くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
10
メイさんと恋人になってから、レナードさんは何時も幸せそうだ。アーノルドさんや大和兄さんにメイさんの素晴らしさを語り尽しているとか。惚気話を聞かされ続けたアーノルドさんは俺の方が可愛いと言って対抗。其処にオズさんも加わって何時も自慢大会になっているとか。ただ、大和兄さんだけはドン引きしたような顔をしてレナードさんを見ているだけだった。メイさんを選ぶなんて狂ってるとしか言えないとか、本当に趣味が悪いとか。
大和兄さん、メイさんと一体何があったんだろう? 凄く可愛くてぽあぽあしてて守ってあげたくなるような感じの人なのに。俺達にも優しくて礼儀正しいのに、大和兄さんはバケモノを見るよな目をしてメイさんを見ている。疲れ果てていると言うか、げっそりしていると言うか。メイさん、そんなにヤバい人なのかな? そんな風には見えなかった。レナードさんも嬉しそうだし、何も問題はないと思うんだけどなあ。
ただ、気になるのはリナちゃんだ。レナードさんも恋人が出来て、しかもその相手が神子様だと知ってリナちゃんはどう思ったんだろう? 元々レナードさんの恋を応援していたとは聞いたけど、大丈夫かな? 寂しくないのかな?
「どうしたの? エイト。考え事?」
「リナちゃんの事、考えてた」
「エヴァリーナ王女?」
「うん。リナちゃんの恋が叶ったらいいのになって」
今日は久しぶりにアーノルドさんが休みの日。部屋の中で二人でゆっくり過ごしている。アーノルドさんはやっぱり優しくて、大きくなったお腹を愛おしそうに優しく撫でて、俺の事も沢山甘やかしてくれる。チョコとショコラは大和兄さんとリナちゃんが面倒を見てくれているからこの部屋には居ない。久しぶりの二人っきりの時間だ。
最後まで大和兄さんが渋っていたけど、何度もお願いしたらアーノルドさんと二人っきりになる事を許してくれた。俺を泣かしたら許さないってアーノルドさんに言っていたけど。大和兄さん、やっぱりアーノルドさんに対して刺々しいな。今も敵視してるし……
「それは初耳だな。エヴァリーナ王女の恋の相手は?」
「…………」
大和兄さんだよ、とは言えなかった。アーノルドさんもリナちゃんの事を大切に思っているから、大和兄さんだって知ったら色んな意味で暴走しそうな気がする。アーノルドさんが騎士団長になれたのはリナちゃんが任命したから。俺と結婚できたのもリナちゃんが必死に情報を集めてくれたから。だから、アーノルドさんもリナちゃんに対して過保護な所がある。アーノルドさんにとってリナちゃんは今でも敬愛する主であり、可愛い妹でもある。そんなリナちゃんが大和兄さんに恋をしているなんて知ったらどうなるか。あまり想像したくない。
「言いたくない?」
「ごめん」
「いいよ。エヴァリーナ王女が話してくれるまで、俺は待つよ。それに、やっとエイトと二人っきりになれたんだ」
「ん。待って、アーノルドさ……」
「待てない」
「ふ、ぅ」
ちゅ、ちゅ、とアーノルドさんに口付けられる。触れるだけのキスは、少しずつ深いものに変わって、待ってって言っても止めてくれない。キスしている間も、頭を撫でられたり、大きくなったお腹を撫でられたりして、もっと甘えたくなる。
「可愛い」
「待ってって、言ったのに」
「君が怒っても可愛いだけだよ」
「アーノルドさんは、やっぱりずるい」
本当は困っていないのに、困ったような表情をするのは卑怯だ。シュンとした顔で「ゆるして」なんて言われたら俺は簡単に許してしまう。アーノルドさんはそれが分かっているから、よく困ったような、俺に縋るような顔をする。俺がその顔に弱いと知っているからだ。本当、ずるい人だ。
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