くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
7-アーノルド視点-
式典の日が近いと言うのに、俺は窮地に立たされていた。王宮から瑛都が居なくなった。三日前から瑛都の姿が何処にも見当たらない。オズ陛下もソウタ様も、エヴァリーナ王女もレナードも瑛都を捜してくれたが、彼は王宮の何処にも居なかった。王宮の外も探そうと歩き出そうとした時、突然何者かが王宮の中に侵入したと知らせが入った。
報告を受けた俺達は急いで侵入者の居る場所へ向かう。侵入者が居たのは回廊の中央。綺麗に手入れの施された中庭に、見知らぬ男が立っていた。回廊には王宮を訪れた貴族達が何事かと騒ついている。
「アーノルドって、アンタ?」
「は?」
「違うの?」
「いや。合っている。俺がアーノルドだが、君は一体……」
剣に手を添えて男に質問するが、答える気はないようだ。黒い布で全身を隠しているから、男が何者なのか分からない。男は興味のなさそうな声で「あっそ」と告げると、黒い布を外して投げ捨てた。
「な!」
「うそ、神子様!?」
「軍服と、日本刀!?」
見た事のない黒い衣装。初めて見る不思議な形の剣。瑛都と同じ、黒い髪に黒い瞳。間違いない。彼は、神子だ。しかし、何故神子である彼が突然王宮を襲撃したんだ?
「アーノルド、だっけ?」
「なんだ?」
「瑛都と離婚してくれない?」
「はあ!?」
何なんだ! この男は! 突然現れたかと思ったら、無表情のまま俺の可愛くて愛おしいエイトと離婚しろ、だと!? 巫山戯ているのか!?
「瑛都は俺が守るから、さっさと離婚して」
「断る! 君が何者か知らないが、赤の他人にそんな事を言われる筋合いはない! 誰に何と言われようとも、俺はエイトと離婚しない!」
「もっといい条件の女を選んで瑛都を捨てたくせに、何言ってんの? アンタ」
「君こそ何を言っている!? 俺はエイト以外とは結婚しない! それが例え自分よりも身分の高いご令嬢だったとしてもだ!」
「……………」
こんな事をしている暇はないのに。早くエイトを見付けなければならないのに。本当に何なんだ! この無礼な男は! 神子であるにも関わらず、失礼な態度に苛立つ言動。涼しい顔をしているのが余計に腹が立つ! しかも、エイトは俺が守る、だと? それは俺の役目であって君の役目ではない! まるでエイトの事を知っているかのような話し方も気に入らない!
「あの! 瑛都くんが何処に居るのか、貴方は知っているんですか? 彼は、無事なんですか?」
「五月蝿い。部外者は引っ込んでろ。おっさん」
「おっ!」
「貴様ぁああああああ! 俺の愛するソウタに、何と言った!? 俺の妻を侮辱して、生きて帰れると思うなよ!」
「オズお兄様! 落ち着いてください!」
「ソウタ様! しっかりしてください!」
「おっさ、うん。そうだよね。俺、おっさんなんだよね……ははは」
「ソウタ! 戻って来い!」
「ソウタ様! 正気に戻ってください! お願いします! ソウタ様!」
「はぁ。離婚するって言えば大人しく帰ったのに」
「君は一体何がしたいんだ!? 俺への言動といい、ソウタ様への暴言といい、看過できるものではないぞ!」
「あっそ。なら、やってみれば?」
何が起こったのか、分からなかった。男が言い終わった瞬間、俺は吹き飛ばされた。
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