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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
3
 俺がココアを探していたように、大和さんもずっとココアを探してくれていた。必死に探して見付けた時にはココアはもう老犬で、何時亡くなっても可笑しくない状態だった。本当は、俺を連れて挨拶に行きたかったけど間に合わなかったそうだ。

 でも、ココアには子どもが居て、その子犬達も心優しい人達に引き取られた。老夫婦のお家にも一匹だけ残していて、その子犬がまた新しい命を宿した。目の前に居るショコラは、ココアの子から産まれた子犬。ショコラを見ていると、まるでココアとも再会できた気持ちになる。

「高校卒業したら、一緒に住もうって約束しただろ? チョコとショコラが居たら、お前が笑ってくれると思って引き取った」

「あの、大和さ『兄さん』や、まと兄さんは、どうして、俺に優しくしてくれるの?」

「家族だから」

「え?」

「兄貴が弟を守るのは当然だろ?」

「えっと、そう、なの?」

「そうだ。大事な弟を傷付ける親なんて必要ない。お前を捨てたって彼奴らから聞いた時、本当に腹が立った。だから、今迄ずっと録音録画してた証拠を全部公開してやった。有名な教育者様が引き取った子どもを虐待してたんだから、さぞかし面白い事になってるだろうよ。いい気味だ」

「……うん」

 大和さんは、結構過激な人みたい。何時も無表情で、あまり話もしないのに。今の大和さんはよく喋る。大和さんがどう思っていたのか知れてよかったような、あまり知りたくなかったような。

「お前を見付けて手を伸ばした時、突然視界がブレて、気付いたら全く知らない世界に居た。此処が何処なのか調べていく内に、俺にはチート能力と言うものが備わっている事を知った。その後は魔獣を倒しながら時々絡んでくる気持ち悪い中年オヤジをぶっ飛ばしつつ、お前を捜し続けてた。この世界は俺達異世界人を神子って言うみたいだし、街の連中の話を聞くと嫌な噂ばかり聞くし……」

「あ、うん。でも、今は大丈夫。オズさんが国王になったから」

「オズ?」

「オズワルド・グランディエ。聞いた事ない? もう直ぐ式典がある筈なんだけど」

「なんで、新しい国王を気安く呼んでんの?」

「それは、その、オズさんとは知り合いで。えっと、俺、結婚してて」

「は?」

「お腹の中に、赤ちゃんもいて……」

「あ?」

「アーノルドさんって言って、格好よくて、優しくて、すごく綺麗な人で」

「…………」

「大和、兄さん?」

 なんで殺気立ってるんだろう? 今の俺はアーノルドさんから沢山愛されてるからすごく幸せだよって伝えたかっただけなのに。大和さんの機嫌が悪いのはどうして?

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