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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 絶叫してやっと気持ちが落ち着いた後、二人はポツリポツリと話してくれた。リナちゃんはさっきも叫んでいた通り、初恋が颯太さんで、次に恋をしたのが遼太郎さんと俺だった。颯太さんとはかなり年が離れていたからまだ諦める事ができたけど、遼太郎さんの事はかなり長い間引き摺ってしまったらしい。と言うのも、颯太さんを諦める切っ掛けを作ってくれたのが遼太郎さん。獣の国でリナちゃんが平和に過ごせたのは、遼太郎さんが彼女をずっと守ってくれたから。シロガネさんに喰い殺されそうになった時、獣人達に敵意を向けられた時、初めての事ばかりで戸惑っていた時、遼太郎さんが側に居てくれて説得したり必要なものを集めてくれたりした。

 遼太郎さんから優しくされたリナちゃんは、直ぐに彼の事を好きになった。遼太郎さんとなら、と思って自分の思いを伝えようとした矢先、彼がシロガネさんの番だと知って失恋。遼太郎さんは男前で面倒見が良いから、リナちゃんみたいに恋した瞬間に失恋した女性は数多く存在するとか。だから、失恋したリナちゃんを獣人の女性達は優しく抱いて「分かる分かる。真実は時に残酷よね」と言って慰めてくれたそうだ。

 リナちゃんは失恋した悲しみを忘れる為に、颯太さんを正気に戻す方法を必死に探した。元々そちらが目的だったから、リナちゃんは直ぐに気持ちを切り替えて颯太さんを正気に戻す方法と神子に関する掟の存在を知った。後は、この情報をオズさんに渡すだけ。国王達を追い出すまでは失恋した事も忘れていたけど、王宮で俺と出会ってリナちゃんは俺にも恋をした。

「神子様はみんな、私に『もっと自分を大事にして』と言ってくれます。私の事を心配して、何時も優しい言葉をかけてくれます。それが、どれだけ私の救いになったか、エイト様達は知らないでしょう? 本当に嬉しかったんですよ? 王族の娘と言うのは、子を産む為の道具でしかありませんから……」

「リナちゃん自身を見てくれる人は、居なかったって事?」

「みんな、王族に取り入る為の人形程度にしか思っていません。オズお兄様やアーノルドさん、レナードさんはそんな事を思っていませんが、それは私がオズお兄様の妹だから」

「違うよ」

「エイト様?」

「リナちゃんだから、みんな過保護なんだよ。俺、リナちゃんに感謝してるんだ。リナちゃんが神子の掟を教えてくれたから、颯太さんも俺も無事だった。誰かの為に必死に行動できるリナちゃんは凄いよ。そんなリナちゃんだから、みんな大好きになるんだ。だから、その、大和兄さんの事、諦めないでほしいなって。時間はかかってもいいから、せめて、自分の気持ちだけは大和兄さんに伝えてほしい。言葉にしなきゃ分からない事もあるから」

 俺がそうだった。大和兄さんの事、何も知らなかった。彼が何を考えていて、何を思っていたのか、俺の事をどれだけ大切に思ってくれていたのか、全然知らなかった。気付かなかった。この世界で再会して、大和兄さんの話を聞いて、俺は初めて大和兄さんに愛されていたんだって気付いた。だから、恋が実らなかったとしても、リナちゃんには自分の気持ちを伝えてほしいと思う。

 だって、リナちゃんは告白する前に失恋しているから。でも、大和兄さんは俺達と違って恋人も好きな人も居ない。この世界でも多くの女性から好意を向けられているけど、大和兄さんは全く興味がなさそうだった。リナちゃんもその中の一人かもしれない。大和兄さんは何も思っていないかもしれない。それでも、何も言わず失恋するより、自分の思いを伝えた方が気持ちはスッキリするんじゃないかと思う。勿論、決めるのはリナちゃんだから、俺が言えるのはお願いになるんだけど……

「アーノルドさんと出会う前に、私がエイト様と出会っていれば良かったのに」

「え?」

「神子様は、本当に素晴らしい方ばかりですね」

 リナちゃんは涙をそっと拭った後、寂しそうに笑った。大和兄さんへの恋心、やっぱり諦めているみたい。そんなリナちゃんを気遣うようにレナードさんが「大丈夫です」と声をかけた後、リナちゃんが諦めている理由を教えてくれた。

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