帝王院高等学校
 ├2┤☆淡島様より
寂寞キャラと絡んでみたったー2

-story/淡島 様-

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定期的に猫を構い倒したいらしい。ブタ猫に素っ気なく尻尾でペチンと手を払われたオタクは頭を下げていた。

「我々の業界ではそれをご褒美と言いますっ!ヨッスィーのにゃんこは美人さんばっかりですにょ!!」
「美人なのか、そいつも」
「ハァハァハァ、じゅるっ、そ、それはもうっ!!凄く素っ気なくて、美人で、ハァハァハァッ」

一方は猫を抱いたまま、もう一方はスケッチブックとオタクの携帯を見つめながら会話を続ける。あまりにも差がありすぎる会話を会話と呼んでもいいのか分からなくなった太陽は、隣に立つ自分と同じ庶民のニオイのする八尋を覗き込んだ。

「イチ先輩に聞いたんだけど、前来た時も二人はこうだった?」
「…いや、前のは知らないんだよな。マジで。あ、でも美樹が自棄にでかい眼鏡に邪魔されたって言ってたなあ。『チームを明け渡そうとしただけなのに』って言っててそりゃあ大変だったんだぜ?

―――きゃーっ、シュンシュンさんこっち向いてー!!」
「ち、チームって……と言うか、お前さんも腐男子なのかい!?」
「平凡攻め推奨派ですっ!でもシュンシュンさんの作品は大好きですっ!庶民は抗う術を手にしたんだぜ!太陽君(と書いて平凡)にだって攻める日が合ったっていいだろう!?」

チームを明け渡すと言う聞き捨てなら無い台詞は取り敢えずスルーした太陽は「平凡も攻めるんだー」と興味深そうに笑う。

オタクの黒縁眼鏡と優等生気取りの黒縁眼鏡。突っ込む庶民と突っ込まれる庶民。邪魔立て(犬やら恋人やら)さえ無ければ仲良くなれそうだ。

「ヨッスィー、絵がお上手なりん。も、もしかして絵師さんですかっ!?」
「壊死?」
「ハァハァ、その絵で数々のオタク共のハートを壊死に追い込んだのはヨッスィーだったんですかっ!?その絵は極稀にしか挿絵をちょっぴり描いてるミキさんの絵ですにょ!」
「……ああ、幼なじみが出す本の小説に少し描いたりはしたな。ミキは、美樹の読みを変えただけだ」
「マ、マジでかァ!!」

衝撃の事実をサラリと吐き出した美樹に顔を向けたまま、別の猫にターゲットを絞ったらしいオタクが荒い息遣いで『ポチ』と名付けられたペルシャ猫の肉球をぷにぷにぷにぷにエンドレス。

「―――…よし、出来たぞ、俊ちゃん」
「ゲフ」
「…駄目だったか?一応、平凡のモデルはタイヨーちゃんだ。俺様のモデルはこの前此処に来ていたイチちゃんにしたんだ」
「きゃ、きゃーっ!タイヨーと嵯峨崎先輩が、

……………すったもんだで絡んでるぅ!!」
「俊?今、すっごーく聞き捨てならない、寧ろ俺が攻めのモデルさんに殺されかねない内容が聞こえたんだけどなー?」
「太陽君っ、オタクは…、腐男子は本能に抗えないんだ!だから、我慢してくれっ!…てか、美樹見せてー!」
「ああ」

俊の携帯に写るセーラームーンな赤毛の男を一瞥して手渡した絵は、今にも血塗れになりそうだ。

スケッチブックを恍惚の表情で見つめるオタクと、先程まで普通に太陽と喋っていたオタクが覗き込もうと背伸びをした。もし此処に黒縁眼鏡(大)が混ざれば大中小とそれはそれは微笑ましい光景が生まれたのかもしれない。

「イケメンが太陽君を押し倒しちゃってんじゃんかァァァァ!!これ、今度色塗って!!」
「……いや、だが」
「ぼ、僕みたいな薄汚いオタクがこう言うのもあれですがっ!ヨッスィーの絵に!是非とも命の息吹きを!」
「へー、絵が上手いんだねー。こう言うのって性格とかが現れるって聞くけどね」

身長が一番大きい美樹は、クネクネ尻を振るオタク総長とキラキラした目で見つめるオタク平凡、そして「これってさー、別の人物でも描ける?」と有らぬ精神攻撃を企むゲーマー平凡の勢いに圧倒されては、眼鏡の奥を瞬かせた。

「俊ちゃん」
「なーに?」
「タイヨーちゃん」
「ん?どうしたのかなー、美樹君は」

「帝王院に今度交流会と称して遊びに行きたい」
「「喜んでっ!!」」

これで自分の好きなカップリングが増えるだろうと猫を抱えるオタクと、オタクを慕う犬共を黙らせるネタ(絵)を手に入れる約束を取り付けた平凡は、猫カフェの店員がドン引きするであろう笑い声を上げたのであった。

「えー、俺もシュンシュンさんと太陽君の学校行きてーよー」
「二人ぐらいならどうにかなるにょ!左席の権限さえ使えばこっちのものよっ!」

オタク平凡、八尋の呟きに答えた俊は、

「主人公はタイヨーだけど、此方の平凡さんにも新たな俺様攻めとの出逢いが待ってるにょっ!ゲフ」
「シュンシュンさーん、俺が平凡攻め派と知っての狼藉かっ!」
「ぷはーんにょーん!!」
「やめてっ、カメラやめてくれえええ!!」

太陽のような突っ込み属性では無い、どちらかと言えば突っ込まれる属性の八尋を何処からか取り出したカメラで撮影会を始めた。

「イチ先輩は最初描いたよねー?…これが錦織君で、こっちが高野と藤倉でー、神崎君…は、まあいっか。カイ庶務に、ラストは白百合かなー」
「ワンコ受け多数に、浮気攻め?…いや、人気者攻めか?ヤンデレ?こいつは鬼畜溺愛攻め…良妻?」
「誰が良妻やね〜ん」
「この白百合ちゃんだが」
「美樹ー、お前さんは俊と一緒で勘がいいみたいだねー。でもそこは突っ込まないで欲しいかなあ」

爽やかな笑顔で美樹を黙らせる事に成功した太陽は、反射する眼鏡の奥の双眸が楽しそうに笑ってる事には気付かない。180p台と160p台の差なのかと上から伸ばされた手が太陽の頭を撫でた。

「と、取り敢えず!!ヨッスィー達には後日連絡するなり!そ、それまではこの絵を貰ってもイイでしょーかっ!?」
「ああ、構わない。帝王院が無理だったらうちに来るのも良しだ」
「神王院に俺様会長は居ますかっ!?」
「…………居ないな。腹黒副会長なら居るぞ」
「ゲフ」

「あ、太陽君!アドレス教えてー!オススメのゲームとか教えてくれたら嬉しい!」
「あはは、全然いいよー。俺には護身術とか教えて欲しいなー」
「チワワ撃退法とか?」
「いんや、犬の躾用に、ね?」
「太陽君って意外とSなんだなあ。俺みたいな身長低めでも確実にヤれる奴教えてあげるぜー!」

此処によく分からない友情が生まれたとかなんとか。

―――後日、帝王院に美樹と八尋が行ったのか、神王院に俊と太陽が行ったのかは本人達のみぞ知る。

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あきゅろす。
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