帝王院高等学校
├3┤★三四五匹目
illust/柳屋ハニー
text/生ゴミ
「きゃっ!」
「痛ぇっ!」
ガシャン、と派手な音を発てて開いたデカイ檻に、ポイッと放り込まれた軍服姿の王子様が見える。
何故か乙女座りで背を向けモジモジしていた赤毛にブチ当たり、その背中は図体に似合わない乙女な悲鳴を上げた。
「っ、…あ?テメェ、嵯峨崎じゃねぇか?」
「ぼ、う、こう、が…!」
「あ?何だと?」
珍しく背を丸めたまま微動だにしない佑壱が、ふるふる震えているのに片眉を上げた日向が覗き込めば、
ぱしゃ!
「ハァハァ、俺様×俺様、どっちが上でもあっちが下でも大丈夫ですっ、好物ですっ!」
「は?」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!」
見る見る青く変色していく佑壱の顔色になど全く興味が無い日向は、音の発信源である鳥かごの外へ目を向け、輝く眼鏡を見た。
だらだら垂れまくる涎に、ハンカチを持ち歩かない王子様が『吸い付きたい』とか何とか考えたか否かはさて置き、
「これで優勝はぐんと近付いたにょ…!でもまだまだ油断禁物火事親父!そこにモエがある限り、萌え尽きましょうホトトギスっ!」
「シュンシュン、何を企んでんの〜?俺の愛を試したいなら言ってくれれば、今すぐインペリアルスイートリザーブしてめくるめくハネムーンに、」
「ハァハァ、ピナタが下でもイイにょ!ハァハァ、イチが下でもイイにょ!いっそ日替わりで!」
「はい?」
「あっ、ピナタそのまま両腕広げて」
首を傾げながら、然しオタクを嫁に貰うつもりらしい奇特な俺様は素直に両腕を広げ、
「そのまま、くるっと後ろ向いて、」
「こう〜?」
「もうちょっと右…ストップ!そのままがばっと襲い掛かるにょ!」
「がばっと襲………うわっ!」
言われるままに襲い掛かった日向は、然し一秒で飛び起きる。
未だ背を丸めたままの佑壱を抱き締め掛けたからだ。
「ちっ」
「シュンシュンっ、この阿呆犬と同じ空間にこれ以上居たくないよ〜!って言うか何で俺がこんな所に閉じ込められなきゃなんないの〜?」
「萌の為だ。近くから近くから眺めハァハァしつつ、最終的にはアンソロジーでフィーバーする為にょ!」
「もえ?アンコモチ?………テメェ、嵯峨崎ぃっ!俊に飯も食わせてねぇのかテメェはっ!腹空いて俊が拗ねてんじゃねぇか!」
「ぅ、っせ…ぐぅ」
「起きろ嵯峨崎ぃっ!今すぐブッ潰す…!」
ふるふる震えている佑壱の首根っ子を掴み上げた日向は、然し俊の姿が消えている事に気付いて佑壱から手を離す。
ぺちょっと床に叩き付けられた佑壱は、然し股間を押さえたままやはりふるふる震えていた。
「俊っ、開けてシュンシュン〜っ!!!今すぐ横浜中華街エスコートするから〜っ、機嫌直してシュンシュン〜っ!!!」
「ぉぃ」
「あ?」
蚊が鳴く様な声が足首を掴む。
眉間に皺を寄せた日向が下を見やれば、うるうる潤んだ赤い双眸が見上げてくる。
可愛い。
「んな訳あるかっ!出鱈目なアテレコすんじゃねぇ、コラ!」
「も、る」
「何だテメェっ、気安く触んじゃ、」
「だから…っ、漏れるっつってんだよコラァ!」
「いきなり叫ぶな腐れが!漏れるんなら漏らしときゃ良いだろうが!」
売り言葉に買い言葉、とは良く言ったものだ。
しゅばっと立ち上がった佑壱が、然し直ぐ様股間を押さえ崩れ落ちたのに眉を寄せ、目を見開く。
「まさか、テメー…」
「そぅ、ちょ…、せめて、トイレ休憩…」
「冗談、だろ」
「黙れ高坂がぁっ!やってやろーじゃねーか!漏らしゃ良いんだろーが、漏らしゃよォ!」
「わ、判った、俺様が悪かった、男ならプライドを持てプライドを!」
「このままじゃ膀胱が腐り落ちそうなんだよ畜生が!………Okay、open your mouth...(良し、口開けろ…)」
「あ?」
目が据わった佑壱に詰め寄られ、本能的危険を感じたらしい副会長が後退る。
脱ぎ易いスウェットの様なズボンに手を掛け、死んだ魚の様な眼差しのまま近付いてくるワンコは薄い笑みを浮かべ、
「無いのなら、有るので我慢、ホトトギス…」
嫌な予感しかしない俳句だ。
「嵯峨崎、お、落ち着け。」
「落ち着いていますとも、ああ、これ以上無く落ち着いていますとも。高坂副会長だって経験があるでしょう、そう、男なら一度は上の口に突っ込みたいものです」
「寝言は寝て言えや!」
「溜まったものは出さなければいけません。…例え出るものが違おうが、出す所が一緒なら構わない。つか俺はもう、いっぱいいっぱいだ畜生…」
切羽詰まったワンコは、最早ライオンさえ食い殺す猛獣の如く、ゼェゼェ怪しい息遣いで近づいてきた。
涙目で後退った日向は、然しすぐに追い詰められ、
「番いなら、…一蓮托生、ホトトギス」
「突っ込まれるくらいなら突っ込むわ、ド畜生が!」
俺様攻めによる、攻めの座争奪戦勃発。
佑壱と日向がどうなったかは、余り話したくない。
「にゃんこやん?ちっちっ、こっちおいでやー」
「にゃーん」
庶民愛好会、と言う名の『昼寝クラブ』顧問が、迷い込んだらしい黒猫を抱え美形を綻ばせる。
チュ、と可愛らしい音を発てて猫と愛を深めれば、遠くから凄まじい音が近づいてきた。
ファンファンファン、ピーポーピーポー。
「けっ、警察か?!何で帝王院に警察なんか居んねん?!」
「にゃ」
くるっ、と振り向いた一人と一匹は、目の前を通り過ぎた台風に目を細める。
「ピーポーピーポーっ、そこの不良止まりなさいっ!そこのイケメン止まりなさいっ!」
騒ぎはやはり、奴だった。
「お願いします、見逃して下さいっス………総長」
「止まらなければ人質の命は無いにょ!」
「警察が脅して良いんスか」
光る眼鏡に追われた裕也が、珍しく真剣な表示で呟く。
オタクの手には既に捕まった相棒の姿がある。
「た、助けてユーヤ…(ρ_<。)゜。」
「悪いなケンゴ、…自分の命が最優先だぜ」
引き摺る様に、つかまるで荷物の様にオタクの手に拉致られた健吾は、処刑台に連れられた殺人犯の様な風体で囁いた。
「一蓮托生っしょ、ユーヤぁ!Σ( ̄□ ̄;)」
「神妙にお縄を頂戴するにょ、萌の礎にしてくれるわァアアア!!!!!」
しゃーっ、と飛び掛かって来た相方とオタクに呆気なく捕まった裕也は、素早く服を剥がれていった。
「………」
「にゃー」
一部始終目撃した教師は、一見ホストの様な無駄に整った美貌を歪め、オタク警察が通り過ぎた際に落ちたらしい一枚の紙を拾い、冷めた目で覗き込んだ。
イケメン☆コスフォトコンテスト
作品募集!
身近なイケメン、自らがイケメン、イケメンは此処に集まれ!
グランプリ作品は、コスしたイケメンを登場させたアンソロジーをプレゼント!
「…コスプレ?アンソロジー…って、何やの?」
「にゃーん」
「ホストォ…」
ぐるん、と首だけ振り向いたオタクの眼鏡がキラリと光る。
「っ!」
「モエェエエエエエ!!!萌の生け贄じゃアアア!!!!!」
「ぎゃーっ!」
全力疾走する関西弁は好きですか。
「─────捕獲。」
「堪忍してやー!」
いや、隙だらけですか。
次回!
膀胱破裂警報発令?!
平凡の身に迫る黒縁…黒い影とは?
神帝、テレビに夢中!
副会長、永遠に!
眼鏡を割るしかない次回、乞うご期待っ!
三匹目逝っとく?
四匹目逝っとく?
五匹目逝っとく?
←いやん(*)(#)ばかん→
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