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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 颯太さんの言っていた事は本当だった。後日、アーノルドさんから「オズ陛下の護衛騎士に任命された」と報告を受けた。常にオズさんの護衛をしなければならないから王宮で過ごす事と、アーノルドさんと俺の結婚式も一緒にすればいいとオズさんが提案したらしい。俺達も色々とあって結婚式は挙げていないのと、リナちゃんやレナードさんの後押しもあって一緒に結婚式を挙げる事になったそうだ。

「こっちのゆったりとしたデザインも良いが、身体のラインを強調するこのデザインも素晴らしい。だが、こっちは身体は隠れるがそれが逆にエイトの魅力を高めてしまうし、これはエイトの身体を見せ付ける形になってしまう」

「でしたら、こちらはどうでしょう? 神子様が居た国の民族衣装を真似たものです」

「これも綺麗だな。触り心地も良い。うーん」

「そんなに悩まなくても良くない?」

「ダメだ! 一生に一度の事なんだから慎重に決めなければ……」

 テーブルに広がる衣装の数々。どれも純白で繊細な模様の施された衣装は素人の俺が見ても高いものばかり。オズさんもこんな感じだったのかな。唯一の救いはドレスが無い事だろうか。デザインは女性が着るようなものもあるが、用意された衣装はどれも男が着ても違和感のないものばかりだった。民族衣装っぽいものが多くて、バリエーションも豊富。ゆったりしたものもあれば、身体のラインを強調するようなものもある。アーノルドさんが今見ているのは、白無垢のようなデザインの衣装。着物の職人さんも神子の中に居たのかな? と俺は現実逃避した。

 結局、一日中衣装を見ても決まらなかった。俺はどれでも良いけど、アーノルドさんが頑固と言うか拘りが強すぎて決まらなかった。やっと五種類くらいに絞られて今日は終わった。この後、髪飾りとか装飾品とか靴とかも決めなきゃいけないのに。まだまだ時間がかかりそうで俺は今から気が重い。

「お疲れのようだな、チビ」

「やっぱり、俺と同じになったね」

 部屋に戻ると遼太郎さんと颯太さんがお茶会をしていた。疲れ果てた俺がゆっくり椅子に座ると、そっとお菓子とお茶を置いてくれた。

「アーノルドさん、拘りが強すぎて全然決まらなかった。何時まで続くんだろう」

「うーん。俺の時も結構長かったからね。衣装を決めるのに一週間。指示を出すのに一週間。装飾品を決めるのに一週間、試着と最終仕上げに二週間だから、一ヶ月前後かな?」

「一ヶ月!?」

「オズも拘りが強いからな。流石にアレは引いた」

「遼太郎さんはどうだったんですか? 結婚式とか」

「俺の場合はあっさりしてたぜ。シロが国民に俺が番だって宣言して終了。衣装だってシンプルで動きやすいものって依頼したら身体の寸法だけ測って終わったぜ」

「それはそれで、あっさりしすぎでは?」

「獣人ってのは細かい事とか頭を使うのが苦手なんだよ。俺もそう言うのは苦手だからな。丁度良かったと思うぜ」

 そう言うものなんだろうか。確かに遼太郎さんが着ている服はシンプルで動きやすいデザインばかりだ。上は膝下まで隠れる長めの服で、下はゆったりとしたズボン。上の服は腰辺りから左右にスリットが入っていてとても動きやすそう。よく見ると繊細な模様があったり、光沢があったりして、使われている布は高級品だと分かる。シロガネさんが服を選んでいるみたいだから、彼もそれなりに拘りはあるんだと思う。

「愛されてますね」

「お前と颯太もな。折角の結婚式だ。多少の我儘は許してやれよ」

「俺もオズの衣装を選ぶ時、結構悩んだからお互い様なんだよね」

 そうだったんだ。俺も悩むのかな? アーノルドさんの衣装を決める時。颯太さんが悩んだんだから、きっと俺も悩むんだろうな。

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あきゅろす。
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