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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 シロガネさんと遼太郎さんが帰った後も、王宮の中はとても賑やかで騒がしかった。大和兄さんとアーノルドさんは相変わらず喧嘩してるし、リナちゃんとレナードさんが二人を必死に宥めようとしてあわあわしてるし、オズさんはオズさんで颯太さんを気遣いつつ大和兄さんにグチグチグチグチ文句を言ってるし。

 リウビアはそんな賑やかな光景を見てキャッキャ笑ってる。可愛いけど、笑うところじゃないんだよなあ。チョコとショコラは呆れ顔。俺の後ろでおすわりをしてオズさん達を眺めている。

「やーまと!」

「げ!」

「もう! 折角僕が来たのに、酷い反応だなあ」

「何しに来た」

「お仕事だよ。ちょっと僕一人だと討伐は難しくって。お願い! 大和! 手伝って!」

「断る」

「奇跡の雫五本でどう!?」

「な! メイさん! そんな高価なものをぽんぽんと渡すものではありません! もっと大切にしてください!」

「大丈夫だよ。レナードさん。大和だから渡すの。だって、大和は僕が作った奇跡の雫を悪用しないって知ってるから」

「う!」

 時々、芽生さんが王宮を訪れて、大和兄さんと一緒に魔獣討伐のクエストに挑んでいる。何度か会った時に、芽生さんの漢字も教えてもらった。彼の本名は一葉芽生(ひとつばめい)。大和兄さんとは大学時代からの知り合いで、芽生さんは親友だって言ってるけど、大和兄さんは腐れ縁だと断言している。一体どっちが正しいのやら。

 それに、芽生さんが植物に愛されている事は初めて会った時に教えてもらったけど、奇跡の雫を五本も作り出すとか一体何者? とも思う。オズさん達も驚きすぎて言葉を失っている。大和兄さんと芽生さんだけが会話を続けていて、俺達は二人の会話に付いて行けない。

 そう言えば、この前ナタリアさんとタッドさんも挨拶に来てくれたなあ。弟のテッドさんも元気になって良かった。三人で挨拶に来てくれた時も大変だったなあ。主にナタリアさんが凄かった。信仰心が更に強くなっていた。俺と颯太さんを見て目を輝かせて「神子様!」と叫び続けてちょっと引いた。

「メイさんが行くなら、俺も一緒に行きます! メイさんを危険な目に遭わせたくありません!」

「ありがとう。レナードさん。大好きだよ!」

「はう!」

「だったらお前ら二人だけで行けよ」

「大和だったら瞬殺じゃん。お願い! 一緒に来て! 祝福の果実もオマケするから!」

「祝福の果実だと!?」

「レアアイテムなの?」

「奇跡の雫より価値は下がるが、祝福の果実は限られた場所にしか生えておらず、実るのも数百年に一度と言われている高価なものだ。祝福の果実を食べれば、どんなに瀕死になろうとも一度だけ死を回避できる効果を持つ。それに加え、全ての傷を癒す効果もあり、冒険者達が血眼になって探す程の果実だ」

「あー、RPGゲームとかにありそうなレアアイテムなんですね」

 確かに高そうだ。ゲームで課金しないと入手できないか、ドロップするけど確率が極めて低いかのどちらかに分類されそうなアイテムだ。そんな高価な果実を芽生さんは一体どうやって入手したのか。まさかとは思うけど、自分で育てたのかな? 植物に愛されているって言ってたし……

「奇跡の雫五本と、祝福の果実十個でどう?」

「お前の金銭感覚は一体どうなってる訳? それだけあれば一生遊んで暮らせるだろ?」

「何時も助けてくれる人にお礼をしたいって思うのは当然でしょ? それが偶々奇跡の雫と祝福の果実だったってだけ」

「偶々で片付けられるものじゃないと思うのですが……」

 芽生さんの事を知れば知る程、謎が深まる気がする。誰彼構わず奇跡の雫を渡してそうで怖い。本当、ぽあぽあしてて危なっかしい人だ。悪い人達に騙されて、たかられなかったんだろうか。

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