帝王院高等学校
灰と黒に渦巻くテンペスト
『空は青、雲は白のグラデーション』

何一つは見えない。
視界はいつも、灰色だ。

『…太陽は赤』
『絵本にはそう書いてあったけど、本当は白だよ。ちょいと黄色っぽくて、眩しいんだ』
『まぶしい、とは、何ですか?』

傍らには温かい体温。
恐らく窓辺から、そよそよと吹き込む風と共に運ばれてくる声音はいつも楽しげで、いつも悪戯めいている。

『目が開けていられないくらい、光が沢山あるってこと』

何重にも施された包帯の内側。
僅かに透ける陽光、内緒で瞼を開いてみたが、包帯越しに見えるのは黒く灰色の狭い世界だけ。

『秀皇に頼んだんだけど…いつになるんだろねー。やっぱ特注のステンドグラスって、UV対策が難しいのかなー』
『?』
『良し。カーテン引いたから、おいで、神威』

許しを受ける時は二人きりの時だけだった。
その時には風もなく光もなく、急く様に外した包帯を膝の上に置いて、頬を舐められる気配と共に瞼を開く。


『…痛くないかい?』

昼だと言うのに薄暗い部屋。白いブレザーにはきらびやかな金糸の刺繍。濃茶のさらさらした髪が掛かる目元は同じく、僅かばかり赤を散らした様な黒だった。

『はい』
『いつ見ても、お前さんの瞳は綺麗だねー』
『綺麗?』
『うん。白目は本当に綺麗な白で血管も浮いてないのに、水晶体は血が透けて真っ赤だ。僕の生きる宝石』

この部屋にはボードゲームが幾つもある。
ルールは子守唄代わりに何度も聞いた。すぐに覚えてしまうなと、低い声で笑うもう一人の父は、夜だからか、髪も瞳も真っ黒だ。
あれこそ、美しいと言うのではないかと、思っている。密やかに。

『この間はリバーシだったね。今日は、チェスでもやってみようか』
『私は、これが良いです』
『え、将棋?渋いねー。でも、まだやり方を知らないだろう?』
『父…陛下に、教えて頂きました』
『あのねー、神威』

いつも楽しげで、悪戯めいた声音が笑う。

『父親を陛下なんて言わないの。ああ、小林先輩からまた何か言われたの?』
『立派な大人になる為には、子供の内から覚えておかねばなりません。帝王院たる者、甘えてはならない』
『…ったく、あの人は底抜けに大人げないよねー。…俺に対する当て付けかなー?』
『父上?』
『ともかく、お前さんは気にしなくていいんだ。大体、その古めかしい物言いは何かなー。子供は子供らしく、パパって言ってやんなさい。ほら、僕にもパパって言ってくれるかい?』
『…パパ?』

感極まった様に「かわいい!」と叫び、ぎゅむりと抱き締められる。
前髪が瞼に掛かり、きらきらと、少しの光を反射させた。



どうして自分の髪は白いのか。
どうして自分の瞳は赤いのか。
どうして自分は、








『醜いアヒルの子は白鳥だったんだ。素敵だね』



灰色のアヒルにはなれない、黒い羊、なのか。






タロットに描かれた山羊の持つ意味が『悪魔』であると。
言ったのは、誰だったか。
















「っ!ファ、ファーザー…!今ファーザーがチラッと映…っ!頼む北緯…、俺の代わりにちゃんと…ちゃんと撮っておけよ…!」
「兄貴うっさい」
「マジうっさい」
「オッサンは保護者席に座っとけようっさい」

モニタに齧り付きながらも白けた眼差しの三匹を拳で沈め、いつもの作業着にブレザーを纏っただけの工業科生徒に紛れて眼鏡を押し上げた社会人は、ふんと鼻で笑う。

「保護者席だと?画面が遠いじゃねぇか、大体俺ぁファーザーに挨拶しときたかったっつーのに…獅楼の野郎…」

帝王院と西園寺両校の役員と、双方の進学科3年生のみが参列している大講堂は、残りは来賓や保護者で犇めいているらしい。

「ぶつぶつ言うなや兄貴ぃ。大講堂にゃ兄貴のでぇ嫌ぇな白百合が居るよん?」
「ふん。…あ、総長と隼人が映った。健吾と裕也はどうした?」
「リーダーの事だしぃ、サボってんじゃなぁい?」
「夜中まで騒いでたしぃ、揃って寝坊してそぉ☆」

Aクラスである加賀城獅楼は第三講堂の参列だった為に、一人で参列したくなかった案外チキンな雇われカルマ店長は、観客の比較的少ない第三講堂へ足を運んだのだ。
隣接している第二講堂には二年生が多く、カルマメンバーはほぼ居ない。榊にはハードルが高すぎた。

「何だ、カメラ部?報道ステーション?何か知らんが、北緯はあっちに潜り込んでんだろ?」
「まーね。大講堂はSクラスからCクラスまでの一般学部と国際科の三年生だけだから、俺らEクラスは余ってる席に突っ込まれてっけど〜」
「うち人数多過ぎんだもんなー、俺もあっちが良かった〜」
「…総長と副長のオンステージ…あーん、生で見たかった〜」

大講堂より若干劣るが広めな造りの第二講堂は、人数の多い体育科と国際科、西園寺学園の2年生以上が参列している様で、何が何だか生徒達にも把握しきれない状況である。
とりあえず参列しているだけで良い、とばかりに点呼を取らない帝王院側の教師らは、問題さえ起こさなければ黙認するつもりなのだろう。何にせよ、西園寺をもてなす事が先決だ。

「クソ、カス貴公子と光華会の跡取りばっか映しやがって…。これ何処のテレビ局だ」
「テレビじゃないってば兄貴、報道部。つーかさぁ、総長…猊下なら、さっきあっちに居たぞ?」
「確かに今さっきチラッと猊下がモニタに映った気がしなくもないけど、開会前にカナメさんが猊下と話してたなぁ」
「でもあれ、明らかに偽者じゃね?惜しい事に、雰囲気は似てんだけどな…」

何の話だ馬鹿共め・と、作業着の上にブレザーを羽織っている雑な三匹を横目に、眼鏡を光らせた店長は周囲の生徒からチラチラ見つめられても怯まず、モニタに齧り付く。
榊が最も苦手とする貴公子、素顔は一度しか見た事かなかった陰険眼鏡が黄色い悲鳴に包まれており、店長は舌打ちを噛み殺した。

「おい、あの糞餓鬼…貴公子野郎は、性格腐ってる癖に人気があるのか?」
「え〜白百合ぃ?お気付きの通り、バリ人気っスぅ」
「俺ら工業科からはぁ、絶賛恨まれてますけどぉ」
「出来るもんならぁ、いっぺん犯したいと思ってますぅ」
「男におっ勃てる気は知らねぇが、お前らは確実に返り討ちだろう、馬鹿トリオ。ボラギノール買っといてやる」

尻の穴をきゅっと引き締めて大人しくなった三匹から目を離し、日向に続いて出てきた赤毛に眉を寄せる。嵯峨崎佑壱と言うからには間違いなく雇用主だが、あの黒い仮面は何なのか。

「どうなってんだこの学校は、仮装パーティーか」
「この程度で驚いてちゃ〜あ」
「帝王院じゃ生きていけないよ〜?」
「こんなん前菜っつーか食前酒みたいなもん〜」
「今のチューオー委員会って何だ?生徒会みてぇなもんなんか?」
「「「セートカイって何?」」」

冗談を言っている雰囲気ではなかった。
曇りなき阿呆の瞳で見つめてくる三人、名前はあるけど呼ばれる機会がほぼないカルマ随一の阿呆トリオは、一人がスマホを取り出し検索し、三人で何やら話し込んだ。

「お松、お梅。生徒会っつーのは、代表として学校行事の運営を務める生徒の事だとよ。給料出ないのに頑張ってんな」
「タケリン、それってどっちかっつーと自治会じゃね?」
「ん〜?マツコ、タケコ、それじゃあ中央委員会って何なん?」
「やー、さっぱり判んね」
「自治会より偉いのは判んだけど」
「今まで疑問に思った事もないかもー」
「「「後でカナメさんに聞くしかない」」」

卒業を控えておいて、今更年下に尋ねなければ判らないとはどう言う事なのか。初等科からの生徒が最も多いのは判っているが、寮生活が長いとは言え、余りにも世間知らず過ぎる。
頭の回転が速い佑壱ですら、時折ピントの外れた事を宣う光景を何度も目にしてきた榊は肩を竦め、モニタをカメラに納めた。

「あーあ。折角清水の舞台から飛び降りて買った一眼レフだっつーのに、せめて顔くらい見せろよ…」
「兄貴兄貴、俺らを撮ってくれても良いよ☆」
「フィルムが尽きるまで付き合ってあげても良いよ☆」
「アタシの様にイケメン過ぎる被写体をそのキャメラで捉えきれるかな☆」
「静かにしろ馬鹿共、恥ずかしい」

冷めた叱責で三匹を絶望させ、バシバシ画面を撮りまくる店長は、フラッシュが迷惑になっていても構わないらしい。教員が数名怪訝げに見つめてくるが、問題児の多い工業科に紛れた社会人には気付いていないらしかった。
獅楼から奪ったブレザーを羽織っているだけなのに、だ。

「武蔵野と嵯峨崎に頼まれてる分だけでも何とか撮っておきたいんだが…。この後どうにか集められねぇのか?」
「兄貴、今の嵯峨崎ってユウさんじゃない嵯峨崎の気配?」
「つーか、烈火の君と知り合いなんて知らんかったし」
「何で隠してたん?」

恨みがましい目で見つめてくる三人を面倒臭いとばかりに一瞥し、別に隠していた訳ではないと零す。

「はっ、オーナーは知ってる事だ。っつっても、連絡なんざマジで年に一回くれぇしか取ってない。つるんでた訳でもねぇ」
「「「うっそー」」」
「阿呆、お前らに嘘なんか吐くか。嵯峨崎…零人の方な。奴が大学に上がる前だから、4年前か。あの頃にゃ俺もアイツも、餓鬼臭い事からは足を洗ってた」

零人率いるABSOLUTELYは、カルマ発足と同時に二代勢力の片方として噂される様になったが、事情を知る者からしてみれば兄弟の競争の様なものだった。

「あの頃のカルマと言やぁ、悪名は高かったがなぁ」

零人の引退前に佑壱がトップから退き、シーザーの名が広がると共にABSOLUTELYの名が霞んでいったと言えるだろう。瞬く間に悪名は塗り替えられた。
警察から感謝状を贈られる不良など、聞いた事もない。

「ド派手だったらしいな、初期は。お前ら、片っ端から喧嘩売って回ってたんだろ?」
「まーね☆」
「ユウさんってば眼が合っただけでいきなり殴ってたもん☆」
「怖過ぎる〜。カルマに入れて良かったン☆」
「で、ファーザーはファーザーで、喧嘩する気なんざ欠片もねぇのに眼が合っただけで吹っ掛けられてたってか。くっく…難儀な…」
「「「何笑ってンの?」」」
「何でもねぇ。騒ぐな馬鹿三匹、恥ずかしい」

愛弟子だと自慢気に宣う悪友を思い出したドS店長は、こほんとわざとらしく咳払いする。何だかんだ、手短に終わったらしい佑壱が立ち去って、モニタに黒縁眼鏡が映る。

ざわざわと講堂内がざわめき、離れた位置から歓声が上がった。

「天の君ー!素敵なのさー!」
「天の君ー!応援しているのさー!」
「ふ、二人共、騒ぐと天の君の声か聞こえないよっ」

何だありゃ、と首を傾げる榊の耳に、「キモい」だの「うざい」だの悪辣な言葉が飛び込んでくる。
どうやら一部に熱烈なファンが居る様だが、大まかに言えば嫌われている生徒らしい。

「おい、あの眼鏡も生徒会の奴なんか?ざっと見るだに、生徒会はABSOLUTELY関係者ばっかだったが、あんな暗そうな眼鏡…メンバーに居たか?」
「あの眼鏡って、白百合?」
「違ぇ、」
『左席委員会生徒会長、一年Sクラス遠野俊です』

ブッ。
イケメンなまま吹き出した店長が反射的にモニタへ向き直り、唇を震わせる。

「は、」
『生徒、教職員、皆さんにとって意義のある交流会の成功に尽力する事を誓います。本日は保護者、来賓の皆様、足をお運び下さいまして誠に有難うございました』
「「はぁあああああ?!」」

榊が立ち上がるのと、講堂内の一番前の席に座っていたらしい生徒が立ち上がるのはほぼ同時だった。
ざわりざわりとざわめいた講堂、椅子の上に立っているのか、隣で要らしき生徒が必死で宥めている光景が見える。

「ざけんな!あれのどこが俊兄ちゃんだボケハゲっ、馬鹿野郎っっっ!遠野俊は寧ろ俺だー!!!」
「ま、待って下さい、お怒りは判りますが目立ってますから…!」
「うっせー!遠野を舐めやがってボケカスコラァ!俺の俊兄ちゃんはあんなもんじゃっ、」

ギャーギャー騒いでいた頭の小さい生徒が振り返り、榊と眼が合った様な気がした。ズレた黒縁眼鏡が怪しく曇り、何度も眼鏡を押し上げ、何となく天井を見上げた榊は眼鏡を外し、チャラ三匹に見つめられたままハンカチを取り出す。

きゅっ、きゅっ。
節張った働く男の荒れた手が眼鏡を磨いて、再び眼鏡を掛けた榊は振り返った要が驚いた様に目を丸めたのを目撃したが、そんな事より今は、その要の隣、微動だにしない茶髪の黒縁眼鏡から目が離せない。

「さ、榊の兄貴?」
「どしたん?」
「つーか、カナメさんの横、誰?」

三匹がキョロキョロと、最前列と榊を見比べている。ざわざわとざわめいていた講堂内の人間らは、今やモニタではなく榊達に興味津々だ。

「ま、まー兄ちゃん?」
「やっぱりお前、舜?!」
「えっえっ、まー兄ちゃん?!何してんの?!大学生じゃなかったっけ?!もしかして留年?!」
「んな訳あるか!あ、いや、残念ながら大学は瀬戸際っちゃ、瀬戸際っちゅーか…もにょもにょ」
「え?え?兄貴、あれ誰?」
「え?え?シュン?シュンっつった?どう言う事?」
「シュンって、総長…猊下もシュンだけど?え?え?」

阿呆が四人に増えた、と頭を抱えた榊は羽織っていたブレザーが落ちてしまった事に気付かず、周囲から悲鳴が涌いて耳を押さえた。

「カルマだ!」
「え、本物…?!」
「誰?!素敵ぃ!」

チャラ三匹が「俺らもカルマじゃね?」と顔を見合わせ、教師らが静かにと叫んでいたが、意味はない。
俊の写真を撮り損ねただでさえ機嫌が宜しくなかった所に、これか。目に見えて苛々してきた榊はすぅっと息を吸い込み、


「黙れ小童共!!!」

カフェカルマに詰め掛けてきたカルマファンの少年らを怒鳴り散らかす時の叫びで、世界を沈黙させた。叱られ慣れている三匹が抱き合い、ガクブルガタブルと呟きながら青冷め、要と言えば混乱の極みなのか、椅子から飛び降りた遠野家随一のアホを抱き締めている。

「何がカルマだ餓鬼ぁ!そのカルマのシーザーに向かってキモいだのウザいだのほざいてたのは何処のドイツだぁ?!上等じゃねぇか!出てこい!シルバートランスファーの名の元に、この俺がぶっ潰してやらぁ!!!」

しーん。
静まり返った講堂内の、特に帝王院生徒らは動きを止めた。何だかんだ各自頭をフル回転させているのか、徐々に大多数の生徒から血の気が引いていく。

「獅楼!」
「は、ははははいっ?!」
「要!」
「は、はい?」
「俺ぁ気分が悪い。あんな偽者を良くもテレビに映しやがったな…!オーナーもオーナーだ!…いっぺん絞める。付いてこい!」

テレビじゃない、などと言う突っ込みは厳しい。
佑壱を絞めるとほざいた榊は顔中の血管と言う血管が浮き出ており、獅楼は半泣き、自称『疾風三重奏』の三匹は魂が抜け、要はチビを抱いたまま何度も瞬いた。

「ヒィ!まー兄ちゃんがキレてる…!まー兄ちゃんが怒ったら馬鹿兄貴が本気でキレるレベルで怖いのに!いまだかつてないほどキレてますー!ガタブルガタブル、めそん」
「おい、遠野舜!ぶつぶつほざいてないで来い!今からお前が総長の代わりにあの野郎をぶっ飛ばすんだ、判ってんな!」
「ひょ!あの野郎ってどなた様っ?」
「お前の嫌いな赤毛だ、覚えてんだろ?」

呆然としている生徒らを掻き分け、目がハートになっているご婦人に見つめられながら講堂の出入口で振り返った榊が眼鏡を押し上げれば、クネクネ尻を振りながら歩いていたチビから、ぶわっと恐ろしい威圧感が滲み出る。


「赤…?俊兄ちゃんに夜遊びを覚えさせた、あんガキかァ!」

追い掛けてきた要がびくりと肩を震わせ、榊さえも目を反らす程の威圧感に静まり返る講堂で、ドスドスと肩を怒らせ怒りを撒き散らす少年は黒縁眼鏡を怪しく光らせながら、

「餓鬼が餓鬼ってなぁ、笑わすな」
「カルマは嫌いじゃないけど…アイツは大嫌いだよィ。俺の、俺だけの俊兄ちゃんを誑かしやがって…!俊兄ちゃんにバレない様に殺す!この世から消す!そして俺の元に帰ってきた俊兄ちゃんと…ぐふふ!」
「お前のブラコンは何処まで行き着くんだよ、舜。ファーザーを押し倒すつもりか?」
「押し倒す?何で?一緒に漫画読んだりお風呂入ったり俊兄ちゃんがハマってるお稽古をこそっと習ったりして、また俺の方が強くなって兄ちゃんから誉められたり!ぐふふ!ぐふふふふ!」
「気色悪い奴だ」

にまにましながら出ていった二人を慌てて追い掛けようとした要は足を止め、ざっと講堂内を見渡し、凍える笑みを浮かべる。誰もが無意識に背を正し、



「今の話を口外すれば、レッドスクリプトが届くと思いなさい。…判りましたね?」

遠野俊=カルマ総長と言う恐ろしい話を聞いた白ブレザーは揃って頷き、決して口外するまいと心に刻んだのである。
然しガタリガタリと幾人かの生徒が起立すると、その誓いは益々固いものとなった。

「我らは神帝陛下の親衛隊、ABSOLUTELYです」
「天の君は陛下の初恋のお相手であり、加えてシーザーは陛下が探しておられる想い人」
「我ら帝王院学園高等部一同は決して狼狽えず決して妨げる事がなきよう、お二人を見守って差し上げようではありませんか」
「唯一神の冥府揺るがす威光を、須く知らしめんが為に」

この街で、カルマに憧れない者は居なかった。
この第三講堂で、神帝に逆らう者など居なかった。


赤縁眼鏡を押し上げた、左席会長非公認天の君親衛隊2名は素早く立ち上がり、一冊の冊子を神帝親衛隊に手渡す。

「週刊一年Sクラス特別版なのだよ。近頃お忙しい猊下に代わり、僕ら天の君親衛隊が発行したものなのさ」
「漫画研究会の先輩方とお見受けしたのさ。僕らは前々から、先輩方に原稿を見て頂きたいと考えていたのさ」
「これが噂の一年Sクラス日誌の原本…!」
「複製して良いか?!」
「出来れば祭典期間中にバックナンバーの販売も、可能だろうか!」
「ふ、天の君の名に於いて、広めて欲しいのさ」
「僕ら一年Sクラス一同、協力するのさ」

今此処に、天の君親衛隊&ABSOLUTELYの協定が結ばれた。



幸いにして、本物の遠野俊親衛隊たるカルマメンバーの知らぬ所で、だ。

←いやん(*)(#)ばかん→
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