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溺愛王子と純情乙女テディベア 《完結》
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 シャロンの自室にて。シルヴェスター達はお茶会を楽しんでいた。仕事を終えたロードリック達も訪れて、美味しいお茶菓子と香りのいい紅茶に舌鼓を打った。やっと全ての問題が解決してエリック達が肩の力を抜いて休んでいると、ノエルが「あ」と何かに気付いてティーカップを置いた。

「ノエルさん? どうしたんですか?」

「みんな揃ってるし、此処でバラしてもいいかなと思って」

「バラすって、何をですか?」

「僕とノアの過去」

 ノエルが口にした瞬間、全員が彼を見て黙った。全ての問題が解決したら、ノエルは過去を話すと言っていた。マリアンヌやロードリックがどんなに調べても分からなかった二人の過去。シャロンとエリックも興味津々にノエルの言葉を待っている。

「まあ、良いんじゃねえの? 解剖されたり悪用される恐れはなさそうだし」

「か、解剖!?」

「悪用ってなんだ!? どう言う事だ!? ノエル!」

「ノエルさんとノアさんを解剖するなんて許せません! そんな事をする奴はどんな手を使ってでも捕まえて罰を与えます!」

「あのさあ、星絆(セナ)。言葉が足りなくてみんな誤解してるじゃん」

「可能性はゼロじゃねえだろ? 聖斗(アキト)だって最初は警戒してたじゃねえか」

「物語ではよくある話だからねえ。異世界転移したら冷遇されて、追放されて、利用されて、最後には殺されちゃう話?」

「い、いせかい?」

「てんい?」

 突然物騒な事を話し出すノエルとノアに、シャロン達は驚いて何を言えば良いのか分からない。二人の言うイセカイテンイとは何なのか。エリックとシャロンが聞くと、二人は軽いノリで答えた。

「うん。そう。異世界転移。僕の本名は冬城聖斗。こっちの世界に合わせるならアキト・フユキになるのかな?」

「俺の本名は雪本星絆。セナ・ユキモトと言うべきか?」

 本名を名乗った後、二人は呑気に笑って「僕達、突然異世界に飛ばされたんだよねー」と「この世界に来た時は大変だったよな?」とサラッと重要な事を口走った。

「い、いいい、異世界!? 異世界って、どう言う事だ!? お前、一体何処から来たんだ!?」

「あはは! ジェイクさん慌てすぎ! 異世界は異世界だよ? 全く別の世界。最初は何処か西洋の国に来たのかな? って思ったけど、全く聞いた事がない国ばかりだし、日本もないし、言葉も文字も違う筈なのに何故か通じるし読めるから『あ、これは異世界転移だな』って直ぐに分かったよ」

「日本って言うのは俺達が住んでいた国の名前。俺と聖斗は大学に通っていて、就職先をどうするか考えていたんだ」

「大学って言うのは学校の事ね。小学校、中学校、高校、大学とあって、就職したい仕事によって進路を決めるんだ。医療や看護を目指している人は看護学校とか医科大学に、シェフとかファッションとかならそれに特化した大学や専門学校に。必要な知識を学んで技術を身に付けて、自分の希望する会社に履歴書を送って面接して、認められたら就職決定。僕は自分の夢を叶える為にウエディングドレスデザイナーを目指してたんだ」

「俺はアクセサリーデザイナーを目指してたんだが、何時も聖斗の課題を手伝わされていて、ドレスの作り方を知ってたんだ。まさか異世界でも俺が仕上げる事になるとは思っていなかったけどな」

「星絆には感謝しているよ。好きな人のドレスじゃないとどうしてもやる気が起きなくてさあ」

「だからお前は直ぐにドレスを作れたんだな。俺はてっきり素人だと……」

「素人で間違いないよ? あの頃はまだ学生だったからね。専門知識と縫製技術があるだけだから、学芸会用の衣装って感じだったし」

「こっちの世界のミシンに慣れてなかったって言うのもある。まあ、此奴は天才だから直ぐに慣れてドレスを作っていたけどな」

「だって人気になるとは思わないじゃん? この世界って身分によって就職先とか決まってるから、平民の僕が作ったドレスなんて誰も見向きもしないと思ってたんだもん」

「お前のその綺麗な顔も原因だよ。理想のお嫁さんに自分の作ったウエディングドレスを着てもらいたい、なんて言われたら勘違いした連中が群がるに決まってるだろ?」

「迷惑な話だよねー。本当」

 ニホンと言う国には身分制度がなく、自由に仕事を選べると二人は語る。しかし、ニホンにも外国にもこの国と同じように王族は存在する。貧富の差はあれど、ニホンは外国に比べるとかなり恵まれた国だ。文化や料理、礼儀作法や技術力は海外で絶賛され、高い評価を得ている。

「長く使われたものには魂が宿る。だから物を大切にしなさい。動物や植物の命をいただいているから、その命達に感謝して食べなさい。食べものを育ててくれた人、運んでくれた人、美味しい料理を作ってくれた人にも感謝しましょうって言う、感謝の気持ちとか、相手の気持ちを考えてとか、お客様に喜んでもらえるようにとか、そう言う文化が当たり前の国なんだ」

「成る程。ノエルさ……アキトさん? が作るドレスがとっても魅力的な理由が分かりました!」

「アキトって言いにくかったらノエルでいいよ」

「素晴らしい文化ね! 一度ノエルさん達の故郷に行ってみたいわ!」

「感謝の気持ちを忘れない。相手の気持ちを考える。納得しました。ノエルさんとノアさんが優しいのは、ニホンと言う国が素晴らしいからなんですね!」

「国民性だとは思うけど、僕は優しくないよ? 同じ日本人でもマナーの悪い人は普通に居るし……」

「素直じゃないな。ノエル。お前、困っている人には自分の手で一からドレスを作って渡してたじゃねえか。サービスとか腕試しとか言って金も取らずに」

「え?」

「ジェイクさん! その話、もっと詳しく聞かせてください!」

「シヴィー!? なんで食い付くの!? 僕の過去の話を聞いても面白くないよ!」

「私も気になります! 聞かせてください! ジェイクさん!」

「シャロンさんまで!」

 話さなくていいと阻止する聖斗を無視して、ジェイクは彼がこの国で初めてドレスを作った時の事を話し始めた。

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あきゅろす。
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