帝王院高等学校
3.一度は戦隊ものをやってみよう。
萌暦20XX年ジャパン、首都。
首都圏から僅かに逸れたとある市内、山の端にそれは存在した。
「エマージェンシー、周囲ニキロ圏内に敵襲確認!」
「く…、また奴らが現れたか!」
「カルレッド!(@_@;) 非常警報発令っしょ!早く行こうぜっε=┏( ・_・)┛」
「悪の帝王軍ABSOLUTELY、…毎回毎回執拗いぜ」
「あ、カルイエローくんは本日休業でーす。みんな、頑張ってきてねえ」
「「「「テメェは毎日休業だろーが」」」」
これは事実を多少捻曲げた、愛と正義に燃える変態…ごほんごほん、戦隊の話である!
いや、愛と正義に萌えるカルメンジャーの阿呆と死闘の物語であるーっ!
萌えるワンコ戦隊
カルメンジャー!!!
第一話
導かれし萌の通過店
「はぁ、今日も疲れたぞいorz」
「あー、風呂入りてぇな。湯布院か別府の温泉郷で歴史小説読み更けプランだぜ」
「ったく、テメェらは気楽で良いな。奴らまた手強くなってやがったんだぞ、風呂の前に作戦会議だ作戦会議」
「えー、ユウさん横暴ー。隼人くんはもう眠たいのにー」
「駄目です、今日のABSOLUTELYの強さは俺達カルメンジャーを遥かに凌駕していました」
「ああ、油断してたらやられてたな。…あっちのワルメガネーがフレンチトーストに眼鏡を奪われなかったら、完全にやられてた…」
「雑魚であのレベルだったら、神帝がどれほどのもんか…考えたくないぜ」
日課と化した宿敵との死闘を終え、カルメンジャー五人は変身を解いて基地に帰ってきたのだ。
リーダー格であるカルレッドこと嵯峨崎佑壱、カルブルー錦織要、カルグリーン藤倉裕也、カルオレンジ高野健吾、カルイエロー神崎隼人。
ミカドインを守護するべく政府…と言うか、理事会によって作られた愛と正義に満ちた彼らは、正体不明の悪の組織ABSOLUTELYと日夜死闘を繰り広げている。今の所カルメンジャーの勝利で終わっていたのだが、今日のABSOLUTELYは新型巨大猫型ロボットを操り、カルメンジャー達を窮地に追い込む場面も多々あった。
ドラえもんに負けて堪るか、ワンコだらけのカルメンジャーは意地とプライドだけで勝利を収めたが、敵が戦闘を中断したから得た勝利であり、カルメンジャーの納得するものではない。
『モエーモエーモエー』
「はっ、博士からの呼び出しだ!行くぞ!」
「「「「ラジャー」」」」
佑壱の変身ベルト、ならぬ変身首輪が萌コールを発し、ワンコ達は作戦室へ急いだ。
「失礼するっス、博士」
「プロフェッサー、お待たせしました」
「ボスー、隼人くんの活躍見てくれたあ?」
「博士ェ、今日の夕御飯は何?(´∀`)」
「今日は確か、カルメンマラーメン定食だぜ」
息を弾ませながら扉を開き、キラリとサングラスを光らせ奥の席に腰掛ける白衣姿の男へ敬礼する。
「諸君、本日もパトロールご苦労様だった。…今日は少し勝手が違った様だったな」
クールなサングラス博士、トーノと言うネームプレートを胸に付けたカルメンジャー指令は、赤く染まった指先を舐め上げた。
何があったのか気になるカルメンジャー一同だったが、サングラスを外した指令に怯み背を正す。
「はい、奴ら新型兵器を使って来たんス」
「ワルメガネーがフレンチトーストを焼いていたパン屋の少年に気を取られている所を狙い、ロボットの破片を入手しました」
「今さあ、川南弟に解析させてるからー、結果が判り次第報告するねえ」
「ドラえもんみたいな癖に、超強かったんじゃぞ(><) でもま、俺達の敵じゃないっしょ(^^)v」
「でも、次々新しい兵器を増やされちゃキリがないぜ」
カルメンジャーの報告を聞きながら頷いていた博士は、無表情で目を細め、
「………次は無い。」
ビクッと震えたカルメンジャーに構わず、白衣の内側に手を突っ込んだ指令は凄まじい威圧感を放つ低い声で囁いた。
「す、すいませんでした!今度こそABSOLUTELYを叩き潰して来ますから博士!」
「も、申し訳ありませんでした、俺が不甲斐ないばかりに…」
「ボスー、お留守番させたから怒ったのー?」
「夕御飯のメンマあげるから機嫌直してちょーだいっ。(p>×<q)。゜」
「面目ないっス、温泉はお預けだぜ」
それぞれ凹むカルメンジャー達を余所に、しゅばっと立ち上がった男は輝く笑みを浮かべる。
「ぷはーんにょーんっ、ポッケの中にまだイチゴジャムパンが残ってたにょ!お代わり無いかと思ってたら、も一個あったにょ!」
「は、博士?」
「はふん、山田パンさんは安くて美味しくて大好きですっ。店長のタイヨーきゅんは平凡受けだし、副店長のユウヒさんはツンデレ王子だし、ハァハァ、開店に合わせてアラームセットした甲斐がありましたっ!
走って行った甲斐がありましたっ!」
カルメンジャーは一斉に沈黙した。
自分達が出動した非常警報は、博士がパン屋に行く為のものだったからだ。
ジャムパンを貪る男は外したサングラスの代わりにいつの間にか眼鏡を掛けていて、指先が赤く染まっている。
つまり先刻の赤いアレはイチゴジャムだったらしい、ナルホード。
「じゃ、何でABSOLUTELYがあそこに居たんだ…?」
「確かに…」
佑壱の台詞に要が頷き、外見や発言につい馬鹿だと思われがちな隼人がヘラヘラ笑いながら指を立てる。
「つかさー、あの眼鏡の人も、パン屋の行列に並んでただけなんじゃないかなあ?」
「そう言えば、フレンチトーストが店に並んだ瞬間居なくなったっしょ(@_@;)」
「焼きたてのフレンチトーストを買い占めてんの見たぜ」
「つまり、」
「初めから敵襲じゃなかった…?」
「はふん、そろそろご飯のお時間にょ。特盛ラーメンにした方がイイかしら、メガトンラーメンにした方がイイかしら、メガの上のテラサイズでも無料かしら?」
カルメンジャーは沈黙したまま、ジャムパン35個くらいでは小腹も満たなかったらしい博士がIDカード片手に走って行くのを追い掛けた。
「あっ、カイちゃん!」
「俊、今日は食堂ではなく外で食事にしよう」
「ふぇ?バーベキューするにょ?」
途中、帝王院が誇る中央委員会一向に出くわしたカルメンジャーは一気に険悪なムードを放ち、一際目立つ超絶美形の隣に並ぶ金髪王子や眼鏡貴公子と睨み合い、一触即発。
「テメェ、駄犬の癖に調子乗んな」
「息の根止めんぞ、淫乱が」
「おや、生憎お馬鹿さんには興味がないので気付きませんでしたよ、錦織君」
「性根の腐った貴方は、網膜まで腐っていらっしゃるからでしょう、白百合閣下」
「あー、隼人じゃねぇか」
「うひゃひゃひゃ、無視されてっしょ自治会長、だっさ!(´Д`*)」
「次の新聞は温泉特集系にしようかと思うんだけど、日本三景のコラム書いてくれないかな、藤倉」
「購読するぜ。東海道53次の江戸話なら乗っても良い」
「…元気そうだな、神崎」
「どーも、イースト先輩ー」
何だかそれぞれ会話に夢中の彼らを余所に、
「いや、俊の器が間に合わない為、急遽敷地内にプールを建設させた」
「プール?」
「俊のラーメンはその中に作らせてある。枯渇するまで貪るが良かろう」
プールサイズのラーメンを貪るオタクと、プールサイドで何やら満足げな超絶美形が見られたらしい。
秘密組織カルメンジャーの戦いはまだまだ続くのだ!
「カイちゃん、ラーメン食べないにょ?」
「いや、近頃市内の風紀を乱す輩が現れてな。叶らに見回りを強化させているのだが、中々に手強い集団だ」
「はふん、僕もサセキパトロール頑張るにょ!」
「ったく、あいつら以上にテメェはうぜぇ」
「何ごちゃごちゃ抜かしてやがる、やんのかコラァ!」
「ふぅ、愛車の走れふーちゃん号のボルトが一本足りなくなって落ち込んでいると言うのに、夕食はパスタですか。ああ、震えるほどアンニュイ!…お代わり下さい」
「ふん、どうせお貴族様はベンツなどと燃費の悪い車をご愛用でしょう。丁度良い、これを期に自転車でも購入なされたら如何ですか」
「あーあ、謎の全身タイツ集団を激写して新聞作ったら売れる系なんだけどな〜」
「全身タイツ集団なんて、ただの変態だぜ」
「赤と青と黄色に緑、あとは何だったっけなぁ、イースト」
「確かオレンジだった筈だ。時折現れるシルバーブラックは、カルコークと名乗っていた様に記憶しているが…」
「味噌ラーメン超美味いっしょ!(´∀`) この何だかオレンジみたいな茶色みたいなスープが堪んないぞぇ(´Д`*)=3」
「とんこつラーメンが一番美味しいに決まってんじゃんかー、はぁ、ボスのミルクを隠し味にしたらもっとデリシャスラーメンになるかもお」
「はふん、今度カルメンジャーのコス、リニューアルしようかしら…。ずずっ、つるつる、もぐもぐ、ぷはーんにょーん、やっぱりレザーの方がカッコイイかしら?」
数日後。
「現れやがったなカルメンジャー!テメェら何だその姿はっ!」
「以前の全身タイツも中々に愉快でしたが、今回はまた、酷く露出の多い衣裳ですねぇ…」
「何だか売れないビジュアル系バンドみたい系?」
「あ、そろそろアキの店が開く時間だな、今日はフランスパンでも買うか。やっぱ王子はフランスパンが似合うんじゃね?
別に食わなくても、あの適度な固さがあれば使い方は色々あるこったし」
「ナニに使うつもりかは聞かないが、手作りパンを粗末に扱われたら山田の怒りを買うんじゃないか、ウエスト」
「…何か、異様に短くねぇか、このレザーパンツ」
「…俺の衣装よりマシですよ」
「トランクス丸見えだぜ、ケンゴ」
「だって股間に穴開いてんだもんよ、俺の(//∀//)」
「カナメちゃんなんかさー、乳首部分が丸見えだねえ」
「ハァハァ、皆頑張るにょ!もぐもぐ」
「お客さん、うちクレジットカードは使えないんだけどなー。勝手にパン食べないで欲しいんだけどねー…」
「山田太陽店長、フレンチトーストはまだ焼けませんか?」
「あー、うん。何でフルネームなのっつーか、店内でミルクティー飲むの止めて下さいっつーか、…二人共毎日来んな、入り浸んな。
─────頼むから帰ってくれ。」
頑張れ萌変態…いや、萌戦隊カルメンジャー!
「あ、神帝ってカイちゃんだったにょ?」
「ほう、カルコークとは俊の事か」
「カルピスとコーラを一緒に飲むと美味しいにょ!」
「俊、構わんがレザーコスはあの五人だけで我慢しろ。己が着るな」
「あらん、僕みたいな平凡うじ虫野郎にパンク系は似合わないから大丈夫ですっ、皆のコスにハァハァしながらパンをおやつにデジカメるだけで満足ですっ」
導かれし萌の使者ご愛用の山田製パン、年中無休。
ご注文は、0120モエ110番までどうぞ!
「全員っ、人の店で寛ぐなー!!!」
頑張れ、愛と正義の平凡パン屋さん!
帝王院の常識人は君しか居ないのだから!
続く!(訳がねぇ)
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