカラと笑った。


「私はあまり先生って柄じゃないからな。友達感覚でいいぞ」


「何だか面白い先生だね」

千恵子の隣の少女が呟き、千恵子もそれに頷いた。

やはり私立はちょっと違う、なんて思ったりする。


「よし、じゃあ早速だが出席を取る。名前を呼ばれたら立ち上がって自己紹介をすること。いいな!?ではまず、国立一馬」

「はい」


立ち上がったのは二人組のうちの一人。
まだ幼さの残る、やんちゃそうな少年だ。


「国立一馬。あだ名はカズ。横浜市出身。夢は世界に通用するパティシエになること。父親は横浜のシャトー・ガルニエっていう洋菓子店のチーフパティシエをやってんだ。ま、三年間、よろしく」


「はい、よろしく。じゃあ次。咲坂晶」


返事もせずに立ち上がったのは、例のジャージの少年。
その姿に、さすがのヨネも面食らったようだ。


「咲坂、お前制服はどうした?」

「仕立屋の手違いで届くまであと一週間かかるそうです。学長には許可を取ってありますけど」


「何だ、そうか。それは気の毒だったな。すまんすまん、自己紹介続けてくれ」

ヨネの言葉に頷き、少年は続けた。



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