くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
9-アーノルド視点-
やってしまった。身体中に赤い斑点の付いたエイトを見て、俺は後悔した。ずっと掴んでいた腰には手の跡がくっきりと残っており、泣き腫らした目元が痛々しい。優しくしようと思っていたのに、エイトを抱く時は一回で終わらせようと思っていたのに……
「ん……いっ、た。腰、痛い。それに、喉も、うえ」
「済まない! 無理をさせてしまった! 一回で終わらせるつもりが、欲望のまま君を抱いてしまった!」
「い、いよ。俺が、望んだこと、だから」
「エイト」
「それより、水……」
「は! 分かった! 直ぐに持って来る!」
「可能、なら、レモン水が、いい」
「レモン水だな!」
この後直ぐにレモン水を用意した。冷えたレモン水をコップに注いでエイトに飲ませると、少しだけマシになったのか乾いていた声が元に戻った。
「アーノルドさんは飲まないの?」
「いや、俺は……」
「喉、渇いてない?」
「……いただきます」
「なんで敬語なの?」
無茶苦茶に抱いたのに、エイトは全く怒っていないようだ。落ち込む俺を見て、困ったように笑うだけ。
「ねえ、アーノルドさん」
「なんだ?」
「腰、痛くて動けないから、抱いて移動してくれない?」
「え?」
「お風呂入ってないから、その……」
そう言われて俺は後処理をしていなかった事に気付いた。な、何たる失態! 慌ててエイトを抱き上げて風呂場まで連れて行き、それはもう丁寧に彼の身体を綺麗にした。全てが終わった頃には恥ずかしくて顔を覆ってしまった。エイトも同じように顔を覆って「やばい。羞恥で死にそう」と呟いた。
「昨晩も随分と……ふふ。お若いですねえ。お二人のお子が産まれる日を楽しみにしております」
そう言って、部屋の掃除をしてくれていた年配の使用人は満面の笑みを浮かべながら部屋を後にした。汚れたシーツは洗っておきますねと一言添えて。
「もう、やだ。王宮こわい」
「本当に済まない」
これは、思った以上に恥ずかしい。そう言った対応にも慣れているベテランなのは分かっているが、何とも言えない気持ちになる。見られたくないものを見られてしまったような、知られたくない事を知られてしまったような、そんな感覚だ。俺も長期間王宮に滞在した事がないから気付かなかった。
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