くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
8-アーノルド視点-
ドン! と背中に強い衝撃を受ける。痛みに耐えて立ち上がると、男が剣を振り下ろそうといているのを見て咄嗟に受け止める。
「グゥ!」
「へえ。騎士団長なだけはある、って事?」
この男、強い。一体何処からこんな力が出て来るのか。剣を受け止めるだけで手が痺れるなんて。男の攻撃を受け止めるだけで精一杯だ。反撃する余地がない。いいや、この男には一切の隙がない。近距離では俺の方が不利だ。一旦距離を置いて……
「離れれば勝てるとでも思った?」
「な!」
男から離れたと同時に矢が男から放たれた。ギリギリで躱したが、このままでは本当にやられてしまう。剣だけでなく、弓も使えるとは……この男、本当に何なんだ?
「はぁ、はぁ。何故、こんな事をする? 俺への恨みか?」
「恨み? そんな可愛らしいもんじゃねえよ」
「だったら、何だって言うんだ?」
逆恨みと言うものだろうか。俺はこの男を怒らせるような事をした覚えはない。この男が何に対して怒っているのか、エイトとはどう言う関係なのか、それが分からない。理不尽極まりない仕打ちに、俺もそろそろ本気でキレてしまいそうだ。
「アンタさ、瑛都が大事なら、なんで彼奴を一人にしたの? なんで、肝心な時に傍に居ねえの? 腹の中に子どもだっているのに」
「は?」
「瑛都の旦那なら、全力で彼奴を守れよ。自分の命を犠牲にしてでも守る覚悟くらい持てよ。彼奴が居なくなったなら直ぐに捜しに行けよ。どんな手を使ってでも見付け出して安心させてやれよ。それが出来てねえから、離婚しろって言ってんの」
「どう言う、事だ?」
「アンタ、俺にそんな事を言われる筋合いはないって思ってる? 大事な弟を傷付けられたら、怒るに決まってんだろ?」
弟? 彼は今、弟と言ったのか? 誰の……それに、子ども? まさか、この男がエイトの兄とか言わないよな? いや、よく思い出せ。エイトをずっと傍で支えてくれた人が居たと、ソウタ様が仰っていた。彼がエイトと同じ時期にこの世界に来ていたのなら、彼がずっとエイトを捜していたのだとしたら……
「エイトとソウタ様から、君の事は聞いている。まさか、こうして会えるとは思わなかったがな」
「…………」
「エイトを守ってくれた事は感謝する。だが、それはもう君の役目じゃない。本当に彼の事を大切に思っているのなら、いい加減弟離れしたらどうだ?」
「つまり、離婚する気はないと?」
「何度聞いても同じだ。離婚はしない」
剣を構え目の前の男を見据える。挑発したにも関わらず、男は一切動揺しない。ただ、静かな怒りを瞳に宿すだけ。少し戦っただけで分かってしまう。この男、強いだけでなく戦略にも長けている。一番敵に回したくない相手だ。しかし、戦いたくないなどと甘い事を言っている場合ではない。俺の大切な人を目の前の男に奪われるかもしれない危機的状況なんだ。何としてでもこの男に勝って、必ずエイトを奪い返してやる!
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