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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 大和兄さんには既に恋人が居る。名前はメイと言う可愛らしい顔立ちの青年。甘栗色のゆるふわな髪にくりっとした大きな焦げ茶の瞳。丸い眼鏡をかけていて、彼は花屋の店主をしているそうだ。そして、メイさんはレナードさんの初恋の相手。前国王と神子に不埒な事をした貴族の残党を捕縛していた頃、レナードさんは罠に嵌められて危険な人喰い植物の餌食にされそうになったそうだ。理由は逆恨み。人喰い植物と言っても単純に食べるのではなく、あっちの意味の食べるらしい。つまり、あんあんらめえ! な展開の方。この世界って、なんで直ぐそっち系の展開になるんだろうな。

 オズさん然り、アーノルドさん然り、レナードさん然り。そして、人喰い植物に捕まってもうダメだとレナードさんが諦めかけた時に現れたのがメイさんらしい。彼は植物が大好きで、ほとんどの植物の言葉が分かるとか。その特殊? な能力でメイさんがレナードさんを助けて、怪我が完治するまで自分の家で寝泊りさせてくれたと言う。優しくて可愛くてぽあぽあしてるメイさんに、レナードさんは一目惚れした。

 癒し系で可愛くて、でもぽあぽあしてて危なっかしいから時々彼のお店を訪れて安否を確認しているとか。レナードさんが休日になると居なくなるのはそれが理由だったのか。お店を訪れる度に珍しい植物の種や苗をプレゼントしているんだって。レナードさんからのプレゼントをメイさんは喜んで受け取ってくれて大事に育ててくれているらしい。その時の笑顔がまた可愛くて愛おしくて、メイさんの笑顔を見るだけで癒されるとか。所謂惚気だな。うん。

「本当は、今日告白するつもりでした。でも、何時ものようにメイさんの店を訪れると、其処にはヤマトが居て、メイさんと楽しそうに話していたんです。ヤマトが何かを渡すと、メイさんは満面の笑みを浮かべてヤマトに抱きついて『ありがとう! ダーリン! 愛してる!』と、言ったんです! メイさん、俺の前ではあんな風に笑った事なんてないのに! こんなの、こんなの失恋したとしか言えないじゃないですかぁああああああ! よりにもよって、相手はあのヤマト! 勝ち目なんてある訳ないでしょう! 悔しいですけど! 本当に悔しくて腹が立ちますけど! ヤマトなら絶対にメイさんを幸せにできるって分かるから、俺はメイさんを諦めるしかないんですよぉおおおおおお! ぅう!」

「だから、リナちゃんも失恋したと」

「ええ。そうです。二人仲良く失恋ですよ。ふふ。だから、神子様に恋をするのは諦めて、レナードさんと結婚しましょうって話になったんです。その方がお互い傷付かなくて済みますし、失恋の悲しみが分かるレナードさんとなら、幸せになれると思って……ぅう。ヤマトさまあ!」

 いや、二人とも全然諦め切れてないじゃん。未練タラタラじゃん。それに、大和兄さんに恋人が居たなんて知らなかった。こう言う事、俺には教えてくれると思っていたのに。メイさんって人と相思相愛なのかな?

「あの、勘違いって事もあるかもしれないから、大和兄さんに話を聞いた方が……」

「あれはどう見ても相思相愛でした! ねえ! レナードさん!」

「エヴァリーナ王女の言う通りです! メイさんはヤマトの事が好きなんです! 俺なんか最初から眼中になかったんですよ!」

 ダメだ。二人とも冷静じゃないから何を話しても聞いてくれない。またワンワン泣き出しちゃったし、結婚しましょうって言ってるし。これ、オズさんを呼んだ方がいいかもしれない。

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あきゅろす。
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