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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
5
 リナちゃんが大和さんに恋をしている事は遼太郎さんとシロガネさんにしか話さなかった。颯太さんとオズさんが知ったら大変な事になりそうだし、三回も失恋してるって聞いたら更に過保護になりそうで怖かったから。

 リナちゃんが誰に恋をして失恋したのか、シロガネさんは知ってるけど、何度聞いても教えてくれなかった。知らない方がいい事もある、とか。気になるけど、リナちゃんが傷付く事ならこれ以上聞かない方がいいのかもしれない。失恋した相手の事を知るのは諦めて、大和兄さんへの恋心を応援しようかな。

 とか思っていた矢先……

「分かってるんです! 分かってるんですよ! 私じゃ相手にすらならない事くらい! でも! 好きになっちゃうんだから仕方ないじゃない! 私だって! 私だって好きな人と結婚して幸せになりたいわよ! それなのに、どうして……どうして私は神子様ばかり好きになるのよぉおおおおおお!」

「エヴァリーナ王女! 分かります! 分かりますよ! 貴女の気持ち! 右を見ても左を見ても神子様とイチャイチャするオズ陛下とアーノルド団長に挟まれてる俺って何なんでしょうね! 俺だって、俺だって神子様とは言いませんが、優しくて可愛い恋人がほしいんですよぉおおおおおお! やっと、やっと好きな人を見付けたと思ったのに……俺の初恋がこんな残酷な形で散ってしまうなんて! 悔しいです!」

「レナードさん! 私の気持ちを理解してくれるのはレナードさんしか居ないわ! ソウタ様を好きになった直後にオズお兄様の想い人だと知って絶望し、獣の国でリョウタロウ様に恋をして思いを打ち明けようとした瞬間にシロガネ様の伴侶だと教えられて心が砕け散り、エイト様はアーノルドさんと既に結婚なさっているから大丈夫だと思ったらやっぱり好きになって、私は何度恋をした直後に失恋を経験すればいいのよ! それなのに、それなのに! ヤマト様の事も好きになるなんて! 失恋確定じゃない! うわぁああああああん!」

「エヴァリーナ王女! 分かります! 分かりますよ! ぅう! なんで、なんであの方の想い人がヤマトなんだよ畜生ぉおおおおおお! こんな事になるなら恥ずかしがらずに告白しておけば良かった! 例え断られたとしても! まだ自分の気持ちにけじめを付ける事が出来たのに! うぉおおおおおおん!」

 俺は一体何を見せられているんだろう? いや、現実逃避している場合じゃない。あの、お二人さん? チョコとショコラ抱いたままギャン泣きしないで? 二匹とも大人しく二人に抱かれているけど、可能なら返してほしい。まだお散歩の途中だから。散歩中にチョコとショコラが突然走り出したかと思ったらリナちゃんの部屋に入ってしまって、悪いと思いつつ俺も中に入ったら何本もの瓶がテーブルに置いてあって、リナちゃんとレナードさんがギャン泣きしてる光景に出くわすとは思わなかった。

 それに、リナちゃんが恋をした人、颯太さんと遼太郎さんだったんだ。なんか俺の事も好きになったと言ってた気がする。シロガネさんが残酷って言っていたのはこう言う意味だったのか。リナちゃんを失恋させたバカは一体誰だって遼太郎さんが聞いていたけど、まさかそれが自分自身とは思うまい。シロガネさんが相手を言わない訳だ。

「あ、あの」

「もう私にはレナードさんしか居ません! 失恋した者同士、同じ苦しみを持つ仲間同士、私達、結婚しましょう!」

「エヴァリーナ王女!? お、俺で良いんですか!? いえ、王女が望むのであれば構いませんが……」

「レナードさんが良いんです! 私、レナードさんとなら幸せになれる気がするわ!」

「エヴァリーナ王女!」

「レナードさん!」

「あの!」

 大声で叫んだらやっと二人が俺の存在に気付いてくれた。両手を取り合って握り合う二人の姿は情熱的だけど、内容が内容なだけに色々と残念な仕上がりになってしまっている。と言うか、チョコとショコラ解放してあげて? 俺の存在に気付いた二人はキョトンとして黙った後、思いっきり叫んで顔を覆った。

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あきゅろす。
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