帝王院高等学校
あっちもこっちも鬼ゴッコ?
視界の端に、明らかな違和感を帯びた団体が見える。
恐らく新入生だろうと無関心な目を瞬かせ、木の上で寝返りを打った。



「…もう、始業式終わったんだ」


呟きは桃色の花弁に吸い込まれ、



「返事、来ないな…」


握り締めたままの携帯を抱き締めて、眠る。





「何処に居るの、総長」


まるで鬼ゴッコの様だと、唇を噛み締めながら。














嘲笑う幻聴を聞きました。
目の前が混沌で染まり行くのをただただ、無防備に。







『どうしたの、らしくないじゃん。』
『煩ぇ、…失せろ』
『まだ見つかんないんだ?』
『失せろっつってんだろうが!ブッ殺すぞ!』
『じゃあ聞くけどっ!佑壱、私と総長のどっちが大切なのよ!』





誰も居ない食卓の寂しさを思い出しました。
一人が如何に孤独であるのか、改めて思い知りました。


貴方が居なければ前も見えない、貴方が居なければ生きていけない、なんて嘘は吐けません。

だって僕は今もこうしてちゃんと生きていて、柔らかな女の肉に触れていなければ誰かの肉を殴り付けています。



何て不甲斐ない生き物でしょう。
だから愛想を尽かしたのでしょうか。
だから最後の挨拶も許されなかったのでしょうか。


突然の別れには酷く現実味がありませんでした。
今も、これは悪夢なのだと本気で信じています。



僕の背中には貴方の足となり飛び立つ
があって。
僕の背中には貴方の足となり羽ばたく
があって。





紅蓮の炎が渦を巻き、今や今やと息吹いています。






『下らない質問すんな、…阿呆が』
『ご、ごめん。だってバイクには適わないし、』
『テメーもバイクも自分の命も要らねぇ』



鬼ゴッコなら、良かったのに。



『俺が大切だと思うモンなんざ、…Always only one.(いつもたった一つ限り)』



(探して)
(見付けて)
(ささやかな説教をして)
(全く悪怯れない貴方に)
(困った様に笑い掛けて、)
(お菓子をあげようか。)



(まるでハロウィンの子供の様な)



(大好きな貴方へ)






『ご報告ですが…、
  鷹翼中学に、遠野俊、と言う生徒は在席していません』
『…は?馬鹿抜かすんじゃねーよ、一昨年調べさせた時は、』
『確かに在席していた筈です、調査記録も残っております!…然し、3月1日時点で、鷹翼中学に調査対象のデータは何一つ残されておりませんでした』
『どう言う事だ!テメー、謀るのも大概に、』
『ですからっ、これ以上は不可能なんです!貴方が水面下で探すには、計り知れない何かが動いている!』
『俺が、…水面下』
『嵯峨崎の名を持たずして捜索する事はお勧め出来ません』





『じゃあ、アタシがお手伝いしてあげようか、ファースト』





耳鳴りがする。





『テメー、盗み聞きかよ』
『嵯峨崎で見付からないものは日本に存在しないでしょ。本当に見付けたいなら、頷けば良いのよ。パパだって鬼じゃないんだから、家出息子のお願いでも聞いてあげ、』
『何が条件だ、クソ親父』
『やだわ、頭が良い子って大好きよ』



悪魔が目の前で嗤う。
この世で最も嫌悪している紅い紅い悪魔が、ほら。









『お前の自由と引き替えだ、佑壱』

















その一角は異様な雰囲気だった。


「開けろ安部河」
「居るのは判ってんだよ!出すモン出してくれりゃ、こっちも手荒な真似せずに済むんだじぇ(´Д`*)」

まるで悪徳金融業者の様な二人組が見える。
遠巻きにする生徒達は怯えを滲ませながら、然しその二人組にそわそわと落ち着きがない。


「出すモンっつっても、承認印だけどな」
「オラオラ、出ておいで安部河桜ぁ!(>Д<) 名前は知ってっけど顔が判んねぇ安部河桜ぁ!( ̄ロ ̄)」

ゴシックロリータなふわふわスカートでドアを蹴り付ける健吾は、狼な生徒から上がった茶色い声に気付かない。
パイロット姿がどうしようもなく似合う男前裕也が顎に手を当て、

「地味な奴だぜ、確か」
「タイヨウ君とどっちが上?」
「どっこいどっこいだな」
「そりゃ、ウスィな(´Д`)=3」


中々に失礼なワンコ共だ。


「つかさぁ、ユーヤさっきからマジ不細工(T_T)」
「お前には負けるぜ」
「やんのかゴルァ!(@□@メ)」
「上等だオラァ!」

掴み合う二人は直ぐ様どちらからともなく吹き出し、桜の部屋の前で大爆笑だ。



「あーあー、嬉しくて堪んないっつー顔してんよユーヤ(∀) まだ俺だけの秘密にしたかったのに!(−3−)」
「どうせ総長にショボい悪戯するつもりだったんだろーが」
「うぜぇ、ショボい言うなー┌|∵|┘」
「オレらが刃向かった所で、所詮『ペットの甘咬み』レベルだぜ。あの人と本気でヤり合える人間なんざ居やしねー」
「あーあー、マジで外部生に手ぇ出したら探し人見付かった。この一ヶ月半、何だったんだ俺達…(*´Д`)=3」
「つか、先月まで中坊だったなんざ有り得ねぇぜ。…ぷ、は、ははははは!有り得ねー事を有り得させんのがあの人かよ!」
「ぶひゃひゃひゃ、老け過ぎっしょマジで!(∀) だ、だってあの人身分証無しでクラブ入れたんだぞ…!(´Д`*)」
「言うな、ぷ、つか何だよあの眼鏡!何で見る度に変わってんだよ!ギャハハハ」
「ひぃ、ひぃ、やめろー、思い出したら、ぐふっ、腹が捩れるぅ!(∀)」

桜の部屋のドアを叩きながら腹を抱えるパイロット、廊下を転げ回るゴスロリ、奇妙な光景だが、然しミーハーな観客からは恍惚の息しか漏れないらしい。

「つかあんな美形に変装させてた意味が判んねー」
「カイ君っ(´Д`*)」
「スゲェぜやっぱ、底知れねーぜ総長!」
「うひゃ、うひゃ、然もかなりB専みてぇだし?(∀) 道理で女っ気無かった筈だ、タイヨウ君レベルの女なんか俺らに近寄らねーしっ!(´∀`)」
「あの…」

裕也が声もなくドアを連打した時、控え目に寄って来た生徒から声を掛けられた。
それまでの爆笑をピタリと消し、ゆらりと振り返る二人は狂犬だ。その冷酷な目で『近寄るな』と告げている。


「…何の用だ、テメー」
「くっだらない用だったら殺しちゃうよォ…?(●´∀`●)」

びくっ、と目に見えて怯んだ生徒は然し、キョロキョロと辺りを見回して小さく息を吐き、声を潜めた。



「安部河君だったら、…さっき光王子閣下の親衛隊に連れていかれました」
「「は?」」
「か、彼が、その、天皇猊下の部屋から出て来たのを見ていたみたいで…」

嫌な想像に二人の顔が痙き攣る。
数多い親衛隊の中で最も質が悪い副会長の親衛隊に連れていかれた、などと。



「テンノウゲイカ、っつったら…(TεT;|||」
「左席会長、だぜ」

今から入部するつもりの左席委員会。会長は曲がりなりにもカルマを率いる総長だ。
言えば間違いなく帝王院に血の雨が降るだろう。



「今ならユウさんのヤサグレっぷりを表現出来るかと(=Д=)」
「暴力反対、総長の部屋にポスター貼ってたぜ」
「じゃ、俺ら今から暫く意識不明になろうかユーヤ(´Д`*)」
「ついでに記憶喪失だな」
「…安部河も親衛隊もどうでも良いっちゃ、良いんだけどな(~Д~)」
「…話を聞いてて無視して戻ったら、オレらの命はねぇぜ」
「………だよねぇorz」


キリッと立ち上がった二人はハイタッチの要領で手を握り合い、獰猛な笑みを浮かべた。







「「Open our eyes.(遊びの時間だ)」」
















『テメーもバイクも自分の命も要らねぇ』








隠れんぼしましょ。
見付けたら皆がハッピーエンド。

見つからなかったその時は、闇から鬼が迎えに来る。





カオスシーザー、闇の皇帝が。









『大切なのは、俺の意志だけだ。』

←いやん(*)(#)ばかん→
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あきゅろす。
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