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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 数日後、式典は問題なく行われた。既にオズさんが国王だったけど、この式典は国民や他国の王族貴族に公表する為の儀式でもある。オズさんが国王となり、国王となったオズさんからアーノルドさんは爵位とグランディと言う名を与えられた。今日から彼は、アーノルド・グランディと名乗る事になる。アーノルドさんの次は大和兄さん。大和兄さんはアーノルドさんと同じく、オズさんの護衛騎士に任命された。本人は嫌がっていたけど、肩書きとしてはこれが最善だろうと説得に説得を重ねて、やっと大和兄さんが折れた。最初は俺の護衛騎士になると言っていたけど、アーノルドさんが全力で反対して、オズさんの護衛騎士に決まったそうだ。レナードさんにも褒賞が与えられ、一通りの式典は終わった。後は、国民への挨拶とパレードと社交パーティーだけ。

 俺と颯太さんはパレードまでで良いと言われた。と言うのも、大和兄さんが王宮を襲撃したあの日以降、神子の人気が爆上がりして俺と颯太さんがパーティーに参加すると色々とやばいらしい。オズさんとアーノルドさんが嫉妬深いと言うのも理由の一つ。結婚しているとは言え、王族貴族の中には今でもオズさんやアーノルドさんの側室にとか、俺と颯太さんを妻にと考える者も数多く存在する。そう言った輩から狙われないようにする為、俺と颯太さんはパレードまでで良いのだ。俺達としては本当に有り難い。

 それに、俺のお腹の中には赤ちゃんがいるから無理はさせたくないと言われた。俺も可能なら早めに休みたかったから、この提案はすごく嬉しい。それに、颯太さんと一緒だから安心だ。

「パレード、凄かったね」

「神子様の力、恐るべし、ですね」

 オズさんが颯太さんを連れて国民の前に出た時も凄かったけど、俺がアーノルドさんに連れられて出た時はもっと凄かった。神子様、神子様と叫ばれて、歓声も凄くて、ちょっと引いた。この世界の人達、どれだけ神子様が好きなんだろう? 大袈裟だと思うんだけど。パレードの時も、みんなから握手を求められて、笑顔で対応したら「もう、この手は一生洗いません!」って言う人も居た。汚いから手は洗って? アイドルや有名人の握手会じゃないんだから、そんなに感動しなくても良いと思うんだけど……

 パレードも無事終わって部屋に戻った時には俺も颯太さんもクタクタだった。心配そうに寄って来るチョコとショコラが可愛い。癒されるぅ。

「あの時の出来事が一斉に広まったみたいだね。小説にもなってるって噂だよ?」

「小説?」

「うん。タイトルは忘れたけど、確か騎士団長と勇者が一人の神子を取り合う話だったと思う。騎士団長と結ばれる結末と、勇者と結ばれる結末があるんだって。どっちも同じくらい人気で、何処の書店へ行っても完売してるみたい」

「まって? それって、若しかして……」

「うん。瑛都くんとアーノルドさんと大和さんがモデルだね。確実に」

「はあ!?」

 あ、あの恥ずかしい出来事が小説になっている、だと!? しかも人気なの!? なんで!? アーノルドさんと結ばれる結末はまだ分かる。でも、なんで大和兄さん!? 大和兄さんと俺が結ばれる結末があるってどう言う事!?

「アレは誰がどう見ても大和さんが瑛都くんを好きとしか思えなかったからね。今は家族愛だって分かるけど、他者から見たらさ、アーノルドさんと大和さんが瑛都くんを奪い合っているようにしか見えないんだよ。つまり、少女漫画によくある『やめて! 私の為に争わないで!』って言う展開だね」

「俺を取り合う展開の何処に萌え要素があるの!?」

「今も取り合ってるよね?」

「う! それは……」

 否定、できない。颯太さんの言う通り、アーノルドさんと大和兄さんは今でも俺を巡って言い争っている。アーノルドさんは大和兄さんをライバル視していて、大和兄さんはアーノルドさんをまだ認めていない。でも、大和兄さんは俺を弟として見ていて、家族だから守ろうとしているだけ。恋愛感情は一切ない。大和兄さん自身が言っていたから間違いない。それに、大和兄さんがそう言った感情を持っていたら、俺には触れない筈。結婚した神子には手を出せないと言う掟があるからだ。

「ナタリア様とタッドさんを許したのも、人気の理由だって」

「え? なら、人気なのは大和兄さんの筈じゃ……」

 クールで、格好よくて、優しくて、それに料理上手でチート能力もある。大和兄さんは本当に完璧な人だ。ナタリアさんとタッドさんを許したのは大和兄さんだし、奇跡の雫を渡したのも大和兄さん。俺は何もしていない。俺が何を思っているのか分かったのか、颯太さんは苦笑しながら「あの場面を見たら、みんな瑛都くんを好きになるよ」と言った。何をどう見たら俺を好きになるんだろう? 俺、何の取り柄もない平凡なのに……

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あきゅろす。
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